<【ロンドン27日共同】英国の国際戦略研究所は27日、各国の軍事力などを分析した報告書、ミリタリー・バランス09を発表、アフガニスタンでは米軍などと戦闘を続ける武装勢力タリバンが西部などに勢力を拡大したと指摘した。
北大西洋条約機構などがタリバンの地盤の南部各州で打撃を与えたが、首都カブール周辺でも重大な存在感を維持していると分析。イラクの武装勢力側も勢力維持を図っているとした。(共同)>
<アフガン情勢、NATOの協力不十分 09年版ミリタリー・バランス
英国際戦略研究所(IISS)は27日、2009年版のミリタリー・バランスを発表した。オバマ米大統領が重視するアフガニスタン情勢について、北大西洋条約機構(NATO)の協力が不十分なことが、イスラム原理主義勢力タリバンとの戦いを困難にしていると指摘した。
オバマ大統領は米軍のアフガン増派に加え、欧州諸国などにもアフガンでの負担拡大を要請するとみられる。しかし報告は国際的な経済危機の広がりにより、オバマ政権が採用し得る軍事オプションが狭まっているとも指摘した。
またタリバンは自爆テロを一段と活発化させ、従来は安定していた地域でも活動を広げていると指摘。特に訓練が不足しているアフガン警察などを意図的に狙っていると述べた。国際テロ組織アルカイダの分子もアフガンとパキスタン国境付近で活動を活発にしているという。(日経)
「英国国際戦略研究所(IISS)」は1958年に設立されたイギリスの高名なシンクタンク。毎年発行されている「ミリタリーバランス」は、世界の紛争や各国の安全保障、軍事力分析で評価が高い。フォード財団がバックについている。
アメリカにも有名なシンクタンクがいくつかあるが、共和党大統領から民主党大統領に代わった影響があるという。いずれも民間のシンクタンクだが、日本はじめアジアには本格的なシンクタンクが存在しない。日本には”戦術”はあるが、”戦略”がないと言われる所以である。
共同電も日経記事もどれだけ国民の関心を呼んでいるか、心寒いものがある。
オバマ米大統領はイラクから撤兵して、アフガンに兵力を増強すると明らかにしている。二正面作戦の兵力分散を避けて、アフガンの反政府勢力を力で押さえ込む・・・オブラートに包まずに有り体にいえば、そういうことである。
だが、09年版ミリタリー・バランスは、この選択が成功しない可能性を示唆している。現状は武装勢力タリバンがアフガン西部で勢力を拡大したと指摘した。一般にはパキスタンと国境を接するアフガン東部の山岳地帯の戦闘だけが目立っていたのだが・・・。
おまけにイラクの武装勢力側も勢力維持を図っているという。米軍が撤兵したら息を吹き返す可能性が濃厚ではないか?
さらに北大西洋条約機構(NATO)の協力が不十分なことが、イスラム原理主義勢力タリバンとの戦いを困難にしていると指摘した。オバマ大統領がアフガンの米軍を増強すれば、NATOはますます斜に構えるのではないか。
イラクで失敗し、アフガンでも失敗することになれば、オバマ大統領がいうアメリカの威信を取り戻すことは望み薄となる。09年版ミリタリー・バランスは、そういったことを思わせる・・・。
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2778 ミリタリー・バランスの読み方 古沢襄

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