“ユーチューブ大統領”はアメリカ国民に自信回復をもたらすことが可能か。オバマのカリスマ性、はやくもメッキが剥げてきた。
76年前にホワイトハウスの主となったフランクリン・D・ルーズベルトは所謂「エコノミスト」ではなかった。
状況はこんにちのオバマ大統領が直面する危機に酷似していた。いや、もっと危機的な事態に遭遇していた。
しかしルーズベルトは恐慌心理を除去し、人々に自信を回復させるために何をするべきかを知っていた。
預金を増やさせ、社会を安定化させるには、まず銀行を安定化することである。預金の保障、政府の銀行への資本注入、その替わりに銀行への規制強化。
かれはラジオ放送を通じて国民に直接呼びかける方法を採った。
これは80年代のレーガン大統領が踏襲し、その平明で力強い呼びかけは多くのアメリカ人を魅了し、レーガンは「偉大なるコミュニケーター」と呼ばれた。
こんにちオバマがインターネットとユーチューブで呼びかけるスタイルの原型である。
現在の米国の問題は税金が投入された銀行が肝腎の貸し付けをしないという奇怪な状態である。
シティ、バンカメ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどへ既に3500億ドルが投下された。
なぜ、こうまでの措置がとられているのに、庶民は新しいローン、あるいは借り換えが組めないのか。
1930年代の米国の結論は、戦争だった。軍需産業にテコ入れし、軍の肥大化で雇用を確保できた。ルーズベルトには他に景気回復の手だてはなかった。
1929年の失業率は3%、1933年には25%となり、1930年代を通じて米国の失業率は17%平均だった。工業生産は三分の一に落ち込んでいた。街の辻々に失業者が屯していた。
だがルーズベルトは国民に言ったのだ「恐慌、それは人々が恐れる心が恐慌を作り出すのだ」と。
恐慌は経済用語ではなく、これは社会心理学の範疇に属する語彙だろう。かれはエコノミストではなかったが、卓抜な危機管理マネジャーだった。
こんにちのオバマを囲む状況は、イラクから撤兵し、かわりにアフガニスタンへ増派する。
主要な敵であるロシア、中国は立ち上がれない。産油国は米国と対峙できる軍事力も気力もなく、つまるところ敵はテロリストである。ブッシュの政策の継続が、オバマの世界戦略でありうる。
オバマがルーズベルトと異なる点は「雇用」に力点をおくことはおなじでも、それを「グリーン・ニューディール」政策と呼称するように、環境、福祉、公共事業、教育そして減税に力点を移していることである。
大統領就任後、「百日間の蜜月」が常識だとされる米国政治で、就任からわずか一週間でオバマへのマスコミ批判は遠慮のないものとなりつつあり、そのカリスマ性が剥げかけ、ブッシュ前政権が策定していった「TARP」(金融安定化法)につぐ{ARRP}(米国回復再投資計画)の8250億ドルの議会における承認はますます前途多難の様相である。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
2782 メッキが剥げるオバマのカリスマ性 宮崎正弘

コメント