ケンブリッジ大学で講演中の温家宝首相に若い男が靴を投げたと大きく報じられている。イラクでもブッシュ前大統領が記者会見中に靴を投げられた。中国のチベット弾圧に対する抗議行動なのだが、それよりも「米国債購入を考え直す」という温家宝首相の発言の方がニュース性がある。
ロンドンでフィナンシャル・タイムズのインタビューにも応じ、温家宝首相は米国債購入を考え直すと発言した。中国はこれまで米国債を大量に購入して総額は5000億ドルを超えている。
昨年に香港紙・明報が「米国の金融安定化措置を支援するために中国は2000億ドルの米国債を買い増しする」という観測が流れた。
日本はどうか。2005年には6700億ドルの米国債を保有していたが、それから1000億ドル近い米国債保有が減っているから、現在の保有高は5900億ドル程度ではないか。財務省は日本の米国債保有額を公表していない。
中国が2000億ドルの追加購入することは、本格的な米国支援に踏み切れることを意味する。米国債保有高で中国が日本を追い抜くのは間違いない。オバマ政権が日本より中国にアジア政策の軸足を置く背景の一端はここにある。
だが中国は迷いをみせている。米国債を大量に購入してきたのは、有り余る外貨準備を運用するためであって、米国支援の観点からではなかった。すでに米国債の下げによって損失がでている。
長期米国債の満期は30年、20年ものから10年ものなど様々。中国がどの米国債を持っているか定かでないが、利息が高い長期償還ものを買っているのではないか。仮に30年ものだとすれば、30年前のドルは堅調であった。円レートでも1ドル195円の時代だった筈である。
中国が保有していると思われる30年もの米国債の資産価値は半減していると思っていい。いくら高金利であってもカバーしきれるものではなかろう。一般の投資家なら手持ち株を売却して株から手を引くか、低落した同株を買い増しするナンピン買いをして取得平均価格を下げようとする。
「米国債購入を考え直す」と言った温家宝首相の腹立たしい顔が目に浮かぶ。米国債を大量売却すれば、米金融危機は破綻をみせるだろう。それはブーメランのように中国経済に打撃を与える。
買い増ししたら、中国が持つ資産価値がさらに下がるかもしれない。
これは中国だけの話ではない。日本も同じ悩みを抱えている。ヒラリー・クリントン国務長官を迎える日本と中国は、甘い顔ばかりはしておれないと言うことになる。
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