米国マスコミを成功に導いたビジネスモデルも地殻変動的に破綻中。“名門”のNYタイムズとて、新聞媒体として生き残れるのか。
NYタイムズは経営計画の見直しを真剣に迫られている。果たして生き残る道はあるのか、と。
同社はジャネット・ロビンソン社長、サルツバーガー家が筆頭株主で、ボストン・グローブとインタナショナル・ヘラルド・トリビューンなど高級紙を抱える。
購読層が比較的裕福で、かつ知識階層であるため07年までは広告収入がよかった。インターネットとU―TUBE全盛を迎えるまでは。
2007年、NYタイムズは新社ビルをNYのミッドタウンに建て、周囲を睥睨した。工事費は6億ドルだった。
98年から2004年にかけては自社株買い。高度成長と広告費ののびを背景に自信満々おこなわれ、27億ドルを投じた。これが完全に裏目に出た。
2003年にはワシントンポストと共同経営だったインタナショナルヘラルドトリビューンを完全に子会社化するため6500万ドルを投資した。ヘラルドトリビューンは依然として赤字である。
この結果、同社は赤字体質が恒常的となる。
09年末に9900万ドル、2010年に2億5000万ドルの長期債務の期限が来る。短期借入金は、この他に3億8000万ドル。このため新築ビルを売却し、社員を減らし、あいたスペースを賃貸にし、そのうえでメキシコの大富豪カルロス・スリム・ヘルから2億5000万ドルを年利10%の高利で借りてしのぐ。カルロスはすでに同社の6・4%の大株主でもある。また所有球団「ボストン・レッド・ソックス」の売却も視野に入れている。
▲多角経営は負担になってきた時代の変化
米国に限らずマスコミはネット時代になって、活字媒体ならびに地上テレビ局は極端に広告が落ち込み、どの企業も社員削減、経営効率化、不採算部門閉鎖、ネット部門強化などを打ち出したが、時間的に対策は遅かったのかも知れない。
NYタイムズは、08年売り上げが14・2%のダウン、07-08年で19・5%の減収を記録した。
NYタイムズ社の陣容は1300名の社員と2億ドルの予算、米国有数である。しかし近未来の明確な経営ビジョンを描けないのだ。
日本の大手マスコミが参考にしてきた「マスコミ産業」というビジネスモデルも地殻変動的に破綻を迎えた。
ネット配信による広告収入はたしかに増大しているが、NYタイムズ全体の、まだ12%をしめるに過ぎず、かといって一旦無料にしたネット配信のニュースをふたたび優良に戻ることは無理がある。
保守の名門・老舗ウォールストリートジャーナルとて、ニューズコープ社のマードックに買収(07年に56億ドル)されて以来、紙面をタブロイド版にし、経済ニュースばかりか社会ニュースを激増させた。
そのうえで、ネット配信ニュースを無料とした。理由はネットの広告料が増えれば、全体的なメリットがあると計算したからだった。
このような環境変化によりニューズコープは08年第四四半期に64億ドルの赤字に転落した。系列のフォックステレビさえ広告収入が劇的に落ち込んだ。
▲「USAトディ」のガネット社も大変だぁ
米新聞大手グループのガネット社は五日間の無給休暇を導入した。同社は最大手「USAトゥデー」など85の新聞を発行し、23局のテレビを経営、総従業員はおよそ三万人強。全米マスコミ最大である。
無給休暇を2009年1―3月期中の取得を義務付けると同時に、もし休暇取得を拒否した場合にはレイオフ(一時解雇)の対象になる措置をとった。
すでにガネット社は08年12月に傘下の新聞社で約10%の人員削減を決めた。広告収入の大幅な減少が原因である。にもかかわらず売り上げ減退に歯止めがかからないため、コスト削減を一段と進める。
一方、会社更生法を申請したトリビューンは、主力の「シカゴ・トリビューン」をタブロイド紙面として、再建を目指す。ただしタブロイド版は、駅売りに限り、宅配サイズは従来通りの方針という。
オバマ大統領の地元はミシガン州。その地元大手マスコミ、「デトロイト・フリー・プレス」と「デトロイト・ニュース」は毎週月曜日から水曜日の配達を中止し、インターネットで配信する方針を固めた。
両紙は広告が集中する木・金曜ならびに日曜版に配達を限定し、ネット版は無料で閲覧という措置をとった。
デトロイト・プレスは発行部数30万部を誇り、全米で20位の有力紙だがビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)の販売不振など、地元の自動車産業からの広告が激減。
かくして米国マスコミ産業は急速に業界の淘汰・再編が進んでいる。
シカゴ・トリビューンは08年に不動産王のサミュエル・ゼルが買収し、創業家の経営支配から脱却、従業員による持ち株方式に切り替えていた。経営の効率化を急ぐゼル会長は本社ビルの売却も表明していた。
▲雑誌媒体も変身の最中
雑誌は広告の収入により成立し、購読料は付け足しである。TIMEとならぶ全米週刊誌の雄は、NEWSWEEK(親会社はワシントンポスト)だ。
ところがNEWSWEEKも、07年末に310万部発行部数と豪語してきたが、09年2月現在、なんと260万部に激減し、09年には190万部、2010年には150万部に落ち込むと予測される。
定期購読者が120万人、これが同誌の鉄票。駅の売店では4ドル95セントだが、定期購読にすると一部たったの47セント。
NEWSWEEKは、編集方針を変更する意図はないがサイズを変更し、写真頁を増やすという路線変更を考慮中と言われる。読者対象を特化し、豪華な広告を増やしていく方針も漏れてくるが、そんな対応だけで、このマスコミの危機を乗り越えるのは難しいのではないか。
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(読者の声1)国際戦略ド素人のオバマ、大口をたたいてイラク米軍撤退、アフガニスタン米軍増派を唱えたものの、イラクのぺトラレウスは24ヶ月で撤退出来るとも確言できないと、他の将軍らはアフガニスタンはもっと困難だ、と。
あの峻険な山岳地帯や、中世の匈奴であるイスラム・タリバンをどう理解しているのか。
タリバニスタン? いいネーミングですねえ。
ノーマルな人間ならば、未熟なオバマの幻想趣味には付き合えない。さて現在、奈落の淵にまできた米経済は、この09年中にはUターンのスタート・ラインにも立てない。これも子どもの幻想。
よって日本政府は、アフガニスタン自衛隊派遣には消極的であって良いのです。「今、急いでタリバンを退治すると? だからどうなるんだ?」とバイデンに聞いて見れば良い。
パキスタン・アフガニスタンは「閉じ込める」以外、それほどの戦略的、経済的メリットなどない。それよりも危険なのが、プーチンのロシア経済破綻。
ロシアは、劣悪なる生活環境です。原油が40ドル程度では食っていけない。メドヴェージェフが反旗を翻したと思われる言動が聞こえる。
ロシアマフィアのベレゾフスキー(ユダヤ、英国へ亡命中)も、テルアビブの極右ネタンヤフもブリッツも、プーチン失脚を狙って虎視眈々です。
プーチンは座して殺されるよりは、メドを殺すという攻勢に出る。プーチンは生まれながらの狼です。メドは殺される宿命の羊。ついでにのるかそるか、狼の群れはウクライナに侵攻する。
グルジアも戦車で踏み潰す。これ実験済み。ところでEUに苛められてきたトルコの英雄エルドガンが親露・反イスラエルだから何もしない。
麻生さんにとっては北方四島+千島返還の好機到来かな? または、「死の接吻」だろうか?このアフガン匈奴やロシアの民族性、もうすこし分析してください。(伊勢・ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)ロシアのデフォルト時限爆弾、刻々と時をつげています。4000億ドル対外債務、手形のジャンプをしないと凌げない窮状に陥ったようです。
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2866 イラク撤退、アフガン増派の大口 宮崎正弘
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