2895 沈黙のキーワード  渡部亮次郎

朝日、毎日新聞とテレビ朝日の幹部は,北朝鮮に武力攻撃をされた時に黙って捕虜になるのだろうか、話し合えば助かるとでも思っているのだろうか、読んだり番組を観たりしていると、そうとしか思えなくなる。私だけだろうか。
今、イラク爆撃のアメリカをなぜ支持するか、なぜもっと話あわないかと彼らは喧しい。だが私はイラク問題の後に控える北朝鮮問題を解決するには、頼る武力(核)はアメリカしか無いのだから、それに先立つイラク問題ではアメリカを全面的に支持して両国の安全保障関係を再確認しておく必要がどうしてもある、と思う。
あるいはイージス艦の派遣にまで踏み込んだのだから大丈夫だろうなどと言う人もいるが、あれはあれ、これはこれ。第一、イージス艦はイラク攻撃の支援に派遣したものではないし、アメリカ人は道具やカネは出すが血は絶対流そうとしない日本人を軽蔑し始めていると聞かされている。なんとも残念なことだ。イージス艦の将兵に申し訳ないことである。
それもこれも小泉首相が真実を国民に丁寧に説明しないからではないか。冒頭に私が述べたようなことを言えばよいのではないかと思う。当然、国会は騒然となるが。
わが国はマッカーサー元帥の執拗な拒否をよしとして、軍隊を持たぬとの憲法を持ち、それを守りさえすれば戦争は起こらないし、巻き込まれもしないだろうと思い込む勢力のなすがままにやってきた。
しかし、軍備に使わなかった分、経済は発展したけれどいざ、国を守ろうとするとき、自衛隊では帯に短く、北朝鮮、韓国、中国から舐められるばかりだ。特に国交の無い北朝鮮からはおちょくられっぱなしでは無いか。
いざ、北朝鮮がミサイルを発射した、それ襷(たすき)といった時、襷はアメリカに借りなければ駄目だ、沖縄の基地のも断らなきゃ動かせないと言うことになっている。
イージス艦「霧島」を見学したことがある。横須賀港内で電源を全部入れたら市内中心部のテレビに障害が出るというぐらい強力な無線装備艦でありミサイル満載の艦である。
しかし航空母艦の無い海軍は、いかにイージス艦があろうとも帯に短し襷に長しで、ものの役には立たない。イージス艦の情報収集能力ぐらいならアメリカ軍に協力して何の支障があろうかと思っていたが,長いこと酢だのこんにゃくだのと共産党と社民党は勿論民主党もいい顔はしなかった。
何たることだろうか。いな、与党の中にも理屈にならない感情論でぶつくさいっている部分があって小泉首相の足を引っ張っている。ドウスルコトモ・キャンノット。
アメリカとイラクの対立はキリスト教とイスラム教の対立という側面があって、対決を話し合いで解決することは出来ないだろう。何百といえるほどの民族が一つの土地に集まり、それ故に単純な規範で結ばれているアメリカは、唯一最大の軍事大国でもある。
「この成功は過去の実績をみればわかるように、アメリカのやり方こそが正義で真実であることを示している、だから地球全体がアメリカと同じやり方をすれば地球全体が発展し、平和になる」と主張しているように聞こえる。
ドイツとフランスが今回アメリカにすぐは同調できないのもアメリカの言い分が独りよがりに聞こえ,歴史的、文化的大国としてのプライドを傷つけられるからではないか。あながち石油利権の対立ばかりではないようだ。
翻って日本にそういえる資格はない。資格を得るには再軍備する以外にないが日本の再軍備にはアメリカが反対だ。
日本でも与党の一部と野党が反対だ。しかし後門に北朝鮮を控えている以上、イラク問題では全面的にアメリカに協力せざるを得ない。そこで小泉首相の打った手が原口国連大使にやらせた明らかなフライング発言である。アメリカでの出来事として余り騒ぎになっていないのだ。
前もって竹内外務事務次官を訪米させるという全く異例のことをやった。次官はアメリカ政府部内を隈なく回って根回しを終えた。アメリカは日本政府が最後の最後まで明確な態度表明はしない,しかし国連大使によって旗幟の鮮明はする、という苦肉の策を了承したのである。
日本政府としては後門に待っている北朝鮮のことがあるから前門のイラク問題ではアメリカのいわば言いなりになるしかないが、さりとて天下に後門のことを今言えば後門は怒り出して藪のヘビを突っつくようなものだから、国会では訳のわかったような判らぬような答弁をするしかないのである。野党と一部マスコミに政府追及の弱さがあるのはこうした点についての推測力の乏しさを物語るものである。
冬のサウジアラビア。首都リヤド郊外の夜、ダフナ砂漠に立ったことがある。電灯がない、月も無い夜。昔の隊商はこれではそれこそ星明かりしか頼るものが無かった。風さえ音無く、真の闇というものを生まれてはじめて見た。砂漠に居るアメリカの攻撃部隊は満を持している。過酷な自然条件の下、忍耐は既に限界だろう。(杜父魚文庫より)2003/03/09
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