バンカメもシティも米国が国有化?オバマ政権は銀行の国有化を本気で検討している節がある。
ルービニNY大学教授はいまや世界的売れっ子。まだ49歳。ウォール街大不況を予想したので、世界のジャーナリズムから引っ張り凧。『フォーブス』にも毎週、コラムを書いている。
ルービニNY大学教授は言う。「銀行の国有化はあり得るシナリオだ。1990年代にウェーデンが実施したように、一度国有化、利益を上げて民営化。このためにとりあえず7兆ドルから9兆ドルが必要だろう」
グリーンスパン前FRB議長も言っている。「銀行の国有化が必要になるかも知れない。
ルービニが続ける。「国有化は半年以内に。人々は哲学的には行動しない。インセンティブに反応するのだ」。
そしてこうも言っている。「グリーンスパン前FRB議長の失敗は、中央銀行の目的が金融システムの安定化のために設立されたことを忘れたことだ」。
どうもアメリカの議論の行間をよむと、銀行国有化という“まさかのシナリオ”が、ワシントンの水面下で本格化しているのではないか。
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(読者の声1)<<世の奢侈になれて人君執政の心惰弱となれり。惰弱となりし故、身を苦しめて倹約すること能わざるなり。身を苦しめて倹約を致し、国家の不経済を取り直すことのなさざる程の不甲斐なき心にては、軍(いくさ)は中々致されざることなり。早く国を渡して浪人すべし>>
これは西尾幹二氏の『GHQ焚書図書2』の中に引かれている林子平著『海国兵談』の一節です。
西尾氏はこの一説について次のように説きます。
(引用開始) 「国を挙げて倹約し国家財政を立て直し、そして軍備を整えなければいけないのに、幕府は奢侈に流れて気概を失っている。これでは戦争などできっこない。だったら、「早く国を渡して浪人すべし」。
早いところ大政奉還して武士は浪人しろ、という意見です。いいかえれば 朝幕挙げてとにかく国防を考えること、そうやって押し寄せる外敵に備えなければ国は危うい、といっているのです。どうでしょう、まったくいまの日本人に向かって言うべき言葉ではないでしょうか。状況も似ていますね。
林子平が老中に会い国防の重要性を指摘しても、また大納言に会って国の守りを強調しても、ほとんど相手にされない。今の日本もそうでしょう。中国の軍備拡張や北朝鮮の核ミサイルの脅威、またアメリカの金融破産が引き起こすであろう日米安保の避けがたい空洞化など、いくら日本を取り巻く国際情勢の厳しさを叫んでも、だれも本格的に動こうとしない。
選挙のときも、いくら国防問題を叫んでも全然票にならないそうでうね。ほんとうに現在の日本と幕末のこの時代には共通点があります。だからこそ私は林子平は偉大な先覚者であったと思うのです」。(引用止め)
林子平には他に『三国通覧図説』という書があります。
国防に資するためにと朝鮮、蝦夷(北海道)、琉球(沖縄)の三国についてまとめた情報資料です。この書は、イギリスが小笠原諸島を領有しようとしたとき、幕府がそれに抗議するよすがになったのです。
独訳、仏訳されていたこの書の中に、小笠原諸島は日本が発見したものとの記述があり、幕府はイギリスの野心を挫くことができたのです。
権威を有する方々、権力をふるう人々の中に、国民のいたみを共有しようと税金で食む金やベネフィットを自ら放棄し、官僚・公務員・天下り・渡りの者たちの俸給を引き下げ、特殊法人を潰す気概を示す者はいないのでしょうか。だったら、「早く国を渡して浪人すべし」、です。
西尾氏は以下のようにも慨嘆します。
(引用開始) 「当時(戦前戦中)の日本人は欧米諸国を侵略国家として認識し、指弾していたのです。・・・ ところが、いまの新聞、雑誌、テレビ、あるいは教科書を見てください。日本がアジア各国を侵略したという話にガラリとすり替わっています。
そんなバカな話はありません。アジアの国々を侵略したのは欧米諸国であって、決して日本ではありません。日本は侵略された側の最後の砦だったのです。
それなのにいつの間にか、日本は侵略した側にされてしまった。というより欧米は無罪で、日本だけが侵略国にされてしまった。そんなとんでもないことがおこっているのは、敗戦国から抜けられない日本人の心理現実で、現代の敗戦国は領土だけでなく歴史も奪われる端的な例です」。(引用止め)
戦後GHQが日本人になした所業には、ラジオ放送『真相箱』などの電波による思想誘導、焚書による思想隠蔽、検閲による出版物やメディアへの思想統制、そして東京裁判で浸透させた被虐史観思想があります。
それらによって西尾氏の鋭く指摘するように、我々は「領土だけでなく歴史も奪われ」た「日本人」でない日本人になってしまったのです。
それをサポートし助長しているのが、昭和史しか見ないいわゆる「昭和史」家や左傾化した現代史学者たちです。その説くところが戦後の日本人に、受入れやすい反省と心地よい慰撫を覚えさせる事を、彼らが知悉してるから余計タチが悪いのです。
『GHQ焚書図書2』に、
大川周明の『米英東亜侵略史』の次の一節が引かれています。
(引用開始)「深く思いを国史にひそめ、感激の泉を荘厳なる国体に汲み、真箇に日本的に考え、日本的に行わんとする人々は、たとえあったとしてもその数は少なく、その力は弱かったのであります。
しかるにロンドン会議はただにこれら少数の人々のみならず、多数の国民の魂に強烈なる日本的自覚を呼び起す機縁となったのであります」。(引用止め)
先のワシントン会議で結ばれた九カ国条約よりも、1930年のロンドン軍縮会議での補助艦船についての譲歩(=幣原喜重郎の弱腰外交)が日本の国益を大きく損ない、それが国民に強い日本的自覚を呼び起したと大川は言うのです。
西尾氏は、日米は干戈を交える必然があった、もしあの時ああせずこうしていたら、は本質ではない、ファシズム、全体主義も関係ない、という見方をしています。
『GHQ焚書図書2』で焚書(仲小路彰の書など)の数々の存在を知り、戦前の日本人の心情と世界の状況に照らした複眼的な歴史観に触れると西尾氏の見方が自ずから感得されます。
戦中の日本人の心情が窺える一著として野依秀市の『米本土空襲』が挙げられています。
山本五十六はなぜハワイの海軍基地を攻撃したのだ。そこだけ攻撃して矛を収めて引き返したのは何故だ。その後なぜ米本土攻撃を企てなかったのだ。
そうしなければ敵が日本を空襲してくるだろう。昭和18年日本人は米軍がまもなく日本本土を空襲してくることを予想し怖れていました。
それなら日本が先制攻撃をかけるべきだと訴えたのです。そう書かれた本に接すると当時の日本人の心裡を知りなるほどと理解できます。当時の日本人の心情、有していた思想や複眼的な歴史観から遠ざかったまま、歪んだ天眼鏡で戦前戦中を眺めていてはまず分からないことごとです。
焚書の中に、現代の我々が抱えている歪みを正すもの、「深く思いを国史にひそめ、感激の泉を荘厳なる国体に汲み、真箇に日本的に考え」、「国民の魂に強烈なる日本的自覚を呼び起す機縁」となるものが数多く埋もれています。(有楽生)
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