2934 二人が肩を組んで歩いていく後姿 古沢襄

麻生首相はオバマ米大統領との会談を終えて帰国の途についた。通常なら両国首脳が記者団にコメントを発表するのだが、二人が肩を組んで歩いていく後姿をカメラに見せるにとどめている。
麻生首相は通訳を介さずに話し合ったというから、一時間あまりになった会談はかなり多岐にわたったと想像できる。会談を取材した各国のメデイアは「会談の半分が経済の問題だった」との麻生首相の発言を伝えている。
会談を英ロイターと米ブルームバーグが報じているが、ロイターは首脳同士がエールの交換をした程度の扱い。内容がない。ブルームバーグは「経済討議が半分で、中身の濃い話ができた」という麻生首相の話を伝えた。記事そのものは長いが、”濃い中身”にはタッチしていない。
日本のメデイアでは比較的に経済に強い時事通信社のワシントン電をみてみた。「米側の期待は、日本の重荷になりかねない。世界同時不況をめぐっては、”追加的な景気対策を迫り、不良債権処理などで米政府が大量に発行する国債の消化を求めてくる”(閣僚経験者)と警戒する声が出ている」と核心を突いている。
しかしオバマ大統領が何を求め、麻生首相がどう応えたかが明らかにされていない。両首脳の会談内容は、これから両国の外務・財政当局から少しづつ洩れてくる性質のものかもしれない。
大量に発行する米国債を日本と中国が消化に務め、世界同時不況の払拭に乗り出すと麻生首相が大見得を切っていたら、オバマ大統領は喜んで両国首脳による共同記者会見に臨んでいただろう。
だが、そんな危ない橋を日本が渡る筈がない。といって中国と日本は米国債の最大の保有者でもある。同じ船に乗り合わせているのも事実だから、一日も早く米経済の立ち直りを望むことには変わりない。
ロイター、ブルームバーグ、時事の各国記事を読みながら、日米首脳会談で即効薬はないが、頓服薬を飲みながら体力の回復を待つ・・・それが「二人が肩を組んで歩いていく後姿をカメラに見せるにとどめた」ことの真実を物語っていると思った。
<[ワシントン 24日 ロイター]オバマ米大統領は24日、訪米中の麻生首相と会談し、日米関係は「東アジアの安全保障の礎石」と述べた。大統領は記者団に対し「日米同盟は米国にとり非常に重要」とし、強化していきたいと語った。
麻生首相は、オバマ大統領が就任して以来ホワイトハウスを訪れる初めての外国首脳となった。両首脳は、世界経済のほか北朝鮮やアフガニスタン問題などについて話し合った。
大統領はさらに「気候変動からアフガニスタンに至るまで幅広い問題で、日本は素晴らしいパートーナーだ」と述べた。麻生首相は米国に招待されたことを非常に光栄とし、経済危機などの問題について緊密に協力していくと語った。(ロイター)>
<2月24日(ブルームバーグ):麻生太郎首相とオバマ米大統領は24日、ワシントンのホワイトハウスで会談した。初の顔合わせとなった両首脳の会談では経済問題をはじめ、アフガニスタンや気候変動などを話し合い、麻生首相は「話の中身は濃かった」と記者団に語った。
麻生首相はオバマ大統領について、「一緒に手を携えてやっていける信頼たる指導者という印象が一番だった」と語った。会談の半分が経済の問題だったと述べ、金融については、基軸通貨であるドルの信頼の維持が一番肝心だということをオバマ大統領に伝えたことを明らかにした。
首脳会談は、先週訪日したクリントン国務長官と中曽根弘文外相の間で合意、発表されたもので、麻生首相は、オバマ大統領がホワイトハウスに招く最初の外国首脳となった。オバマ政権の日米同盟重視を象徴する会談は、一方で、内閣支持率が10%台前半にまで低下するなど、麻生首相にとって政権運営が一段と厳しくなる中、開催された。
オバマ大統領は会談の冒頭、「日米友好関係は米国にとって極めて重要だ」と語り、日本については東アジアにおける安全保障の「礎石だ」と述べた。
麻生首相によると、両首脳はアフガニスタン問題を話し合った際、パキスタンとイランも大事だということで一致した。日本がパキスタン支援会議を東京で開催すること、さらには韓国と共同で進めている職業訓練に対し、オバマ大統領から感謝を伝えられたという。
麻生首相はまた、東京で鉄道への依存率が76%という話題を含め、エネルギー効率やアメリカの自動車文化にも話が及んだと述べた。
会談は現時時間午前10時半頃に始まり、11時49分に終了。会談を終えた両首脳は記者団にはコメントせず、肩を組んで歩いていく後姿をカメラに見せるにとどめた。
麻生首相は会談後はリチャード・アーミテージ元国防副長官やジョン・ハレムCSIS所長らとの昼食会に出席し、ダニエル・イノウエ議員の表敬を受けた。ワシントンを夕方に発つ予定だ。(ブルームバーグ)>
窮地の首相、「日米」に活路=期待ものし掛かる
<【ワシントン24日時事】麻生太郎首相とオバマ米大統領の会談が24日、ワシントンで行われた。1月20日のオバマ政権発足から約1カ月、首相は外国首脳として初めてホワイトハウスに迎え入れられる厚遇を受けた。
国内では支持率下落で政権基盤がぐらつく首相。世界がその動向を注目する大統領との会談をてこに、政権浮揚を図りたいとの思惑もちらつくが、経済危機への対応やアフガニスタン復興支援などの問題で、米側が寄せる「期待」も重くのし掛かる。
「日本人としてだけでなく、アジア人として非常に光栄に感じる」。会談の冒頭で、首相はホワイトハウスへの招待にこう謝意を示し、続けて「われわれは世界第1、2位の経済大国だ。日米が手を携えて協力して取り組まなければならない」と強調した。
◇会談実現へ執念
「外交の麻生」を自認する首相は、昨年11月の大統領選直後から、オバマ氏との会談実現に動いた。今年1月末の電話会談では、就任祝いのあいさつもそこそこに公式会談の早期実現を直接働き掛け、その「熱意」は大統領を驚かせた。
米国が共和党政権から民主党政権に代わったため、トップ同士で早めに意見調整する必要があるとの判断からだが、支持率低迷で窮地に立たされる首相側の事情も見逃せない。
郵政民営化をめぐる自らの発言が党内で反発を浴び、「盟友」の中川昭一前財務・金融相は外遊先での記者会見で醜態をさらして引責辞任した。内閣支持率が10%台に低迷し、「麻生離れ」が一段と広がる中で、首相にとって「外交」は、失地回復への残り少ない「カード」になっていた。
折しも、麻生・オバマ会談が行われた24日は、大統領にとって初めてとなる議会での施政方針演説の当日。「演説前の多忙な時間によく日程を突っ込んでくれた」。米側との日程調整に当たった政府関係者はこう振り返る。
首相を迎える大統領は就任前から、日米で「不朽の同盟」を構築すると表明。24日の会談では「日本は偉大なパートナーだ。日米同盟は東アジアにおける安全保障の礎石だ」と語り、日本との関係をことさら重視していることを強調した。
◇ツーショットも効果薄?
ただ、米側の期待は、日本の重荷になりかねない。世界同時不況をめぐっては、「追加的な景気対策を迫り、不良債権処理などで米政府が大量に発行する国債の消化を求めてくる」(閣僚経験者)と警戒する声が出ている。
アフガン支援でも、非軍事面での人的貢献に加え、資金面での協力も課題になるとみられ、外務省幹部の1人は「米国の期待に応えて主体的に何をするか、日本にとって大きなテストになる」と身構える。
首相は、今回の訪米で大統領と個人的な信頼関係を構築したい考えだが、6割を超える支持率の大統領との勢いの差は歴然。ある自民党のベテラン議員は「オバマ氏とのツーショット程度では、政権末期の状況から抜け出すことはできない」と冷ややかに話す。(時事)>
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