2944 雑談:権力との付き合い方① 福島香織

■更新滞っていました。すみません。このタイミングで書くなら、首相の訪米成果の分析とかなんだろうな。しかし、期待されている方、すみません。ここはあくまでゴシップ・ブログなので、そういう真剣な記事はとりあげない。同行記者の記事をどうぞ。私レベルではおこがましくて書けないよ。
■ちなみに、米国から首相と一緒に帰って来た人に、「米国債買え~って、暗黙のプレッシャーかかりましたか?」ときいても、「そんなのありえない!」とのこと。つまり日本の外貨準備高の増額って年3兆円程度だから、それを全部回しても75兆円規模の米国の経済政策にとっては焼け石に水だから、米国はわざわざそんなこと日本に頼まない、と。
今回の成果は、米ドル基軸維持で日米が一致したということ。米国としては、ドルの権威維持に第二の経済大国日本がいち早く協力表明してくれたことで、十分恩にきている。日本にとっても、つまりドル安を容認しないということを米側が約束してくれたこは大きな成果と。というわけで、ドル80円に切り下げでリセットということはない?
■で、某先輩記者にそう伝えてみると、「政治家や官僚は平気でウソつくこともあるからな、鵜呑みにできん」。もちろん中国当局者も公式非公式とも、よくニセの情報を流すのだが、長くいていた分だけ、これはあやしい、これは本当というカンが多少は働く。だが、日本の政治については、本音と建前、そこのところがまだ、よくわからない。だから書けない。
■で、とりあえず書けることは、自分の目の前で展開される政治部記者の生態なので、官邸テーマのエントリーはしばらくはこっちを主流にする。
■ずいぶん前の話で恐縮だが、番記者(女性)がバレンタインデー・イブに麻生太郎首相にチョコをプレゼントした。小泉純一郎元首相に「叱咤激励」をうけて、心が弱っていたのか、普段なら「記者いじり」のひとつもしそうな麻生首相も、本当に嬉しそうだったという。残念ながら、私はその場にいなかった。その夜は夜勤で本社で作業していたのだ。
■女性番記者がバレンタインデーに首相にチョコを贈るのは官邸記者クラブの伝統という。しかし今年はバレンタインデー当日が週末なので、首相にチョコを贈る、贈らないで、女性番記者たちの間でまえまえから話がでていた。
ある女性番記者は、首相にチョコを贈るのは抵抗があるという。「番記者と首相の関係は緊張感が必要。チョコをプレゼントするような甘い関係でよいのか」。若い記者の中には、政治部にいながらも、こういう潔癖さやきまじめさが滲む人もいる。
■だが某社のある男性記者はいう。「うちの女性記者の中にはバレンタインデーにリヤカー一杯のチョコ(誇張表現)をもってきて、担当の政治家や官僚に電話をかけて、〝今からチョコもっていきます〟とねこなで声をだしている。
ポイントは同じチョコを買わないこと。同じ包みのチョコだと、ばらまいたことが相手にきづかれる」。ちょっと嫌味な口ぶりからして、男性記者としては、バレンタインデーを武器にできる女性記者がややねたましいようである。
でも、女に生まれたからにゃ、その特性をフルに生かして仕事するのがかしこいのは当然。男性記者だって女性議員や女性大臣にチョコあげればいいじゃないか、と言われるだろう。
■政治部の番記者は女性が結構多い。しかも美形率も高い。政治部というのはもともと男性社会的な色合いが強いのに、この女性記者の多さは、やはり、保守的なおっさんの政治部長あたりが、美人で若い女性記者の方が「大物政治家からかわいがってもらえる」と思って配属するのではないか、と思う。
■で、実際のところ女性記者の方が政治家と特に親密になれるかというと、私のみるかぎり、女性であろうが男性であろうが、「政治家にやたらかわいがられる記者」というのは存在するが、その第一の決め手は性別ではないと思う。もちろん、美人記者は政治家にも官僚にももてるだろうが、男だって男にもてる人は多いのである。それもハンサムとは限らない。
■政治家にかぎらず権力者に気に入られる決め手は、おそらく「かわいげ」と総称される魅力であって、それはなんとなく手なづけられそうなスキもあるけど、でもバカではなくて、見込みがある(利用価値がありそう)などと評される人物。自然なムードで相手をうれしがらせるお世辞がいえたり、容姿が好ましいければなおよし、性別が違えば、そこはかとなく下心も滲むこともある。
■おそらく政治部記者が最も求められる資質は、この「かわいげ」であって、政治部とはかわいげのある記者がネタをとれる世界である。いや、ネタをもらえる、というべきか。
「あの記者は某大物政治家からえらくかわいがられている」などという、やや嫉妬のまじった表現を耳にすることがあるが、政治家と政治部記者の関係とは、そういう上下関係が基本であり、新人記者の頃に教えこまれた「記者はどんな権力者とも対等に向き合い、取材する権利がある」といった建前を信じ込んで、かわいがられる関係に抵抗を感じる者は、けっこう居心地がわるいだろうと推察する。
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