◆世界的危機の時代◆
米国のサブプライム問題に端を発した世界経済金融危機の着地点が見えない。その環境下、英国の消費税率切り下げを皮切りに各国は続々と手を打ち始めた。
オバマの米国も、グリーン・ニューディールと銘打つ環境・新エネルギー投資、大規模公共投資、国民医療皆保険導入等で事態反転を狙う。
イラク撤退等で浮く資金を使う事になるが、金融機関やビッグ3救済もあり、それだけでは到底ファイナンス出来まい。
オバマ政権下での新ドル切り替え、既存米国債のデフォルト宣言等も決してあり得ない話ではない。
中国は成長率が落ち、これ以上失業者が増えると共産党政権が転覆しかねないため、地方政府分も含め60兆円とも言われる大型景気対策を必ず実行するだろう。
実際に経常収支と財政が黒字であるためその余裕があり、世界経済は大きく中国内需頼みになる。
米国始め欧米が、ソマリア沖の海賊対策で艦隊派遣要請するのみでなく、将来の太平洋の覇権分割に繋がりかねない空母艦隊創出を容認しているのもその反映である。
◆麻生政権後の経済有事体制◆
さて、転じて日本。麻生政権の出足の遅い緊急対策、目的不明確な定額給付金が目玉の08年度補正予算、多少規模が大きくなったが方向性曖昧な従来型配分の09年度予算では対応出来ず、景気は落ち込み、失業者が更に路頭に溢れ自殺者、犯罪が蔓延し日本社会の崩壊に繋がる。
小沢民主が掲げる政策も、高速道路無料化、子供手当、ガソリン税暫定税率、農業戸別保障等はあるものの、中核となる政策である行政の無駄排除と地方分権、社会保障によるセーフティーネット構築等は何れも中長期的課題であると共に、財政中立的で平時モードの政策であり、急進する事態の悪化に間に合わないだろう。
早急に総需要を喚起し雇用を作り出す必要があるが、特効薬と言われる公共事業は土地収用費用に消える分も多く時間が掛り乗数効果も落ちており、第一、作り終わった後に 経済効果を生まないものが多く、国債の発行も含め世論の支持を得るのは難しい。
投資は、将来への持続的な成長に繋がりリターンが期待される分野へ集中すべきだ。現下は、百年に一度の危機である。
今後の産業構造は、世界的に需要が予想される分野へのシフトが必要だ。
例えば、分野別新型国債を発行してファイナンスし、成長が期待される新産業分野等に国家プロジェクトとして投資し、よってGDPが伸びた分を利息の代わりに国債購入者に配当する。
いわく、新エネルギー債、環境・安全技術債、羽田空港整備債、食糧水資源技術債。あるいは、もっと細かく、メタンハイドレード債、カーボンナノチューブ債。
どうやって正確にGDP寄与度を測定するか、どのように投資資金を流し込むか等、本当に実現するためには問題ありありだが、例えばキモである投資の決定にはノーベル賞級の学者等で構成する投資決定委員会の仕組みが考えられる。
麻生政権がどのような形で何時終わり、その後の政権の枠組みがどうなるかは不明だが、新政権は経済有事体制を宣言し、これまでに無かったような思い切った飛び道具的な政策を打つ事が必要となろう。
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2946 分野別新型国債での新産業投資 佐藤鴻全

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