報道によればオバマ米大統領は2月27日、約14万人にのぼるイラク駐留米軍の撤退計画を正式発表した。2010年8月末までに戦闘部隊を撤収させ、11年末までにイラクから完全撤退する、という。
あと1年と半年で戦闘部隊を撤収するということは、イラク政府にすべての治安権限を委譲して、「金や武器などの物資は潤沢に支援するから、後は任せた、よろしく」ということである。
外務省によれば、
<米軍増派の完了、シーア派民兵組織「マハディー軍」による武装抵抗活動の停止宣言、米軍の支援を受けた「覚醒評議会」(スンニー派中心の治安組織)による反アル・カーイダ闘争等の要因によって、治安情勢は全体として落ち着きつつあります。
こうした中、多国籍軍からイラク政府に対する治安権限の移譲が進んでおり、既に、イラク18県中、クルド3県、南部6県及び中部カルバラ県などの計13県で治安権限が多国籍軍からイラク側に移譲済。(残りの県:ニナワ、キルクーク、サラーハッディーン、ディヤーラ、バグダッド)>
肝心要のバグダッドは、この戦争の象徴だけに最後の最後までもみ合うことになるのだろうか。どうもそうはなりそうもない。
戦争している最中に一方的に米軍や多国籍軍が撤収する終戦日が分かったなら、敵も味方もやる気は失せる。無理な交戦はしないだろう。だって来年には家に帰れるのだもの。
武装勢力は撤収後に大攻勢をかければタラバーニー政権は吹っ飛ぶから、勢力を温存する。かつての支那では、国共合作でも共産党は軍事力を温存し、日本が撤収するや一挙に国民党へ攻勢を強め、政権を奪取した。
来年出て行くことが決まっている米軍や多国籍軍を攻撃したら、それこそやぶ蛇で、「それなら出ていかない」となりかねないから、小生が武装勢力なら彼らが出て行くのを昼寝をしながら、かつ力を貯えながらじっと待つだろう。
もともとが数千年間の部族社会であり、民族も宗教もばらばら。サダム・フセインは恐怖政治でどうにか中央集権国家をつくった。米国の後ろ盾があるからイラク政府は存在しており、米国がいなくなれば一気に消えてなくなるだろう。
部族社会(部族国家)からなる緩やかな連合体、「イラク地下資源活用機構」でもつくって、総裁は持ち回りでやればいい。それのほうが部族社会にはお似合い、自然である。
バラク・フセイン・オバマをイスラム社会は誉め讃えていることであろう。
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