2959 多極化目指すニューヨーク資本家たち 古沢襄

人類の幸福は世界というパイを拡大することによって、分配の利益を享受することではないか。田中角栄政治が華やかな頃、大蔵省の高級官僚がいった言葉である。ついでに福田赳夫氏の財政論については「一九世紀の経済学ですな」と斬り捨てた。
この言葉を今風に考えるとパイを拡大するのには、超大国・米国の力を弱めてでも、世界全体の経済成長を重視する「成長重視」型となる。一時的に米国の力が低下しても、世界の国々が経済成長すれば、長い目でみれば米国の利益になるという考え方である。
共同通信社外信部の在籍したこともある田中宇(たなか・さかい)氏は次のようなことを言っていた。同じ趣旨の内容になる。
<ニューヨークの資本家たちは、世界中に投資を分散し、世界的な利益の最大化を目指している。1970年代以降、米英は高度経済成長の時代を終え、低成長に入っている。米英中心の世界体制が続く限り、米英以外の世界の経済成長が阻害される傾向が強まる。
資本家たちは、米英中心の覇権を破壊し、覇権をロシアや中国など世界中のいくつかの地域大国に分散し、世界を多極化することで、世界的な経済成長を高めようとしている。これは彼ら自身の儲けのためであるが、世界の発展途上国の人々のためにもなる。>
この見方に賛成である。ニューヨークの資本家たちと結びつきが強い米共和党の議員には考え方が多国籍的で多極主義な人が多い。極端なことをいえば、愛国者、ナショナリストの風貌をみせない特徴がある。
田中宇氏の論を続ける。
<ニューヨークの資本家層は、イギリスからアメリカに世界の覇権が移ることに伴い、1890年代から1930年代にかけて、ロンドンからニューヨークに移ってきた、ユダヤ人を中心とする勢力である。
欧米の資本家の中心地は、16世紀にはスペインにあり、資金はスペインの植民地開発に回されていた。その後17世紀にオランダ(アムステルダム)に移ってオランダの植民地開発に資金が使われ、その後18世紀には産業革命のイギリスに移り、20世紀はじめにニューヨークに移っている。
資金が移動するたびに、移動した先が世界的な覇権国になる(もしくは、覇権国が代わるたびに資金がそこに移動する)という歴史を繰り返してきた。>
米国ではネオコンが退場し、ブッシュ政権からオバマ民主党政権に代わった。オバマ大統領は強いアメリカの復権を唱えて、イラク戦争で自信を失った米国民の愛国心に呼びかけた。そこには「米国の力を弱めてでも、世界全体の経済成長を重視する」という発想はない。
日本でいえば小泉・竹中構造改革は、米共和党やニューヨークの資本家の発想と似ている。世界をグローバルなものとして捉えて、世界の経済成長に合わせた政策実施を志向していた。そのためには自民党をぶち壊し、既存の支持団体が離れることも厭わない。
しかし長期的な視点に立てば、現状のパイを後生大事に抱え込み、縮小均衡で安定を求めるのは、いずれ破綻する。それではパイの分配が広がらない。
田中宇氏は、ここ数十年のアメリカの世界戦略は、米英中心主義(ナショナリズム)と、多極主義(キャピタリズム)の相克・暗闘によって揺れ動いてきた・・・という見方をしている。
<多極主義者は、ベトナム戦争の泥沼化を誘発し、その解決策として、中国を冷戦の敵から味方へと転換させて経済発展させることを目的としたニクソン大統領の中国訪問が1972年に挙行された。
1980年代のレーガン政権は、当初はソ連への敵視を強めて冷戦体制を強化する米英中心主義の政権に見えたが、後半にはレーガンがゴルバチョフと連続会談して冷戦を終わらせるという多極主義の動きをした。
冷戦終結は、冷戦という米英中心の世界体制を壊し、EUというアメリカと対抗できる新たな覇権地域を成立させた点で、多極主義的な動きである。
おそらくニューヨークの資本家は、米英中心主義者が提起したG5やG7の先進国中心の新システムにも満足できず、西側先進国が世界の中心であるという冷戦構造そのものを壊した方が、世界の経済成長が高まると考えたのだろう。>
(ユダヤ人の中にも、米英中心主義者と多極主義者がいる。イスラエルの国益を最重視するシオニストは「米英中心主義」を「米英イスラエル中心主義」に拡大することを目指してきた。
これに対し、昔から「ロスチャイルド」と呼ばれている資本家たちは、多極主義である。ロスチャイルドは、もともとは一つの家系の名前だったが、今ではニューヨークとロンドンの資本家層の代名詞である。ロスチャイルドは、シオニストに協力するふりをして、シオニストを弱体化する戦略を昔から展開してきた。
ネオコンや、イスラエル右派のネタニヤフは、シオニストのふりをしたロスチャイルドの代理人である)
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