「ロシア帝国再建の父」=プーチン首相のイメージが急速に劣化。世界的な金融危機でプーチニズム、大きく後退。通貨も株式も大崩壊。
ロシアの株式は過去十四ヶ月で76・5%の大下落を演じた。通貨ルーブルは一ドル=24・1から 35・8へと49%の下落。金利は13%と飛び抜けて高い。この金利では経済が正常には立ちゆかない。
08年10月までのロシア経済は薔薇色だった。
原油とガスの高騰により、経済成長は破竹の勢い、モスクワ市民は海外の奢侈品にうつつを抜かし、高級車が町を疾駆し、グルジア料理レストランは満員(ロシア料理より、金持ちはグルジア料理が好き)、プーチンは皇帝のごとく、崇められ、そしてロシアという強国再建の父という印象が広がった。
同年十月まで政治的にもロシアは強いイメージが付帯した。
八月北京五輪開会の、その日に、グルジアへ戦争を仕掛けて、欧米は手も足も出せず、イランへの原子炉技術供与にブッシュ政権は非難も出来ず、ついにはキルギスをけしかけてマナス空港から米軍を追い出す策謀にも成功、ウクライナ、ベラルースは元の家来の位置へもどす政治政策を断固として実行中だった。
様変わり。主因は経済要因である。
工業生産16%のダウン、消費者物価13・4%、 失業率は8・1%(数字はいずれも最新の英誌『エコノミスト』(09年2月28日号)。
ウォール街からのTUNAMIは、脆弱なロシア経済を足下から掬った。もっともロシアの新興財閥の多くは、ため込んだ利益を、その前に海外へ逃がしていた。外貨準備はもぬけの殻だった。
日本からの中古車輸出もぴたりととまった。ロシアから買えるのは蟹。
サハリン2稼働の現場に麻生首相が出席したのも、ロシアが対日ガス輸出にことのほか、熱心だからだ。
「ユーラシア・ディリー・モニター」(3月3日付け)によれば、「景気後退と心理的なショックが加味されて、ふたたびロシア帝国の崩壊危機感が市民に拡大、強いロシアというプーチニズムが大きく動揺している」という。
「とりわけ歳入の激減により諸政策が実施不能の状態、赤字財政はいきなり対GDP比8%(単年度)。プーチンの支持率は45%にダウンし、ウクライナの財政破綻に援助出来ず、ガス供給停止の強硬手段も使えず、弱り目に祟り目」の状態という(同ユーラシアディリーモニター)。
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