2974 雨の中、小沢邸の前で張り番 福島香織

■あ~、寒かった、しんどかった。きょうは一日、雨のなか小沢番。住宅街の張り番はトイレにこまるし、ひまな時間があるから、いろいろ考えるし(私なんでこんなことしてるんだろう?とか)。
こういうとき、同じ小沢番にかり出されている他社の総理番記者同士で協力して、30分ごとに交代して車の中で暖をとったりすると、読者から談合とかいわれるのだろうか。いいよ、談合で。こんな仕事で、私は自分の体力や気力を消耗したくない。
■ところで、さる人から、こういう「政治とカネ」がらみ事件については、捜査の中身が見極められるまで、安易に見立てをいうべからず、といわれた。こういう事件のときに真っ先に逮捕される公設秘書というポジションの人が、果たして本当に容疑に見合った罪があったかどうかというのは、起訴事実が明らかにならないと分からない。
明らかになってもわからなかったりするけど。政治家の矢面にたって最初に逮捕されて、ときには秘書が勝手にやりました、と切り捨てられる人も、厳しい追及に憔悴して自殺する人も過去にいたわけなのだから、チラシの裏レベルのブログでこの種の進行中の事件について、何かを書くのは控えたい。
■ただ、ちょっとだけ、所感を述べれば、日本の「政治とカネ」事件って、なんかしょぼい。西松事件については、民主党側は陰謀とか、不公正な国家権力の行使といっているが、中国の政治腐敗と政争と陰謀のスケールの大きさになれていた私にとっては、え? という感じである。
■容疑は企業献金だと分かっていながら、政治団体からの献金のように記載していたという虚偽記載。え?それ罪なんですか。中国人なら、赤信号を手をあげずに渡ったくらいにしか感じないんじゃないだろうか。
■おまけにその額2100万円。え?21億円じゃないんですか?中国人なら、「子供のお小遣い」っていわれそう。中国では陰謀というのは、上海閥のプリンス・陳良宇上海市党委書記を失脚させた上海事件とか、あのレベルの政争をいうもんだ。
■一般に、政治部記者はこういう政治とカネがらみの事件が政局にどういう影響があるかということを書きたがるが、そもそも日本の政局って、日本の社会や経済にどれだけインパクトがあるのだろう。政局が混乱すると、クーデターが起こる?農民一揆が起きる?国家が分裂する?経済が大打撃?
■ちなみに中国の政局が混乱すると、いつでも上記の危機が現実になりかねない可能性をはらむ。人民解放軍は国軍ではなく、いまだ共産党の私兵だし、台湾、チベット、ウイグル問題についての厳しい言論統制がしかれているのは、うっかりすると国家分裂の危機を招きかねないとみんなが思っているからだ。農民一揆は今も、中国のどこかで毎日のように起きている。
■日本の社会や経済によりインパクトを与えるのは、日本の政局よりも、中国の経済や社会状況や外交関係なんじゃないか、と私は思っている。日本の政局はしょっちゅう迷走しているが、それで社会秩序が急に乱れたとは思えない。
隣の国で動乱がおきて大量の難民が押し寄せてくる方が影響ありそう。そして、日本ではそんな三流の政治の中にあっても、司法は、中国的スケールからみれば交通ルール違反程度の不正も見逃さずきっちり追及してくる。そしてこれを不正な国家権力行使ではないか、と会見で意見を主張できる自由もある。やっぱりいい国だよ、日本は。
■そういうわけで、私は雨の中で物言わぬ小沢邸の門をぼーっと見守っているより、50回目を迎えるチベット民族蜂起記念日(3月10日)のチベット自治区および周辺地域の情勢に気を配る方が、国益にかなう仕事(大げさ)と思っている。
話が飛びすぎだろうか。いや、単に3月はチベット問題を集中的に取りあげたいと思っているのに、なんか政局がらみの事件がおきて、官邸クラブ記者なら、なんでそっちを書かないのだ、といわれそうだな、と思って、いろいろ言い訳を考えてみただけ。
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