2980 小沢氏と「一蓮托生」を選んだ民主党幹部 阿比留瑠比

今朝、民主党の小沢一郎代表の公設第一秘書逮捕に関する朝刊各紙を読み比べていて、「意外と朝日が厳しいなあ」と感じました。2面の特集「時時刻刻」の見出しを拾っても、「きわどい徹底抗戦 小沢代表、捜査当局を批判」「民主、『一蓮托生』の賭け」「怒る検察『理解できぬ』 論理のすり替え指摘も」「業者も不信感 説明『笑った』」…とあり、けっこう強い表現となっています。また、社説の方も「小沢氏は退路を断った。今後の捜査で説明と矛盾する事実が明らかになれば、小沢氏の政治生命にも跳ね返ってきかねない」と書いています。
私はこの中でも特に、「一蓮托生」という言葉が気に入りました。というのは、私も一昨日からの民主党執行部の言動を見ていて、全く同じことを考えていたからです。事件の全容が明らかになる前から「陰謀だ」「国策捜査だ」などど決めつけて全面的に小沢氏をかばい、検察を批判している幹部らの姿を見ていると、これで捜査が進んで国民がやっぱり小沢氏が悪いと考えるような材料が出てきたら、一体どうするつもりだろう、小沢氏と一緒に沈むつもりなのかと他人事ながら心配してしまいます。なぜか頬はゆるむのですが。
そこで本日は、読者のみなさんの参考に資するため、東京地検特捜部の捜査が小沢氏の資金管理団体「陸山会」に入ると報じられた3日午後からの、民主党幹部らの言葉をおおよその時系列に沿ってここに紹介し、記録にとどめたいと思います。必死さが伝わってきます。
・ 鳩山由紀夫幹事長、3日午後、民主党本部、幹部会後
「小沢代表から、『全く心配いらない』という話でありました。すべて自分のお金の出し入れ、すべて明らかにしている方ですから、全く問題はないとご本人はそう申していました。私たちはそのように思っております。何かいろいろと陰謀があるなという感じはするんです。政権与党としては今必死なんでしょうね。で、この、何もないところからおかしなことをつかみ取ろうみたいなね、そういう話が出てきているんじゃないかと、相当いやらしいね」
・山岡賢次国対委員長、同上
「代表ご自身は断固としてそういう問題はないと。すべて合法的にやっていると。私もそう思っている。官房を中心とした、言うなれば政権の立場を利用して、そこで選挙のため、あるいは党を誹謗中傷するために組織的に動いているということは前から分かっているので、検察のトップも握っているので、このことについてうかがいしてこい、ぐらいのことは言いかねない。これはマスコミも使った仕組まれた陰謀だ」
・鳩山幹事長、4日午後、国会内、代議士会でのあいさつ
「今朝ほど小沢代表は40分間の記者会見をしたところでして、皆様方もご覧になったかと思うが、私どもからすれば説明責任を果たされたと感じております。小沢代表の言葉で若干申し上げますと、政治的、あるいは法律的な立場からも公正さを欠く検察当局の行動ではないか。小沢代表は、すべての政治資金の収支、入りと出を1円単位まで、非常に緻密にオープンにされているところでして、ある意味ではまさに政治家の鑑のような存在で、ディスクロージャーを旨として行動されている政治家代表です。検察側に政治的な意図があったと疑われて当然だと思っておりまして、むしろ、検察側にその根拠を国民の皆様方にしっかりと示す、むしろ彼らの方に説明責任があると感じているところです」
・鳩山幹事長、4日午後、国会内、報道各社に小沢氏の記者会見について聞かれて
「本来ならば小沢代表、記者会見って普通、10分か15分で引き上げてしまうんですが、すべての記者の質問に答えた。記者のさまざまないろいろな疑念に対する質問に、明快に答えておりました。したがって説明責任というものは基本的に果たしたなと、そのように思っております。私はむしろ、民主主義のルールを分かっていないのはどちらかと申し上げたい。検察当局がね、本来ならこのようなことで家宅捜索を行って逮捕をするということはあり得ない話で、しかも、選挙が近い状況の中で、あえて党の代表の秘書に対して、容疑というものを作り上げて、そしてこのようなことを行うということに対しては、やはり政治的意図があったとしか思えない。私どもとすれば、小沢代表の潔白を信じてともに行動するのみです」
・岡田克也副代表、4日午後、国会内、記者団に
「代表がきちんと説明をして、明確に容疑の事実について否定したわけなので、われわれはそれを信じて行動していくということです。大事なことは右往左往せずにしっかりと前に進むことだと思います。マイナスの影響がないようにしっかりと代表も説明されたし、我々もそれを信じて前を向いて進むということだと思う」
・藤井裕久最高顧問、同上
「代議士会では鳩山幹事長がそれを説明して、非常に心から納得しているので、問題ないと思う。あの通りだと思う。偏った捜査であるということだと思う。(国民には)納得していただけると確信しているが、それ以上のことを言う立場にない」
・平田健二参院幹事長、5日午前、参院予算委員会で
「小沢代表は一昨日の役員会でも説明責任を果たし、昨日の記者会見でも国民に対する説明責任を果たされた。真実は必ず明らかになり、秘書の潔白や無実も証明されると確信している」
・菅直人代表代行、5日午後、党本部での記者会見
「一昨日、昨日の役員会の席で、小沢代表からの説明があり、私としては小沢代表の説明は納得のできるものでした。小沢代表のきちっとした政治資金規正法上の処理ができているという説明に納得をしました。またその直後の記者会見で、国民の、マスコミの前で質疑も含めてしっかり説明をされていましたので、私は、その説明で多くの皆様にとっても経緯とか、小沢代表の言う正当な処理をしたということの意味はご理解いただけたのではないかと思っている。捜査の問題については、やはりなんでこんな時期にこういうことになったのかな、なるのかなというそういう思いは私にもあります」
…まあ、いちいちコメントはしませんが、よくもこんなことが言えるなあと呆れますね。こうした民主党幹部らの発言に対しては、自民党からは猛反発が出ています。ときの政府が検察を自由に動かせるのであれば、田中角栄元首相だって金丸信元副総理だって逮捕はされなかっただろうと(二人とも小沢氏の親分筋なのが何とも言えませんが)。
それとは別に、私が少し懸念しているのは、民主党幹部たちが安易に政府の陰謀説を唱えたことで、当然、この事件に注目している外国メディアに「ああ、日本の検察はときの政府の道具なのだな、日本はそういう二流の民主主義国だと政治家が一斉に発信しているし」と受け止められ、そう報じられることです。そうなると、日本のイメージは損なわれますし、それは国際社会での発言力・存在感にも影響しかねないと危惧する次第です。
古沢注記 一人だけ正論を吐いているのは前原誠司副代表。
<小沢一郎民主党代表の資金管理団体をめぐる違法献金事件について、同党内で5日、露骨な検察批判は控えるべきだとの声が広がった。西松建設からの献金との認識はなかったとする小沢氏の主張が破綻(はたん)する事態になれば、党としての責任を問われ、ダメージが計り知れないからだ。執行部内からも強硬姿勢の小沢氏と一線を画す動きも出始めた。
「検察のあり方に疑義を抱かせるような物言いは、一般論としてすべきでない」。前原誠司副代表は5日、記者団にこう指摘。幹部の1人は「『国策捜査』とはもう言わない」と検察批判を控える考えを示した。 
小沢氏は4日の記者会見で、東京地検特捜部による捜査を「政治的にも法律的にも不公正な国家権力の行使」などと激しく非難。小沢氏の公設秘書が逮捕された3日夜には既に、鳩山由紀夫幹事長や山岡賢次国対委員長らが「陰謀」などと捜査に反発していた。ただ、会見直後に、党として「検察の政治的意図を疑われて当然」などとする鳩山氏の声明を出した結果、「検察対民主党」という構図になった。
民主党は2006年に、十分なチェックもせずに虚偽のメールに基づき国会質問で自民党幹部を中傷。有権者から政権担当能力を疑われ、当時の前原代表らが引責辞任に追い込まれた。今後、秘書の容疑を裏付ける事実が判明すれば、同じ失敗を繰り返すことになる。ある中堅議員は「当時の前原代表も最初は強気だった」と悪夢の再来を心配する。
「なぜ(捜査が)この時期なのかという思いは、わたしにもある」。民主党の菅直人代表代行は5日の記者会見で、率直な思いを吐露しつつも、捜査への批判はしなかった。(朝日)>
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