岩手県議会で達増拓也知事が窮地に立ち、前代未聞の土下座を繰り返したのは、東北のブロック紙・河北新報(本社・仙台)が詳しく報道している。県議会(定数46)で圧倒的な優位を保ってきた小沢系の民主・県民会議(20)が知事与党であったが、政和・社民クラブが自民クラブと同調して、知事提案に反対、修正議決した。
小沢王国での珍事といえるが、県議会野党の自民クラブは「落日の小沢王国」と勢いづいている。
<岩手県医療局の県立病院・地域診療センターの無床化計画で、窮地に立つ達増拓也知事が6日、県議会本会議で議員に向かって土下座した。無床化を前提にした予算の減額を突きつけられ、プライドをかなぐり捨てた前代未聞の行動。「知事は本気だ」「いやパフォーマンスだ」。議場、県庁は終日、騒然となった。
「再議に移る手続きをさせていただきたいので、暫時休憩をお願いいたします」
一般会計と県立病院事業会計の2月補正予算修正案の可決後、知事は議決結果の妥当性をあらためて審議してもらう再議を申し出た。直後、突然、席の前にひざまずき、頭を床にこすりつけた。
休憩を挟んだ再開後、またも土下座した。修正案の撤回を求めて再議の説明を終えると、3列ある議席の前で1回ずつ、ひざを折って深々と頭を下げて回った。
修正案は、4月から無床化する5診療センターに配置予定のマイクロバスの購入費2300万円を削る内容。修正案がそのまま通れば、計画実施への影響は避けられない。
計画の一時凍結を求める議員らは、知事の土下座にあっけにとられた様子だったが、「われわれは謝罪を求めたわけでない。意味不明だ」「県議会史上に汚点を残すぶざまな姿だ」と猛反発。
一方、県政与党の第1会派、民主・県民会議の女性議員は「よく土下座した。涙の出る思いだ」と知事を擁護し、佐々木順一代表は「びっくりしたが、選挙の時には見たことがある。それぐらい真剣なんだ」と理解を求めた。
県幹部によると、知事は朝の庁議で「何でもやる」と言っていたという。とはいえ、土下座までは想定外で、当事者の田村均次医療局長は「医療局の問題なのに…。ショックだ」と動揺を隠せなかった。
達増知事は「身も心も投げ出してお願いするということで、礼を尽くさせていただいた」と報道陣に説明。「議員に理解されるのか」との質問に対しては「もう伏してお願いするところです」と述べた。 (河北新報)>
<岩手県医療局の県立病院・地域診療センターの無床化計画で、県議会は6日、無床化を前提にした一部予算を減額する2月補正予算の修正案を賛成多数で可決した。達増拓也知事は議決を不服として、議会に再審議を求める再議権を行使。再議は岩手県議会で初めて。再議に当たっては達増知事が計4回にわたり、議場で土下座する異例の事態となった。
修正案は一般会計、県立病院事業会計に盛り込まれたマイクロバス5台の購入費2300万円を減額する内容。5カ所の診療センターの無床化に伴い、転院を余儀なくされる患者家族の送迎用に使う方針だったが、5日の常任委員会で、無床化凍結を求める議員が修正案を提出し、可決されていた。
本会議では議長を除く46人による起立採決が行われ、26人が修正案に賛成。反対は県政与党で第1会派の民主・県民会議の20人にとどまり、自民クラブ、政和・社民クラブなど他会派や無所属議員は賛成に回った。
達増知事は修正案可決後、再議書を提出。「(無床化の)計画を実施する上で交通手段となるマイクロバスの整備は不可欠だ」と説明した。
土下座までして再議権を行使したことについて、達増知事は取材に対し「われわれも反省すべきところは反省する。再議は大変異例なことで、普通の提案とは違うという気持ちを(土下座に)込めた」と話した。
医師不足や勤務医の負担軽減を理由に昨年11月に公表された無床化計画をめぐっては、地元住民らが「拙速だ」などと反発。修正案採決前の討論では、一時凍結を求める野党側が「無床化計画も補正予算も独断専行の手続きで提案された」と主張。与党側は「(無床化計画を)先送りすれば医師の退職が加速する」と修正案に反対した。
再議権は地方自治法176条に基づく、首長の拒否権。宮城県では2000年10月、当時の浅野史郎知事が県情報公開条例改正案をめぐって行使した例がある。(河北新報)>
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2987 「落日の小沢王国」? 古沢襄

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