「西松献金」事件で政局の構図が大きく変わろうとしている。最大の焦点は当然ながら、民主党の小沢一郎代表の進退問題だ。逮捕された公設第1秘書の拘留期限が切れる24日に起訴となるのかどうか、それによって小沢氏はどう動くか。政局はその一点をにらんで、金縛り状態に陥っている。
麻生首相としてみれば、最大級の「敵失」が思わぬかたちで転がり込んだことになるが、かといって、世論調査で支持率急上昇とはなっていない。民主党離れ層をそっくり引き込むには至っていない。
小沢氏は自身の進退について、「選挙に影響が出るかどうか」を判断基準としたいとしている。秘書が起訴されるとなれば、代表辞任は必至という見方が大勢だが、本当にそうなるのかどうか。小沢氏の政治判断はそのときになってみなければ分からない。
激突「小沢vs検察」
小沢氏は今回の事件を、東京地検による悪質な選挙妨害ととらえ、政治資金収支報告の修正申告ですむ話、と強気の姿勢を崩していない。今後、「口利き疑惑」でも出てくれば別だが、現時点では「逮捕、起訴されるようなたぐいの話ではない」としている。
「小沢vs検察」の激突だ。小沢氏としてみれば、ここで代表辞任となれば、いよいよ政治生命が断たれると判断しているはずだ。修羅場をいくつも体験してきた小沢氏だけに、ぎりぎりまで抵抗するのは確実だ。これまでの政治経歴を振り返ると、常識的な見方が通用するようなヤワな政治家ではない。そこを見据えていく必要がある。
麻生首相サイドには、政局の構図が転換したことによって、解散時期の主導権を握ることが可能となったという判断が生まれている。菅義偉選対副委員長は「景気回復の兆しが見えた時点で解散に踏み切るだろう」といった見通しを示している。
自民党側の本音としては、小沢体制のまま、世論の攻撃にさらされて「ズタズタになった民主党」と戦うのが最も望ましいことになる。小沢氏がすんなりと辞任し、代表選が行われて後継者が決まり、民主党に出直しムードが出てしまうと、せっかくの「好機」をむざむざと逃しかねないというわけだ。
「岡田後継」の可能性
小沢氏辞任の場合、後継候補としては岡田克也副代表を予想する向きが強い。自民党幹部の1人は「菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長のいずれかのほうが戦いやすい。小沢氏が背後で操るという雰囲気が残るためだ」と言う。岡田氏だと、小沢氏と距離を置いた「一新ムード」が出てしまうことを自民党側は恐れている。
この事件では、自民党側にも、二階俊博経済産業相らが取りざたされているが、麻生首相周辺に危機感は薄い。「検察はこの種の事件では、双方を摘発してバランスを取ろうとすることがままある。だが、小沢氏のケースと比べたら、ケタが違う。仮に二階氏側が摘発される事態になった場合でも、経済産業相辞任であっさりと乗り越えられる」(自民党幹部)ということらしい。
来年度予算案は関連法案を含めて年度内成立がほぼ確定した。民主党としても、ここで抵抗したら世論の反発を一段と買いかねないという判断に傾いている。
予算成立後、麻生首相はただちに新年度の第1次補正予算を打ち出す構えだ。政府紙幣、無利子非課税国債といったアイディアも浮上しており、「景気対策優先」を貫くことで態勢を挽回しようというわけだ。
自民党内では、一時燃え上がった「反麻生」の動きがぱったりとやんでしまった。与野党とも「24日」をにらんで、当面は「静観政局」の様相だ。
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