3055 米女性記者拘束の真相 古沢襄

北朝鮮に拘束された米女性記者の事件について、韓国の朝鮮日報が詳しく報道している。拘束されたユナ・リー記者とローラ・リン記者は、朝鮮日報の記事からヒントを得て、中朝国境で脱北者問題の取材に当たっていたという。
ソウルで脱北者支援団体のチョン・ギウォン牧師にも相談している。チョン牧師からは「絶対に国境に近づくな」と警告を受けていた。その後、仁川国際空港から中国の吉林省延吉行きの飛行機に乗ったことが確認されている。
延吉では朝鮮族ガイドのA氏(脱北者を支援する宣教師団体のガイド)と会い取材活動を行っているが、この動きを中国の公安当局に目をつけられたのではないか。17日にガイドのA氏と白人の米国人男性(プロデューサー)、ユナ・リー記者とローラ・リン記者は「川に行く」と言って消息を絶った。
一行は中朝国境の豆満江を越えて北朝鮮領に入ったところで、北朝鮮軍の警備兵に発見され、ユナ・リー記者とローラ・リン記者はその場で逮捕。A氏と米人の男性プロデューサーは逃げたところを中国側の国境警備隊に拘束されたというのが真相の様である。
米国人三人が中国と北朝鮮の警備兵に拘束された情報は、瀋陽にある米国領事館が翌日に知るところとなった。18日に同領事館からソウルの朝鮮日報に「「ユナ・リーという記者を知っているか」と聞いてきたという。
脱北者の増加に手を焼く中国官憲と北朝鮮の特務(工作員)が網を張っていたところに、無防備な米ケーブルテレビ局「カレントTV」の一行が、豆満江を越えて北朝鮮領に入っったということではないか。それだけ国境警備が厳しくなっている。
<北朝鮮と接する中国吉林省図們市で国境を越え、17日に北朝鮮軍に拘束された米ケーブルテレビ局「カレントTV」の女性記者、ユナ・リー、ローラ・リンの両氏は、朝鮮日報のドキュメンタリー記事『天国の国境を越える』から企画アイデアを得て、中朝国境で脱北者問題の取材に当たっていた。
今月11日に米ロサンゼルスから韓国入りした取材陣は、脱北者支援団体のトゥリハナ宣教会を取材した。ソウル市銅雀区舎堂洞にある同宣教会の事務所で、二人はチョン・ギウォン牧師と会い、取材内容について相談した。
この日リン記者はブログに、「若い脱北者にインタビューをしたが、悲しい話があまりに多かった」と書いた。そして翌日には「ビビンバとキムチを食べた。キムチの香りが危険なことを追い払ってくれればよいが」などと書いた。
両記者は「朝鮮日報のドキュメンタリー『天国の国境を越える』を見て、今回の取材を企画した。取材を行う上で危険はないか」と重ねて尋ねた。
これに対し、チョン牧師は「絶対に国境に近づくな」と警告した。リー記者は今年初めにも本紙にメールを送り、企画に関する助言を求めていた。
両記者は13日、仁川国際空港から中国・吉林省延吉行きの飛行機に乗った。延吉で朝鮮族ガイドのA氏と会い、すぐさまわいせつな画像チャットを強要されているとされる脱北者の女性と会い、インタビューを行った。A氏は脱北者を支援する宣教師団体のガイドを務め、脱北者問題に関与するようになった。
延吉にはブローカーを通じて脱北したものの、室内に監禁されたままわいせつな画像チャットを強要される女性が多い。両記者は14、15の両日、こうした女性たちから生々しい証言を得た。
16日には脱北女性の子供、すなわち無国籍児童の現状を取材した。北朝鮮を脱出するため、自ら中国男性に性を売った女性たちの子供だ。中国戸籍を持たない脱北女性の子供は無国籍者となり、教育をはじめ、さまざまな社会的サービスを受けられない。両記者は漢族と生活する脱北女性と会い、彼らの生活ぶりをカメラに収めた。
17日午前3時、ガイドのA氏は「川に行ってくる」と友人に話して家を出た後、行方不明となった。
同日午前6時、ソウルにいるチョン牧師は中国の取材チームから電話を受けた。取材を終え、まもなく丹東に移動し、20日に韓国に戻るという内容だった。この電話を最後に取材チームとの連絡が途絶えた。
そして、18日午後5時、本紙記者の携帯電話が鳴った。瀋陽にある米国領事館からだった。領事館関係者は「ユナ・リーという記者を知っているか」と尋ねた。「何か起きたのか。北朝鮮軍か中国の公安当局に拘束されたのか」と聞くと、同関係者は「自国民保護のためにこれ以上情報を明かすことはできない」として、一方的に電話を切った。
2日間にわたり連絡が途絶えていた両記者が拘束されている事実が明らかになった瞬間だった。その後、韓国の情報当局は、中朝国境の豆満江(中国名・図們江)の川辺で米国人二人と朝鮮族一人が北朝鮮軍に拘束され、米国人一人は逃げたとの情報を入手した。
しかし、本紙が確認した結果、両記者は北朝鮮に拘束され、同行していた米国人プロデューサー一人とガイドのA氏は中国側の国境警備隊に拘束されていることが判明した。
延吉の消息筋は国境警備隊から「取材陣4人が豆満江を越え、北朝鮮に入ったところ直ちに北朝鮮軍に逮捕された。男性二人は脱出し、現在国境警備隊に拘束されている」との連絡を受けたと明かした。
チョン牧師は「男性は白人で目立つから、女性記者だけで行動するようにと忠告したのだが、注意事項を守らなかったようだ」と話した。
ガイドの友人は、「延吉には北朝鮮の特務(工作員)が多く活動している。彼らが良いネタがあると言って、国境まで誘い出し拉致した可能性が高い」と話した。また、別の朝鮮族の事情通は、「今回の事件はまだ一般人は知らない状態だ。昨年、脱北者支援を行っていた韓国人は全て追放されたが、今後はさらに厳しくなるだろう」と語った。(朝鮮日報)>
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コメント

  1. jeronimo より:

    この件についての詳細をありがとうございました。この事件を速報で見たとき、まずcurrentの記者じゃないかと思って調べたんですが、やっぱりcurrentのローラさんでした。ただ詳細のことは米国経由だと分からず、とても助かりました。currentではいつも体当たりの取材を行っていて、いつか危険地帯で拘束されてしまうのではないかと思っていたんですが、北朝鮮でついに起こってしまったんですね。

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