3056 ”体当たり”取材のローラ・リン記者 古沢襄

米ケーブルテレビ局「カレントTV」は2005年8月にアル・ゴア元米副大統領ら投資家グループがサンフランシスコで設立した視聴者参加型の双方向ケーブルテレビ局。今回、北朝鮮軍に拘束された韓国系米国人のローラ・リン記者は”体当たり”取材で有名だったという。
ローラ・リン記者を知る人から「いつも体当たりの取材を行っていて、いつか危険地帯で拘束されてしまうのではないかと思っていたんですが、北朝鮮でついに起こってしまったんですね」とメールを頂戴した。タフな女性記者なので拘束中も取材活動をしているのではないか・・・。
ゴア元米副大統領らがローラ・リン記者とユナ・リー記者の救出活動で動いていることが想像できる。それにしてもゴア氏が既存の新聞やテレビではなく、視聴者参加型の双方向ケーブルテレビ局に興味を持っているのは注目に値する。
たしか2004年にゴア氏は24時間ニュース局の米ニュースワールド・インターナショナル社を買収し、視聴者が“市民記者”となってニュースを発掘する試みをしていた。ケーブルテレビ網や衛星放送を通じて全米の2000万世帯が視聴可能だという新しいタイプのニュース局である。
新聞やテレビ離れしている18歳から34歳までの世代を対象にして、ニュース・ビデオなどをつのり、採用されたら一本あたり約250ドルを支払うという方式。これが若い世代の人気を集めて放映の25%にのぼっている。
残る75%はカレントTVのスタッフや委託されたプロに委託制作した番組になるが、ローラ・リン記者の様な”体当たり”取材が人気の的となる。私の様な古いジャーナリストには、とてもついていけない世界だが、全米では視聴者が“市民記者”となってニュースを発掘するうたい文句で、若い世代の関心を集めている。
世界同時不況で企業活動が鈍ってきたのを反映して、広告収入に依存するテレビや新聞が不振。その一方でネット情報世界が元気という奇妙な状態を生んでいる。あるいはゴア氏の試みが既存メディアに風穴を開けるのかもしれない。
二人の女性米人記者が北朝鮮に拘束された事件の背景には、メディア世界の変化が生んだ社会現象という側面があるかもしれない。それはまた新しい波が日本にも押し寄せる予兆なのかもしれない。
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