杜父魚ブログの読者が今年に入って、ジワジワと増えている。瞬間風速だが一日に九〇〇〇人に近い読者が訪れている。一日一万人を越える日も近い。年間で二〇〇万を軽く越えるアクセスがある。
文庫形式のブログを目指してきたが、収録した記事は3100本。私が好き放題に書いている記事は半数、あとは共感を持った記事を多くの人に読んで貰いたいと収録してきた。毎日、3100本の記事でどれがよく読まれているか、上位20本のアクセス調査を行ってきた。
その中で加瀬英明氏の「日本の時代がやってくる」が上位に入っている。
http://blog.kajika.net/?eid=935571
1979年にアメリカのエズラ・F.ヴォーゲル教授の「ジャパンアズナンバーワン」がベストセラーになった。また「21世紀は日本の世紀」と喧伝されたこともある。
敗戦の廃墟の中から一億国民が必死で働き、世界第二の経済大国を築きあげた。この奇跡を実現した日本人の原動力は何であったか。戦後民主主義の教師であったアメリカが逆に日本から学ぼうとした。
この頃、私はボストン・バック一つをぶら下げて、社用でアメリカ出張をしている。ホノルル、ロスアンゼルス、ニューヨーク、ワシントンを回り、AP通信社の副社長やUP通信社の編集局長とも会った。
ニューヨークでは日本の商社員とも酒を飲んだ。「日本は軍事では負けたが、経済でアメリカに勝った」・・・酒の勢いなのだろうが、昂揚した威勢のいい乾杯、乾杯。間もなく訪れたバブル崩壊で、「ジャパンアズナンバーワン」はうたかたのごとく消えた。
加瀬英明氏の「日本の時代がやってくる」は「ジャパンアズナンバーワン」とはひと味もふた味も違う。「ジャパンアズナンバーワン」は工業立国、貿易立国でひた走った日本が、さまざまな制約や国土が小さいにもかかわらず、諸問題や課題をうまく処理した巧みさに注目している。その日本人の能力を高く評価した。
「日本ほど世界のなかで、美意識が発達している国はない」の一文で始まる加瀬氏の論は西洋にとって衝撃的で、斬新だった浮世絵版画の美意識を取り上げ、ジャポニスムの波と表現した。それがあらゆる芸術、文化、生き様に及んでいるという。
<日本人は世界のなかで、美意識が突出している。
私たちは中国大陸や、ヨーロッパ大陸とちがって、善悪よりも、美を尺度として生きてきた。清潔さを重んじて、穢れを嫌ってきたのも、美意識が働いている。日本人にとって善悪は理屈によらずに、感性から発する。このような尺度を用いているのは、世界のなかで日本だけである。>(「日本の時代がやってくる」より)
戦後、私たちはひたすら豊かさを求めて働いてきた。端的にいえばカネとモノに価値観のウエートを置いてきた。一億中流意識を持つ様になったが、バブル崩壊後はカネとモノ世界の信仰や価値観が崩れようとしている。
あの時代を否定するものではないが、すでに新しい価値観に立った時代に入ったという意識を持つべきであろう。時代は動いている。加瀬氏は”美意識”を新しい価値観の中心に据えている。それが杜父魚ブログの読者の共感を得ている。
西松建設の違法献金問題で揺れている政界は、相変わらずカネとモノ信仰の”力”の世界だ。小沢氏が代表続投にしがみつく姿には、美意識のかけらもない。潔さを好む国民から小沢氏の辞任を求める声が、世論調査でも日に日に高まっている。
その国民的な流れに逆らって必死に小舟を漕ぐ姿は、哀れというしかない。
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3088 美意識こそが新しい価値観 古沢襄
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