深甚な衝撃を運んだ周小川(中国人民銀行総裁)の「SDRを新通貨」に逆提案。普通なら欧米は冷笑するはずだが、深刻に反論を始める不思議。
ワシントンで周小川発言への反応が起きた。
3月24日、連邦議会の証言に立ったのはガイトナー財務長官とバーナンキFRB議長。中国から飛び出した「ドルの基軸通貨体制は不公平。IMFのSDRを新しい世界通貨に」という突拍子もない提言にどう対応するのか、と質問が集中した。
「中国はドルを排除し、ほかの通貨を持ってくるという意図か?」と愚直な質問を繰り出したのはミネソタ州選出のミッチェル・バックマン(共和党)下院議員だった。
「米国はドル基軸体制を守る。中国は人民元を諦めていないということで、中国がいっているのは、外貨準備のドルに替えて、世界的に通用する新貨幣を創造してはどうか、というアイディアの開陳でしかない」とガイトナー財務長官が答えた。
人民元を切り上げると中国経済が苦しむ。中国は外貨準備高のなかの一兆ドル以上を米ドル建て金融商品で保有しており、人民元が切り上げとなれば、保有するドル資産の価値も目減りする。
だから米国が景気刺激政策を強化したら人民元の高騰に繋がり、インフレに繋がるので好ましくない、とガイトナー財務長官は続けて発言している。
――ならば新通貨は機能するのか?
「1969年に創設されたIMFのSDR(特別引き出し権)は、帳簿上の勘定でしかなく、実際の通貨でもなく、米財務省としては新しいアイディアの議論展開には何時でも窓を開いている。
しかし現状はドルが世界を圧倒しており、新通貨の実現なぞが起きうる事態と仮定しても、長い長い時間を経過したあとのことだろう。周小川総裁の提議は米国にとって望ましい意見でもないが、ドルの脆弱性と変動相場制度の不安定状況への警告として傾聴に値する」とガイトナー財務長官が余裕を示しながら答える。
英米の新聞論調は下記のふたつに集約されてきた。1971年にブレトンウッズ体制が崩壊を始めた。
為替管理が変動相場制に移行したことを見て、その後の歴代政権は、ドルも「リンゴや銅と同じ、金融商品」と間違えた。通貨は政府が決定する法幣(法定通貨)であり、商品ではない。中国のSDR通貨論議は、その矛盾を突いてきた。
米中間の合意はIMF強化。しかしSDRは通貨ではなく、もし新貨幣として機能すると仮定して、その際には、いったい誰がSDRの値決めを行うのか。これは机上の空論に等しく、警鐘として認識するも、本気の議論にはなり得まい。
4月2日、ロンドンサミットはいよいよ目の前である。
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