3113 ノドン・ミサイルに核弾頭を搭載 古沢襄

北朝鮮がノドン・ミサイルの開発を始めたのは、1980年代の後半とみられている。1993年8月11日に北朝鮮の五八三部隊の小隊長だった林永宣(イムヨンソン)中尉が韓国に亡命してきて、ノドン一号は完成していると詳しく証言している。
日米韓三国がノドン・ミサイルの開発を知らなかったわけではない。林中尉が亡命する二ヶ月前の5月29日、北朝鮮の咸鏡南道蘆洞(ノドン)の試射場から日本海の能登半島沖に向けてノドン一号が試射された。日本には通告がなかったが、米韓両国には通知が為されている。
ミサイルの試射は時として失敗することがあり得る。それが原因となって偶発戦争に発展しかねないので、米韓両国に通知してきたのである。事実、この時は三発の試射を行ったが、二発は100キロ飛んだだけであった。一発が550キロ飛び、能登半島沖350キロの海面に落下している。
林中尉の証言によると
①ノドン一号は日本を攻撃目標にして1000キロの飛距離を持っている。
②発射基地は咸鏡北道花台(ファデー)と江原道文川(ムンチョン)の二カ所が完成。
③江原道元山(ウオンサン)と慈江道中江(ウウンガン)が建設中・・・という驚くべきものであった。米韓両国から日本政府に証言内容が伝えられている。
それまでの日本政府の見解は、外貨事情に苦しむ北朝鮮がミサイルを開発してシリアなどに売ることが目的とみている。ノドン開発以前は、射程800キロどまりのスカッド・ミサイルが主力だったから、日本攻撃を考えているなどは思いも及ばなかった。
射程1000キロに達したノドン一号もイランに売却するのが目的とみられた。イランからイスラエルまでの距離はちょうど1000キロになる。ここでも日本攻撃は想定していない。
しかし射程が1300キロになった時点で日本全土が射程距離に入ったので、北朝鮮の意図が日本攻撃にあるのではないか、という疑念が治安担当筋で論じられる様になった。
咸鏡北道花台など四発射基地には二百基のノドン・ミサイルが実戦配備されているが、最近情報では三百二十基に増えているという。これは明らかに日本に照準を定めている。韓国を狙うのなら、射程800キロどまりのスカッド・ミサイルで十分だからである。
またノドン・ミサイルに搭載する核弾頭の小型化にも成功したという。韓国の情報筋は北朝鮮が現在保有している核弾頭は六個から八個とみている。
<核小型化に成功、「ノドン」搭載…国際調査機関
【ジュネーブ澤田克己】安全保障問題を専門とする国際シンクタンク「国際危機グループ」(本部・ブリュッセル)は31日、北朝鮮が核爆弾の小型化に成功し、日本を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ)用の核弾頭を配備した、との報告書を公表した。関係国政府の内部メモに基づく情報という。事実ならば日本にとって重大な脅威となる。
報告書はまた、ノドンの実戦配備数を最大320基と見積もった。韓国政府は北朝鮮が保有する核兵器数を6~8個と推定しているが、うち何個が弾頭化されたかは不明だ。
ノドンは慈江道に司令部を置く独自部隊によって管理され、発射基地は同司令部と両江道、平安北道の計3カ所。核弾頭は同司令部と両江道の基地近くに貯蔵されているようだという。
報告書は北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げ用と主張している「銀河2号」ロケットについて、長距離弾道ミサイル「テポドン2号」と同一と指摘しながらも、発射準備に数週間かかるなど実用性に難点があるため、ノドンの方が「より差し迫った脅威」と警告した。
国際危機グループは、各国政府などの拠出に基づき世界中の紛争について調査・報告している。理事長は日豪主導で昨年発足した「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」共同議長のエバンス元豪外相。(毎日)>
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