3115 ノドン・ミサイルで日本を撃破 古沢襄

「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」が、金賢姫が李東馥北朝鮮民主化フォーラム常任代表に出した約2万6千字の書簡を入手して全文を翻訳している。この内容には興味が尽きないが、書簡の中で高英煥(コ・ヨン・ファン)の名が出ている。
高英煥は1991年5月に韓国に亡命した北朝鮮外交官。日本の公安筋は高外交官の長兄が北朝鮮の国防大学校ロケット発動機学部を卒業し、ソ連に留学して地対地ミサイル、艦対地ミサイルのエンジン研究をした技術者であることに関心を示している。
高外交官のミサイル知識は普通の外交官よりも詳しく、専門的とみられている。その証言で「スカッドDは射程が800キロ、韓国を攻撃するには400キロあれば足りる。スカッドDを延長改造したのは日本に届くことを計算している」「北朝鮮で開発されるあらゆる兵器は対日戦を想定して造られている」と言っている。
スカッドDはノドン・ミサイルの原型だが、北朝鮮が日本攻撃に躍起になるのは何故だろうか。日朝国交正常化の暁には日本から膨大な資金が入ってくる相手国を核弾頭ミサイルで壊滅的打撃を与えて何の得になろうか。
親北日本人ならずとも、そう考えるのが常識であろう。
だが北朝鮮は違った考え方をしている。ノドン・ミサイルの試射を行った1993年の翌年は米朝が第二次朝鮮戦争の直前まで行った時期と重なる。米国は北朝鮮との軍事衝突が避けられないとみて秘密軍事侵攻計画のオペレーション5027を策定していた。
この米側の動きは北朝鮮の金日成主席も察知していた。1993年3月8日の朝鮮人民軍の最高首脳会議で金日成は「米国がそろそろ攻めてくる。どう対抗するか」と発言した。その時に金正日元帥は朝鮮人民軍の最高司令官としてミサイル攻撃論を展開している。
第7艦隊の約100隻が日本海の元山沖に集結、韓国はソウルで防空演習が行われていた。日本だけは蚊帳の外。平和の夢をひたすらむさぼっていた。能登半島沖にノドン・ミサイルが着弾しても、せいぜい地震があったのかという程度の反応しかしていない。カーター訪朝がなかったら第二次朝鮮戦争の可能性があった。
「何故、日本が攻撃の対象とされるのか?」について亡命した北朝鮮の林永宣中尉は、第二次朝鮮戦争に際して日本が果たす役割の大きさに触れている。これが北朝鮮の日本に対するミサイル攻撃論の本心であろう。
日本にある米軍基地から爆撃機が飛びたつし、横須賀などを母港とする第7艦隊も出動するであろう。朝鮮戦線で破壊された戦車などの軍事車両は日本で修理され、再び戦線に復帰する。日本は膨大な兵站基地、軍事工場化する。
さきの朝鮮戦争で日本は特需景気に沸いたが、北朝鮮側からみれば、日本の兵站基地を叩くだけのミサイルを持っていなかったという反省がある。林永宣中尉は韓国側の訊問に対して「日本の莫大な民需型経済力は、第二次朝鮮戦争に際して強大な軍需力に転化するので、徹底的に撃破する」と自供している。
<金賢姫の書簡(一部)
放送各社は、私の父、金ウォンソクが1987年当時アンゴラ駐在北朝鮮貿易代表部の首席代表として勤務していたという安全企画部の発表が、完全な偽りだと明らかになったと放送しました。
しかし、コンゴ駐在北朝鮮大使館の一等書記官として勤務し1995年3月亡命した高英煥氏は「当時金ウォンソク氏は対外経済事業部アンゴラ技術協力団代表であった」「当時は外交官ではなかったが政府官僚であった」と「月刊朝鮮」2001年11月号で話しました。
果たして放送各社はこの記事を見なかったのでしょうか。 そして、私の父がキューバ駐在外交官として在職したという事実を証拠づける資料があるのにもかかわらず国家情報院は彼らにその資料を提供しなかったです。 それは外交的な問題が発生することを憂慮してのことでしょうか。>
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