3123 中国はドルの下落を望まないと言うが 宮崎正弘

G20(ロンドンサミット)で増大した中国の存在感だが。新通貨発行(SDR)は「弱気の現れでもあった」とクルーグマン教授。
G20は終わった。IMF増資が決まり、中国は400億ドルを拠金する。日本は1000億ドル。EUも1000億ドル、サウジアラビアもそれなり、に。
中国の周小川・人民銀行総裁が提唱したSDR発行という改革案は一顧だにされず、「議論は開かれている」(ガイトナー米財務長官)でかたづけられた。
ノーベル経済学賞に輝くポール・クルーグマンが書いた(NYタイムズ、4月4日付け)。
「中国は本能的にドルの下落を望まない。また米国債を手放せない。安定した金融商品は、たとえ低利でも安全だから保有し続けるのであり、保有財産の価値が目減りする愚は避けようとする。中国はロンドンサミットで強い存在感を示し、発言力を高めたのは事実だったが、心中では外貨準備の実に七割を米ドル建ての資産で運営している以上、現実は現実なのである」。
そしてこうも言った。
「中国が新通貨発行によりIMFを改革できるという意欲的な発言も、その裏面には弱気が漂っている。中国の矛盾も、英国、日本、そして米国も同じである」。
しかし筆者に言わしめればクルーグマン教授の視野は短期的、現状判断の範疇から抜け出していない。
中国は革命から60年かけて核戦略を整備し、米国ロシアに伍し、改革開放と同時に軍の近代化に着手し、ミサイルや宇宙兵器を整備し、さらに過去20年連続の国防費拡大によって嘗ての大英帝国に近づけるほどの海軍力を増大させた。
今後十数年かけて、空母を建造し、いずれ西太平洋を米軍とシェアするほとの軍事覇権を確立するであろう。
このような長期戦略のもとで、着々と年月かけてなされている戦略の実現プロセスを、目撃してきた者としては、中国が長期戦略を用いて、金本位制による人民元(華元)が、いずれ米ドルと派を競う状況を現出させようとする野心もまた本物であり、軍事戦略と平行して、これからは中国の世界経済戦略の分析に、より注意をむけるべきではないか。
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