北朝鮮のミサイル発射で日本が毅然たる態度を鮮明にしたことは、今後も北朝鮮がミサイル発射を繰り返すと思われることから正しい選択であった。日本が過剰な反応をしたという批判は当たらない。米筋によれば北朝鮮はテポドン・ミサイルをなお20基も保有しているとの見方がある。
ブッシュ米政権の末期から米国の北朝鮮政策が、日本の意思に反して融和政策に流れていたが、オバマ米政権になって加速される懸念があった。しかし国連でのスーザン・ライス国連大使の態度は対北強硬姿勢を鮮明にした。安保理での対話重視から転換したとみる向きもある。
日本だけが強硬姿勢をとって国際社会で孤立すれば、米国にとっても良い筈がない。米経済の立ち直りにとって、日本に米国債を買い支えて貰う必要がある。日本の協力が米経済の立ち直りに必要にして不可欠なものになっている。ブッシュ政権以上にオバマ政権が日本に気を使っているのは不思議でも何でもない。孤立させないためには、とりあえず日本と足並みを揃える必要がある。
しかし国連の舞台で日米韓が北朝鮮非難の新たな決議案で突っ走るとは考え難い。交渉のテクニックとして最も厳しい線でまず足並みを揃えたのであろう。中国、ロシアが新決議に慎重だから、北京における6か国協議の再開を目指す以上、妥協工作が必要になる。日米韓にとって想定された交渉テクニックのライン上にある。
あまり目立たないが中曽根外相の各国に対するソフトな働きかけは評価されていい。電話交渉もひんぱんにやっている。失言続きで世論の支持が急降下していた麻生首相も毅然たる態度をみせたことで支持率が回復しつつある。
皮肉な言い方をすれば拉致問題が小泉内閣の追い風になった様に、北朝鮮のミサイル発射が麻生内閣の追い風になる可能性がある。追い風にするためには、麻生首相が毅然たる態度を保持する姿勢が必要になる。右顧左眄は許されない。
<【ニューヨーク=白川義和】米国のスーザン・ライス国連大使が北朝鮮の弾道ミサイル発射に関する5日の国連安全保障理事会非公式協議で、「安保理が強い対応を示すことが6か国協議の活性化につながる」と述べたことがわかった。
北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議再開に向け、脅しや挑発には屈しないというオバマ政権の方針を明示した形で、新決議採択を目指す日本には追い風となった。ただ、中国、ロシアは新決議に慎重で、溝は深い。
安保理筋によると、この日の協議で中国の張業遂国連大使は、追加制裁決議といった「過剰反応」は6か国協議を崩壊させかねないとし、安保理が穏便な対応を取ることを求めた。北朝鮮が、安保理による発射への非難が行われた場合、「6か国協議はなくなる」と脅していることを念頭に置いた発言とみられる。
これに対し、ライス大使は「安保理決議の明確な違反を放置すれば、逆に6か国協議を弱体化させることになる」と指摘。北朝鮮に協議復帰を促すためにも、既存の決議の履行を徹底することで制裁を強化すべきだとの考えを示した。
オバマ政権は3月末まで、6か国協議の議長国であり、北朝鮮に影響力を持つ中国への配慮が目立っていた。対話重視の姿勢だけでは、協議の早期再開につながらないと判断し、挑発行為への強硬姿勢を鮮明にする方針に傾いたとみられる。
日本は、発射は地域や世界全体の脅威となり、弾道ミサイル技術を使っている以上、決議1718違反は明白であるとの見解で、安保理が既存決議の履行徹底を求める新決議を採択して対応すべきだとの立場。協議では、英仏の国連大使も日米に同調した。(読売)>
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3140 ミサイル、麻生内閣に追い風になるか 古沢襄

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