3145 G20は終わって、危機は去ろうとしているのか 宮崎正弘

世銀は日本経済成長が最悪、マイナス5・3%というとんでもない予測。
▲こんな施策で百年に一度の危機がおさまるのだろうか?
はたして危機は去ろうとしているのか?G20(ロンドン・サミット)直前の3月18日、FRBは国債3000億ドルを購入に踏み切ると発表した。
米国の中央銀行に相当するFRBが自ら国債購入という異常手段は、「百年に一度の危機」に対応することとはいえ、むしろアメリカ国民を不安にさせるのではないのか。
同時にFRBは住宅ローンの担保証券購入の規模を二倍以上とする(1兆2500億ドル)、政府機関債も2000億ドル購入する。合計1兆7500億ドル。これは追加の措置分だけで、昨年九月のリーマンブラザーズ崩壊以来の財政投入がいかに天文学的か。
市場は金融株の株価上昇で答えたとはいえ、上昇率は弱々しいものだった。
ノーベル経済学賞のジョセフ・ステグリッツが批判を繰り出した。
「オバマの救済策はウィンウィン(win win)路線というより、ウィンウィンルーズ(win win lose)路線であり、銀行と投資家が勝ち組に納税者は負け組に転落する仕組みである。
理論的に言えば銀行の不良債権と住宅ローンの不良部分を明らかにしてそぎ落とし、本来の資産と不良債権を切り離すために使われるべきだが、実際には何もかもを混合した救済プランとなった。
一等大切な施策とは、自信を回復させること、自信喪失こそが、次の危機を産むのであり、早急なる金融システムの安定回復と自信の回復である」(ヘラルド・トリビューン、4月2日)。
▲OECD予測では米国GDP成長はマイナス2・4%でしかない
つづいての措置がとられた。米国は時価会計を一部緩和して金融機関に裁量を持たせ、証券化商品などの適用除外を拡大する。
従来も、保有する金融資産のうちの、満期前に売却予定がある「売買目的」の資産は時価会計だが、市場取引が活発でない商品は、金融機関の独自の裁量にゆだねる。また「満期保有」は原則として時価会計は不要とされた。
とはいえ市場価格が暴落したりする場合、損出を計上し減損処理してきた。これによって金融機関は独自の裁量に従い、極論すれば粉飾をなし、企業情報が不透明性をます。だから投資家は不安がる。
たとえば、シティグループが保有する金融商品のうち、この裁量対象となるのが、実に6000億ドル分もある。
2009年の世界経済成長はだれもがマイナスを予測している。世銀は09年世界全体の経済成長をマイナス1・7%とした(3月31日発表)。
日本はマイナス5・3%と先進国中で最悪、なぜか米国はマイナス2・4%、EUは2・7%のマイナスでしかない。日本より状態が悪い欧米がなぜ?
 
ついでに言えばプラスは中国、インド、ブラジルで、それぞれが6・5%,4%、0・5%と予測されている。OECDは日本に対してももっと厳しい見方をしており、マイナス6・6%になるとするご託宣である。ちなみにOECD予測では米国がマイナス4%、EUが4・1%、反対に中国はプラス6・3%,インドが4・3%の成長!
世銀は昨年秋の予測で世界経済全体はプラス0・9%としていたが、これを2009年度はマイナス1・7%と大幅に下方修正した。
じつに2・6%ものダウンをしたのも、「輸出の急減にくわえて生産、投資、内需不振。金融危機の悪影響が新興国にも悪影響をもち、世界貿易が悪化している事が原因」と予測理由を挙げている。
▲ドル基軸体制は暫時維持されるのだが。。。。。。
ドル没落への不安が拡がる。「これほどの環境の激変に対して、いまだに米ドルが圧倒的な基軸通貨の役割を担っている事態は奇妙であり、これからは米ドルを代替する新通貨なり、対応措置が必要とする考え方はあたらしいものでもない。
さりとて実際には国際的に認知される『通貨バスケット』の創設か、あるいは合成的な新通貨発行(中国のいうSDR貨幣)という議論がひろがるが、それなら実際に米ドルの迅速なる退場を意味するかと言えば、状況はまだまだドル基軸支配が続くだろう」(歴史家ポール・ケネディ=エール大学教授。『ヘラルド・トリビューン』、4月2日付け)。
「だが西側世界はたとえ中国が予見しうる限りの未来に民主化することはありえないにせよ、世界システムを再建するためには協力が必要であることは明らかである」(フランス国際関係研究所理事長のシエリ・デ・モントブリアル)。
こうした発想からG20が開催され、日本は最大の拠金をするのに疎外され、いきなり中国が主役に飛び出した。
ロンドンサミットで一番かわったことは中国の躍進、その存在感である。
さてG20を大急ぎで総括する。
議長のブラウン英首相は「ニュー・ブレトンウッズ」と開会を宣言した。IMFを通じて、危機を未然に防ぐ監視体制強化でまず一致した。
財政出動が総額500兆円。世界経済をこれでプラス2%へ持って行くための協調が謳われた。とくに雇用のためとはいえ保護貿易主義台頭という危機を回避することも共同宣言に盛り込まれたが詳細の規定はなかった。
金融安定化フォーラムを強化し、理事会を創設し、ヘッジファンドを規制・監督の対象とすること、タックスヘブンを特定し、制裁措置導入を準備し、格付け機関を登録制とし、そしてIMF増資、資金基盤を75兆円に拡大することが合意された。
なにかが足りない。いったいそれは何だろう?(つづく)
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