皮肉な言い方になるが、戦後半世紀以上も太平の夢にまどろんでいた日本社会に、痛烈な覚醒の鉄槌を下したのが、無法者・北朝鮮だということになる。拉致問題が表面化した時に、北朝鮮を夢の楽園と賛美していた日本の一部識者が、国民から厳しい批判の目に曝された。
北朝鮮が日本の頭越しにミサイルを発射したことで、日本は二度目の黒船に見舞われたことになる。それでもまどろみの寝床にしがみついている様なら救い難いが、さりとて北朝鮮に対抗するための核武装論に飛んでしまうのは極端過ぎる。寝ぼけてはならない。
国民の生活が第一ということも国家の安全が保たれることが前提になる。理屈の上では当たり前の常識だが、寝ぼけ眼(まなこ)でいては、それが理解できないであろう。
制度疲労を起こしている自民党に代わる民主党に期待が根強くあるのだが、この国の安全保障について民主党の基本政策が定まっていないことが、政権交代の最大のネックとなっている。
旧社会党が国民の支持を失ったにもかかわらず、その尾を引きずる社民党と連立を組もうとする小沢民主党は、単なる政権交代亡者と言われても仕方ない。
その様な日本政治の貧困さを露呈したのが、北朝鮮のミサイル・ショックだといえる。では、どうするか?
民主党には前原前代表の様に国家の安全保障を第一義とする政治家群がいる。前原氏の理念は一貫していて少しもブレていない。自民党にも安倍元首相の様に前原氏と共通の理念を共有する政治家がいる。失言癖がある麻生首相も、こと安全保障については安倍、前原両氏に近いものがある。
ここは理念を共有する若い政治家による新しい政治勢力の結集に期待することであろう。そのためには、カネ、モノ政治から脱することが出来ない旧田中派の政治家には退場を願って、同時に短絡した核武装論に走る観念的な政治家を排除することが必要になる。
それには国民が、まず太平の夢から覚醒することが大前提になる。北朝鮮ミサイルのショックが納まれば、ふたたび太平の夢を見続ける様では、拉致問題も永久に解決しないし、北朝鮮から舐められる三等国家に転落するしかない。
政権交代よりも新しいリーダーの登場こそが、今の日本に一番求められているのではないか。それを生むのは国民自身の覚醒にあることは言うまでもない。その時期は、待ったなしに近づいている。
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