3177 惨たり!米国新聞業界 前田正晶

アメリカの新聞の衰退についてはこれまでに何度となく取り上げてきた。例えばアメリカの紙パルプ業界の専門機関RISIの資料によれば新聞用紙の消費量は04年から08年の間に25%も減少していた。
この大きな原因の一つは、言うまでもなく広告をインターネットに奪われていることである。この点に関してシアトルに居る友人からその具体的な背景を知らせるメールが来た。
この友人は会社をリタイヤーした後、大学院大学の教授に転じて先頃引退したばかりである。
彼は言う「問題は基本的に広告、それも部門別案内広告(=Classified ad)の減少にある。すなわち、自動車販売、ペット、電気製品等々全ての広告が「クレイグノリスト」(=Craig’s List*)に移って いき、特に若者がネット上での売買の手段として益々活発に利用していることに主たる原因がある。
シアトルの地元紙「シアトル・タイムス」(ST)と「シアトル・ポスト・インテリジェンサー(SPI)は共同操業協定を締結して今後運営していくこととした」
つまり、2紙は共同で新聞を編集していくことにしたのである。因みにSTは独立系のブレセン・ファミリーが所有し、SPIはハーストの傘下にある。SPIは3月末で新聞の発行を停止し、75名のスタッフを残して電子版だけを発行している。
タイムスは新聞の発行を継続しているが、紙面の大きさを縮小してしまった。シアトルがこのような状態になった結果、全米で2紙が発行されている都市の数は減少の一途を辿っている。
デトロイトではデトロイト・フリー・プレスともう一紙残っているが、新聞を毎日発行しているわけではなく、最早「日刊新聞」の名に値しなくなってしまった。
これで、真の意味でアメリカにおける全国的日刊新聞と言えるものは「USA Today」だけだが、これとても土曜と日曜版を一緒にして「週末版」と銘打っている。
「ウオール・ストリート・ジャーナル」は日刊新聞だが、土・日曜には発行していないのである。
なお、Craig’s ListはHitachiのWebサイトにWWW用語として「不動産情報、求人情報、コンサートや野球などのチケット情報など、特定の都市・地域に限定された様々な情報を住民などが投稿して掲載する地域情報コミュニティサイト。
Craigslistとは Craig’s  list つまり「クレイグのリスト」という意味だが、1995年にCraig Newmark氏がサンフランシスコのローカル情報を交換するために開設したサイ トが原型となっている。
現在ではアメリカ国内外300都市向けのサイトを擁し、合計で毎月1,000万人のユニークユーザを集め、40億ページビューものアクセス数があるといわれる。2004年8月にはオンラインオークション最大手のeBay社がCraigslistに25%を出資し、注目を集めた。
Craigslistはバナーなどが一切なく、テキストベースの非常にシンプルな概観のWebサイトである。一部の大都市での求人情報および不動産情報の投稿に対して広告料を徴収するだけで、その他の広告情報は無料で投稿できる。
誰でも自由に売りたいものの情報を広告として掲載でき、買う側も手数料などはかからない。広告の内容は多岐に亘り、職業やアパート、家具、洋服、ペットなどあらゆるものをCraigslistで見つけ、購入することができる。
ほとんどの広告料が無料であるにもかかわらずCraigslistの収益は伸び続けており、2005年度の売り上げは2,000万ドルとも推定されている。無料で広告が掲載できるため、新聞広告や他のWeb広告などの広告産業の売り上げにも多大な打撃を与え、その損失額は年間数百万ドルにのぼるとする試算もある。
私はアメリカのこのような流れが我が国を襲ってくるのはそれほど遠いことではないと思う。
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