3190 終わるスイス秘密口座の神話 宮崎正弘

スイスの秘密口座から二兆円の隠し財産が脱出していた。天下の名門バンカー「UBS」の黄昏(たそがれ)。
スイス金融大手「ユニオン・バンク・オブ・スイスランド」(UBS)は株主総会の席上、09年第一四半期に230億スイスフラン(約2兆円)の資金が流出したと報告した。4月14日、チューリッヒ。
これは秘密口座の情報公開を嫌気した世界の金持ちが資金の撤収を要請し、同行が支払いに応じたため。
同行はスイス政府も株主であり、米政府の強い要請を受け顧客の口座情報を開示したことによる。
秘密預金の殆どが脱税目的資産だ。資金洗浄したカネを秘密勘定が合法化されたスイスのプライベート・バンクに預けていた。
米国がスイスに圧力をかけたのはテロリストの資金源を暴くことだった。ところが飛び出してきたのは5万2000の秘密口座の大半がアメリカ人の脱税によるものだった。
ともかく結果的に、「エクサレント・バンカー」として、嘗て黄金の銀行とも言われたUBSは直近の決算が赤字に転落し、20億スイスフラン(1800億円)。
これは顧客らの預金脱走に加え、サブプライムローンの損失、保有株の下落などで大きな損失がでたことが響いた。
UBSは経営再建のためオズワルド・グルーベル社長をライバルの「クレディ・スイス」から引き抜き、2010年までに7500人の人員を解雇する。09年3月末の従業員数は7万6200人。世界五十ヶ国で支店などビジネスを展開中。
秘密口座情報の公開により米国、とくにフロリダでは脱税裁判が開始されている。ちなみに4月14日にはロベルト・モラン脱税容疑者はフォート・ラウデダール地方裁判所で有罪判決がでた(ヘラルドトリユーン、4月16日)。
スイス秘密口座の神話も終わる。
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