3194 中南米はドル低下、人民元決裁圏? 宮崎正弘

中南米の地政学大変動・かくも迅速なアメリカの影響力低下。ベネズエラ、アルゼンチンに続き、ブラジルも人民元決裁圏入りか?
アメリカの地政学的感覚ではラテン・アメリカは“中庭”のつもりだった。
メキシコは“付録”、パナマは“属領”同然、他の国々もいつでも従えさせることが出来ると自信に溢れていた。
しかし半世紀を経ても、目の前の反米政治家=カストロのキューバも落とせず、対岸のベネズエラの激しい反米運動という政治反撃にたじろぎ、ニカラグアでは、鷹派のレーガン政権ですらサンディニスタに手を焼かされた。
金融危機以後のアメリカは急速に中南米から退場している。
主因は米銀が体力をすり減らし、貸したカネが戻らない限り、新しい融資も投資も凍結されるからだ。
2009年度に230億ドルの新規融資を予定しているものの融資できるカネの融通がつかず、貿易でも投資でも、ドル決済に支障が出始めており、労働移動もままならず、そしてこの間隙を縫っての大々的な中国の進出を拱手傍観している。
まして米国財務省は4月15日の議会報告(年次為替リポート)のなかで、中国を「為替不正操作国」のリストからはずす始末だ。
ベネズエラへの120億ドル投資はすでに紹介したが、三箇所の鉱区、精油所を中国は合弁で建設する。
中国向け石油は38万バーレルから、日量100万バーレルに激増する。二月には習近平・国家副主席がカラカスを訪問し、先週はチャベス大統領が北京を訪問した。正式に契約した。
ペルーでも、ボリビアでも中国は資源の鉱区を狙って同様な経済支援を続ける。チリでもパラグアイ、ウルグアイでも。
▲ドル基軸時代の終わりを鮮明に暗示するアルゼンチンとの「通貨スワップ」協定。
就中、注目はアルゼンチンである。中国の新しい世界経済戦略の武器は「通貨スワップ」だ。
北京との通貨スワップ協定に署名したアルゼンチンは、100億ドルを上限に人民元決済で中国と貿易を行うことに同意した。人民元がドル基軸の一部を代替するのである。
ブラジルも中国への視線を変えた。これまでの醒めた目から熱狂の眼差しに。
提示された金額は100億ドル。資源豊富なブラジル国有企業に中国が融資する。有力な鉄鉱石鉱区ばかりか、オフショア開発に充てられる。
この金額は2008年度に「アメリカ大陸銀行」が、中南米すべての国々の案件に融資した総額(112億ドル)に匹敵する。
「中国が小切手帳を片手にラテン・アメリカを、米国に代替する中庭のごとく闊歩している。金融危機直後からの中南米政治地図が急激にシフトしている」(IHI,4月17日付け)。
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