3197 現代版義和団の乱が? 宮崎正弘

日本が寄贈した千本の桜並木が武漢大学キャンパスに花開き。着物をきた中国人母娘が記念写真を撮った。事件がおきた。
その事件は「武漢大学キモノ事件」とよばれる。3月21日の出来事だった。
1938年、日本は湖北省・武漢を制圧し、その後、日本人が多く蝟集したため桜の木を植えた。
1972年、日中国交回復のおり、田中角栄は千本の桜の苗木を寄贈した。中国のあちこちに桜が植えられた。
武漢大学の桜並木はいまでは千本に達し、鮮やかな花を咲かせ、人を集める。
中国人の母と娘がキモノを来て、桜並木をバックに記念撮影をしていた。学生に取り囲まれ、「恥を知れ」「日本の服装で、しかも武漢大学で何事ぞ」と詰めより、囂々たる非難がおこった。さんざん侮辱され、母と娘は逃げ去った。
これを目撃していた学生がブログに書き込んだ。「なんであんなことと愛国と関係があるのか」と。「キモノと桜とナショナリズム」論争は全土に拡がった。なぜなら『中国不高興』(中国は不愉快です)がベストセラー入りし、いま愛国論争、ナショナリズム論議に火がついているからだ。
「侃々諤々の議論のなか、結局、『愛国学生』らの行為を評価したのが51%、逆に「そんなレベルで騒ぐな」「低級のナショナリズム」と批判したのが47%」(アジアタイムズ、4月15日付け)。
日本の芸者に扮しただけで中国人女優がバッシングを受けたり、日本の海軍旗に似たデザインの服装をしたファッションモデルが『媚日派』と非難されたり、ともかく過激攘夷感情に触れると、いまでも現代版義和団の乱がおきる危険性を示す事件である。
武漢大学は、就職率がとくに悪く、大学を出てもまともに職がない典型の大学と言われ、昨年もニセの卒業証書をめぐって一万人の学生が騒いだ。
そういう特殊事情も考慮すべきだろう。だから『あそこの学生はとくに暇だから、そんなことでも騒ぐのさ』と冷静な見方もあるが・・・。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました