3206 北朝鮮の瀬戸際外交に対する米・中・韓の論調 古沢襄

北朝鮮の瀬戸際外交に対して米国、中国、韓国の代表的なメデイアは揃って懸念を示している。産経新聞はその各国のメデイアの論調を紹介した。
注目すべきは、これまで米民主党に好意的だったワシントンポストがオバマ政権の対北政策に一貫性がないと批判的な論調を掲げたことだ。「これまでの米政府の対北経済制裁は一貫性がなかったとの批判がある」とし、対北強硬論だった共和党のボルトン元国連大使の「制裁措置は持続させることによって効果を発揮する」という論をあらためて紹介している。
そして産経は「中国も落胆の色を隠せず、韓国は、朝鮮半島情勢の緊迫化に懸念を抱く。世界はまたもや、北の瀬戸際外交に振り回されている」としている。北朝鮮という”暴れ馬”を国際協調という川に連れ出し、水を飲ませるのは容易ではない。
<北朝鮮が今月5日、長距離弾道ミサイルを発射したのに続き、国連安全保障理事会が発射を非難する議長声明を採択。それに反発した北朝鮮が14日、核問題をめぐる6カ国協議からの離脱と核開発の再開を宣言するなど再び強硬姿勢を強めている。しかし、米国の対応は混乱し、中国も落胆の色を隠せず、韓国は、朝鮮半島情勢の緊迫化に懸念を抱く。世界はまたもや、北の瀬戸際外交に振り回されている。
▼ワシントンポスト(米国) 真価問われるオバマ政権
北朝鮮がミサイル発射に続き、核問題をめぐる6カ国協議からの離脱と核開発再開を表明したことは、発足間もないオバマ米政権の外交手腕が試される「テストケース」となった。
16日付の米紙ワシントン・ポストは3面で、「米国は北朝鮮に対しバランスのとれた対応をしようとしている」と報じた。国連安保理制裁委員会に資産凍結対象とすべき北朝鮮企業のリストを提出する一方で、6カ国協議への復帰を呼びかけるなど、「対話」と「圧力」を並行して行おうとしているというわけだ。
ただ、バランスをとるのは容易なことではない。同紙は「これまでの米政府の経済制裁は一貫性がなかったとの批判がある」と紹介。具体例としてマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されていた北朝鮮の違法資金の解除に応じたことを挙げた。ボルトン元国連大使は同紙に「制裁措置は持続させることによって効果を発揮する」と語った。
オバマ政権はブッシュ前政権の対北朝鮮政策の一貫性のなさをみてきたはずだが、ミサイル発射をめぐっては、大統領が「違反は処罰されなければならない」と述べる一方で、その直前にボズワース特別代表(北朝鮮政策担当)が「圧力をかけるのが最も生産的とはいえない」と述べるなど、対応が混乱した。
ポスト紙は7日付の社説で「支離滅裂でブッシュ前政権時代と変わらない」と酷評した。
ミサイル発射は北朝鮮ペースで進んだ格好だが、同紙は寧辺の核施設再稼働には半年から1年はかかるとし、「政権には対応策を構築する時間がある」と指摘した。この間にいかに対北朝鮮政策を進めていくか、オバマ政権の外交政策の真価が問われそうだ。(ワシントン 有元隆志)
▼環球時報(中国) 5年間の努力が頓挫した
北朝鮮が6カ国協議からの離脱を発表した翌日の15日、中国の国際情報紙「環球時報」は、「朝鮮(北)は安保理の声明に強い姿勢で対抗」と題し、1面トップでこのニュースを伝えた。同紙は「朝鮮半島の非核化に向けた各国の5年間にわたる努力が頓挫することを意味し、今回の朝鮮の反応の激しさは国際社会の想像を超えていたようだ」と論評した。
同紙はまず、北朝鮮外務省が発表した声明文の内容を紹介し、米国、韓国、日本など関係各国政府とメディアの反応を詳しく伝えたあとで、中国側学者の見方として、政府系シンクタンク、現代国際関係研究院の孫建紅研究員の意見を掲載した。
孫氏は「声明はあくまでも朝鮮政府の態度表明であり、具体的にどの程度実施されるかはこれから観察しなければならない。すぐに話し合いの動きは出てくると考える」と述べ、関係各国に対し「冷静な対応」を呼びかけつづけた中国政府の立場と一致した。「6カ国協議の枠組みを維持したい」とする中国側の強い意志がみてとれる。
中国共産党機関紙「人民日報」傘下の同紙は、友好関係にある北朝鮮への直接的な批判を避け、各方面の反応を淡々と伝え、客観報道の形を取った。しかし、同紙がインターネットで行った世論調査の結果では、過半数が北朝鮮の声明に反発。同紙は「中国のメンツは丸つぶれだ」「北朝鮮はますます国際社会から孤立するだろう」などの書き込みを紹介し、「これらネットユーザーの意見は朝鮮の核問題に対する中国民衆の複雑な心境を表しているようだ」と結んでいる。
今回の北朝鮮の激しい反応に対する中国当局の不満をネットユーザーに代弁させた形だ。(北京 矢板明夫)
▼京郷新聞(韓国) 南北関係悪化は避けられず
16日付の韓国紙「京郷新聞」は、1面トップで今回の北朝鮮の反応について報じ、併せて韓国がミサイル発射の対抗措置として、米国主導の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に正式参加する方向で動いているとする関連記事を掲載。参加すれば、「南北関係が一層悪化し、朝鮮半島の緊張が高まる可能性が大きくなった」と不安感を示した。
同紙は、「朝鮮半島再び緊張の中へ」と題した見開きの特集面で、「政府はPSI正式参加が広げる波紋を見過ごしているのではないか」と異論を唱え、北朝鮮が韓国のPSI参加を、北への“宣戦布告”と受け取ると警告していることから、「南北間軍事衝突」を憂慮する反対論者の意見を紹介。PSIへの参加で、「北朝鮮はこれを問題視して、より強硬な対抗措置を取る可能性が高い」と懸念を示した。
また、国連安保理の議長声明を受け、北朝鮮が素早く反応したことについて、「緻(ち)密(みつ)に計算されたことのようだ」としたうえで、「北朝鮮は国連の決定と国際社会の反応をみながら、対応する国ではない」(政府当局者)と事前に計画された手順を踏んでいるだけだとした。さらに、「北朝鮮の声明の最終目的は、米朝直接対話にあるという分析が多い」と伝えた。
同紙は、声明の中で北朝鮮が表明した「自衛的核抑止力強化」の具体的措置として、「核施設再稼働と長距離ミサイル開発がその核心」としたうえで、「2回目の核実験に間接的に言及した」とみている。
再処理施設は「早ければ1~2カ月で復旧が可能で、(核兵器の材料となる)プルトニウムの生産までは、1年はかからないというのが専門家たちの見方だ」と報じた。(ソウル 水沼啓子・・・産経)>
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