3241 ”ひろこ”、”ひろっこ”で長生き 古沢襄

岩手県の菩提寺・玉泉寺の全英大和尚から昨夜、電話があった。「ひろこ、送ったからよ・・・」。ヒロコという名のお菓子なのかな?一瞬、戸惑ったが、構わず話を続けた。和尚との電話はいつも長くなる。話をしている中に分かるだろう。
頃合いをみて「ひろこなー」と蒸し返した。和尚はすぐ乗ってくる。「酢味噌あえがいいかもしれんな」・・・。どうやらお菓子ではないらしい。山菜かもしれない。
「山で採ったの?」
「ンダ(そうだの意味、通訳が必要だな)。檀家のバアちゃんが、和尚には長生きして貰わんと困る、と言って今の季節になると持ってきてくれるのよ。有り難いなー」
「明日には着くな。酒のつまみにしてケロ」
もう十年以上も玉泉寺には通っているが、”ひろこ”は初耳だ。とにかく現物が届くのを待つしかない。グーグールの検索で「ひろこ」「ヒロコ」と入れてみたが、それらしいモノが見つからない。
夕食になった。ネギとお麩の酢の物が出ている。酒のつまみの様だ。
「あ!それ玉泉寺から届いたひろこよ」と女房。
「ひろこって何」と私。
女房も初めての山菜だったので、お礼の電話をしがてら和尚の奥さんに調理方法を教えて貰ったとタネ明かしをしてくれた。
口に入れると懐かしい味だった。
戦時中のことである。旧制中学の三年生以上は名古屋の軍需工場に動員をかけられていた。私たち二年生以下は農家に勤労動員をかけられて、桑の根をネバキリと称する鍬の一種で掘り起こす毎日であった。
休憩時間になると畦道に自生している野蒜(のびる)摘みをやった。白い野蒜の球根は味噌をつけて食べると、少し辛いが美味しい。信州では野蒜といったが東北ではひろこ。
所変われば、名前も違う。秋田では”ひろっこ”というそうだ。もう一度、グーグルの検索をかけると次ぎにように出ていた。
<今日紹介の食材は、「ひろっこ」です。「ひろっこ」は畑に植えつけたアサツキの種球が、冬期の積雪によって萌芽してきたところを、除雪して掘り出して収穫したものです。雪の下で育つ期間が長いため、甘みが増すといわれています。
形は細長く、程良く湾曲しているのがよいとされています。秋田の「ひろっこ」は、他の地域の「ひろっこ」に比べて、黄白色で香りがあり、歯触りが良いため、秋田を代表する早春の味として広く親しまれています。
栄養としては、疲労回復・風邪予防に効果のある硫化アリルは長ネギの約2.5倍。老化・ガン予防に効果のあるポリフェノールも豊富に含まれています。ぜひとも、雪国の早春の香りと風味をご賞味ください。>
西和賀は秋田に近い。秋田の”ひろっこ”が岩手では”ひろこ”。それも畦道に自生しているものではなくて、山に入って採ってくる。それだけ野生味があって、独特の味がする。信州の野蒜とは違う東北の味がする。
和尚から山で自生する”山芋”を送って貰ったことがある。スーパーで売っている山芋よりも粘っこくて、これも美味しい。
愛犬バロンはもり蕎麦が好物。試しに山芋をすり下ろした”とろろ”をもり蕎麦にかけてやったら「お代わり!」とせがんできた。美味いものは犬でも分かる。
西和賀の人たちは長寿が多い。九〇歳を越えた人たちが元気!元気。山の幸を毎日食べているせいなのだろう。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました