3252 聖ゲオルグの竜退治 永冶ベックマン啓子

「もし、中国の眠れる竜が目覚めれば、世界は震え上がるであろう」と語ったのは、ナポレオン・ボナパルト(1769~1821)である。ドイツ人が中国に関して語る時、この言葉は人口に膾炙している。
この竜が目覚めてしまい、その国の大きさと人口だけでも驚く存在が、ドイツ人と同じスタンダードの生活を目指している。このままでは、地球が破壊されてしまう大問題だと、多くのドイツ人は恐れ憂い、危険視している。
ドイツの神話、また中世ドイツの英雄叙情詩「ニーベルンゲンの歌」は、バイロイト音楽祭でのワーグナーのオペラやヘッベルの戯曲で良く知られているが、この中にヨーロッパの竜退治の話がある。
主人公ジークフリート(ゲオルギウス、英語ではジョージ)は、ノルウエーのニーベルンゲン族を倒してその財宝と魔法の隠れ蓑、「名剣バルムンク」を奪い、その悪竜を倒す。
竜退治の折に魔力のある竜血をあびて全身が甲羅のように硬くなり、不死身となり後にブルグント王の妹クリームヒルトと結婚してネーデルラントの王となる。ところが、背中に張り付いていた1枚の菩提樹の葉があり、そこだけ血液を浴びず、そこを後に敵に刺されて亡くなってしまう。
11~12世紀、グルジアのカッパドキア(現在のトルコで美しい馬の地を意味する)セルビオス王の首都ラシア付近に、その巨大な悪竜は住み、猛毒を振りまき、人に噛みつき、人々は災いを恐れて、毎日2匹の羊を生贄に差し出す。
やがて羊がいなくなり、人間を生贄として差し出す事となり、くじで王の娘が当たってしまう。王は宝石財宝を出そうとしたが交渉は決裂、8日間の猶予を得る。
そこに聖ゲオルグが旅の途中で通りかかった。竜は毒の息を吐くが、開いた口に槍を刺されて倒れた。犬のように竜を連れてきて、王にキリスト教徒になる事を約束させた後に、この竜を名剣で殺した。
輸出国であるドイツは、企業の動きが政治的にも反映され市場としての中国を無視できないが、これを憂う人達も多い。
中国に進出したあるドイツの機械会社の社長は、数ヵ月後に全く同じ工場が近くにあり、外観だけは同じで品質の悪いコピー機械が出回っている事に気が付き、怒りを抑えられなく本国に引揚げた。
既に15年位前の事だが、中国の緑茶を飲んでいたドイツ人達に健康障害があり、規定以上の鉛が検出された。
プロポリスの原料もフラボノイドが2%位と魅力があるが、その農薬重金属などの汚染は2回洗浄しても使用できないもので、その他口に入るもの24種類が現在まで輸入禁止となっている。
規制の甘い日本で、何か必ず起きると思っていたが、案の上大変な事件がいくつも起きた。が、それにも拘らず日本にはドイツで輸入禁止の商品が多く出ている。
ハンブルク港では、数ヶ月前までコンテナで運ばれた海賊商品の靴やバッグ類を破砕し、焼却所に運ばれるゴミが山のように積まれていた。
経済危機以降、中国の海賊商品は2倍に増え、フランクフルトの国際飛行場ではありとあらゆる文房具類、デザイン生活日常用品が360品目となった。
ドイツの会社の被害額はかなり大きく、深刻な問題である。
よく知られるドイツのカラーボールペンの海賊商品を、税関員にこれは個人使用と顔色1つ変えないで挑戦的に嘘を言い続け、税関員は5~6回説明して没集したその状況がテレビで紹介された。
頑固と思われるドイツ人でさえ、中国人は象の皮膚のような神経と表現している。当然謝らない。どこまでやれるか試すのだろう、とはドイツ人の見解。
これだけ見ていても、日本人とは雲泥の差である。(一時が万事、裸の中国を更に日本人は認識する必要があり、ドイツ人が5回言う所を、日本人はソフトだから10回言う粘りの必要があると思う)。
どこですべり抜けるのか、ドイツのカタログにも中国海賊商品があり、インターネットショップでも、バイアグラなどコピー偽商品があり、ダイエット商品で病院に運ばれた女性もいて、大変危険と市民に注意を呼びかけている。
西アフリカの銅山では、手掘り作業で中国人が2年間いたが、1家族を残して全員帰国し、残されたアフリカ人は収入がなく飢餓寸前の状況である。
中国の田舎の農家の状況もテレビで紹介された。農業機械は何もなく、女性だけが水牛で田を耕し、天秤棒で物を運び、家とは言えない小屋の土間に古いテレビがあったが、かまどで薪を炊き料理していた。漁師は川に魚がいなくなったと話していた。
男性は広東の町に年収10万円で出稼ぎに出ているという。(おそらく日本の戦前より酷い状況)解説者は3分の2の中国人は、このような生活で、近代化には時間が随分と掛かるだろう、とコメントしていた。
しかし一番危険な事は、1年前メルケル首相が中国政府に怒ったように、国の秘密情報までにもITのスーパーな技術者が入り込んだ。アメリカの空軍の秘密情報にもITの世界で最近中国は入り込んでいる。
この世界で、1つの国を麻痺状態にし、大きな害を与えて追い込む危険性をドイツは感じている。戦争は、他の手段方法(経済・IT)を使った政治の続行である、プロイセンの軍事政策家クラウゼヴィッツの言葉は、現在にもよく通じる。(ミュンヘン在住)
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