世界保健機関(WHO)はメキシコで死者が発生している豚インフルエンザについて、ヒトからヒトに感染する大流行の危険性を示す警戒信号「フェーズ4」に格上げした。
これを受けて舛添厚生労働相は28日、メキシコ、アメリカ、カナダの3か国で感染症法で規定する新型インフルエンザが発生したとする声明を発表、政府は空港などでの検疫態勢を強化する方針を打ち出している。
豚インフルエンザは鳥インフルエンザに較べてヒトに感染した場合、死亡率が低いとされている。鳥インフルエンザも、鳥から鳥への感染→鳥からヒトの感染→ヒトからヒトの感染と段階を追ってウイルスの毒性が変異している。
豚インフルエンザも鳥インフルエンザと同じ様な段階を踏むので、死亡率が高くないと楽観することは出来ない。むしろ潜伏期間を経て秋から冬にかけて大流行の危険性がある。また医療が未整備な後進国で発生すると、対策が遅れて死亡者が増える傾向がある。メキシコの場合もそれに当たる。
2003年以来、ベトナムのメコン・デルタ地域で鳥インフルエンザが発生、当初は多数のニワトリやアヒルに斃死が目立ったが、やがてヒトに感染、三回の鳥インフルエンザの流行があって、5000羽の家禽が殺処分、ヒトへの感染は91人、41人が死亡した。
ヒトからヒトへの感染が重なる過程でウイルスの毒性が変異強化されると、世界に鳥インフルエンザが拡大し、4000万人が死亡した百年前のスペインかぜの再来になるとWHOは警告している。
豚インフルエンザも同様に危険性を孕んでいる。すでにEU域内で初めて豚インフルエンザの感染(スペイン)が認められ、アジアでも韓国で発生したといわれている。いずれもメキシコに旅行した者だが、今後は当該国の中でヒトからヒトへの感染を警戒する必要がある。
豚インフルエンザの毒性が弱い段階で、ウイルスの拡大を防止し、感染者の快復に務めれば、いたずらに怖れる必要がない。舛添厚生労働相は「正確な情報に基づいた冷静な対応」「メキシコなどの発生国への渡航を避けることの検討」「マスクや手洗いといった個人予防策」を呼びかけている。
EUの場合もロイター通信によれば、感染が確認されたのはメキシコの大学に留学し、最近帰国したスペイン中南部出身の若い男性で。発熱と呼吸器の異常を訴えて入院した。現在、手当てを受けているが、症状は比較的軽いという。
感染地域の急速な拡大など懸念する材料があるが、東南アジアで猛威を振るった鳥インフルエンザのウイルス拡大も一応は終息している。
<(ソウル28日共同)聯合ニュースによると、韓国政府当局者は28日、メキシコ旅行から帰国した1人に豚インフルエンザ感染の疑いがあると明らかにした。
感染が確認されればアジアでは初めて。韓国の保健当局は、感染の疑いが強まれば、米国の保健当局に最終的な判断を求めるという。27日に感染が疑われる患者3人が見つかり、うち2人は感染していないと確認、残り1人について検査を続けている。(共同)>
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3259 豚インフルエンザで「フェーズ4」 古沢襄

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