3270 米国で死者発生を予測 古沢襄

メキシコで発生した新型インフルエンザは米国にも感染が波及し、ナポリターノ国土安全保障長官は何人かの死者が発生するとの見方を示した。メキシコと国境を接している米国が事態を深刻に受け止めている様子が窺える。米議会では緊急対策費として15億ドルに支出の議案審議に入った。
ジュネーブのWHO緊急委員会では「フェーズ4」から、さらに一段階上の「フェーズ5」にランクアップする可能性が出てきたとしている。
新型インフルエンザの対策は緊急に大胆な方策を打つ必要がある。ことはメキシコや米国で蔓延している豚インフルエンザだけにとどまらない。対策が甘ければ、さらなる毒性を持ったウイルスに変異する可能性があるからである。
読売新聞には注目すべき記事が出ている。
神戸大学の感染症センターの調査によれば、インドネシアの豚が高い確率で、高病原性インフルエンザウイルス(H5N1型)を持っていることが分かったという。
H5N1型はアジアを中心にして鳥からヒトへの感染例が相次いで、250人以上の死亡例をだした毒性の強いウイルスである。それが豚の体内で変異して、ヒトからヒトに感染する能力を持てば、メキシコや米国での新型インフルエンザ被害を上回る猛威をふるうことになる。
豚は鳥とヒトのウイルスに感染する特徴がある。豚の体内で毒性が強いウイルスが生まれて、鳥にも感染すれば、豚インフルエンザの対策だけでは手落ちになりかねない。日本には季節的に東南アジアから渡り鳥が飛来してくる。
空港や港湾で新型インフルエンザの検疫態勢をとっても、予想外のところから毒性の強いウイルスが上陸する可能性だってあり得る。それを防ぐには、まだ毒性が弱い豚インフルエンザの段階でウイルスを押さえ込む必要がある。
メキシコから帰国した日本人は国内で連日の様に新型インフルエンザの騒ぎが新聞やテレビで伝えられているのに驚いている。無理もない。現状はまだメキシコという特殊な地域での豚インフルエンザにとどまっている。
しかし、この豚インフルエンザ対策が甘ければ、豚の体内で毒性の強いウイルスに変異する可能性がある。その可能性を未然に防ぐことが課題となっている。単なる一過性の騒ぎではない。
<【ジュネーブ29日共同】世界保健機関(WHO)緊急委員会の委員を務める国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長は28日、前日引き上げられたWHOの警戒水準について、さらに1段階上の「5」に引き上げる条件が「そろってきている」と述べ、近く再引き上げがあり得るとの見方を示した。
「5」は新型インフルエンザの世界的大流行に極めて近い状況。(共同)>
<【ワシントン28日共同】米国の新型インフルエンザ感染について、疾病対策センターなどは28日、入院患者は計7人に上り、ニューヨーク市で数百人の生徒が疑わしい症状を訴えたと発表した。
ナポリターノ国土安全保障長官は「もっと厳しい病状と、何人かの死者が発生するだろう」と述べ、事態が深刻化、長期化するとの認識を示した。オバマ大統領は緊急対策費として、議会に15億ドルの支出を要請した。(共同)>
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