ついに小沢氏が民主党代表を辞任した。いずれ辞任は避けられないと見られていたが、なぜこの時期なのか。本人は「連休中に熟慮した結果」としているが、小沢氏のことだ。深謀遠慮があるに違いない。
もっとも考えやすい理由は、13日の党首討論だ。この場で政治資金問題をやられたら、国民感情は一段と悪くなる。これを避けようとしたのか。もっともこの党首会談は民主党側からの呼びかけだ。そのあたりの脈絡はもうひとつ分からない。
政治の世界の通例だと、この種の不祥事が起きた場合、辞めるのは「電光石火」が一番いい。それも「党に迷惑をかける」という理由にするのがいい。民主党内には「党の窮地を自らの身を投げ出して救った」という錯覚に似た感情が生まれ、小沢氏も政治力温存をはかることができる。
今回、小沢氏は代表続投に執着した。秘書逮捕から2カ月以上もたったこの段階で、なぜ方針転換したのか。
小沢氏が代表の座に固執したことについて、東京地検の捜査が終結していないことを指摘する向きがある。かつて金丸信氏は副総裁辞任、議員辞職までやって「身軽になってから」逮捕された。その再現を恐れた、というのだ。
もうひとつ、後に政治力を残すかたちでの辞任の道をさぐっていた、という見方がある。小沢氏は「選挙に勝つために辞任する」という表現をした。ということは、総選挙を事実上仕切る立場は変わりない、ということか。
このあたり、ここ数日の動きを見定めないと、なんともいえないところだ。
で、後任はだれか。岡田克也氏だろうとは思う。鳩山由紀夫幹事長はやはり「一蓮托生」の責任をまぬかれないだろう。それとも、鳩山氏を後継とすることで主要幹部が一致したのか。
というのは、鳩山氏と岡田氏を比べると、鳩山氏のほうが小沢氏の言うことを「素直に聞く」タイプだからだ。岡田氏となると、一気に反小沢色の強い執行部ができあがる可能性がある。
岡田氏は「歳暮、中元のたぐいはすべて送り返す」ことで知られる。小泉元首相と同様だ。クリーンイメージを高めるには適任ということになるのだが、さて。
以下、小沢氏の記者会見での冒頭発言(産経ネット配信)
民主党の小沢一郎代表(66)が11日、党本部で行った記者会見の詳報は以下の通り。
「それでは、私から申し上げます。メモにしてきましたので、あとで諸君にも配りますけれども、メモを読み上げさせてもらいます。
挙党一致をより強固にするために、ということで、来る衆議院総選挙での必勝と政権交代の実現に向け、挙党一致の態勢をより強固にするために、あえてこの身をなげうち、民主党代表の職を辞することを決意しました。国民の皆様、支持者の皆様に、ご心配をおかけして参りましたことをおわびしますとともに、特にこの3年間、いたらぬ私を支えてくださいました同僚議員の方々、党員、サポーターの皆様に心よりお礼を申し上げます。
もとより、今度の総選挙は、国民自身が政権を選択して、自ら国民と国民生活を救う、またとない機会であります。民主党にとっては悲願の政権交代を実現する最大のチャンスであります。民主党を中心とする新しい政権をつくり、『国民の生活が第一』の政治を実現して、日本の経済社会を根本から建て直すこと。そして、政権交代によって、日本に議会制民主主義を定着させること。この2つが、民主党に課せられた歴史的使命であり、私自身の政治家としての最終目標に他なりません。
日本のために、また、国民にとって、民主党にとって、そして私自身にとっても、何が何でもここで勝たないとならないのであります。それを達成するためには、党内の結束、団結が絶対不可欠の条件であります。党内が乱れていたのでは、総選挙に勝利することはできません。逆に挙党一致で臨みさえすれば、必ず勝利することができると確信しております。
私が代表の職にとどまることにより、挙党一致の体制を強固にする上で、少しでも差し障りがあるとするならば、それは決して私の本意ではありません。政権交代という大目標を達成するために、自ら身を引くことで民主党の団結を強め、挙党一致をより強固なものにしたいと判断した次第であります。まさに、身を捨て、必ず勝利する。私の覚悟、私の決断は、その一点にあります。
連休中、熟慮を重ねまして、その結論に達し、決断した以上、党内の混乱を回避するためにも、直ちに連休明けの本日、辞意を表明することにいたしました。ただし、国民生活への影響を最小限に抑えるために、平成21年度補正予算案の衆議院での審議が終わるのを待った上で、速やかに代表選挙を実施していただきたいと考えております。
重ねて申し上げます。新代表の下で、挙党態勢を確立して、総選挙に臨むことが何よりも重要であります。もちろん、私もその挙党態勢の一員として、総選挙必勝のために、最前線で戦い続けたいと思います。国民の皆様、引き続き民主党をご支持くださいますよう心よりお願いを申し上げます。ありがとうございました」
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