3350 自民は「鳩山当選」を期待 花岡信昭

民主党の新代表が16日に決まる。事前の予想では鳩山由紀夫氏が優勢で、岡田克也氏が猛追しているといったところらしい。
麻生首相はじめ自民党側はどう見ているか。当然ながら、鳩山氏のほうが御しやすいはずだ。鳩山氏が「親小沢対反小沢の戦いではない」といくら強調したところで、小沢氏の意中の人が鳩山氏であることは広く知れ渡っている。
自民党とすれば「小沢傀儡」をアピールして攻撃できる。だから鳩山氏が当選することを「願って」いる。
逆に岡田氏になった場合、想定を超える人気が出る可能性なしとしない。岡田氏が「小沢院政戦略」に対抗することで、「新生民主党」のイメージが出てくる。
ネット投票などでは岡田氏のほうが優勢だ。だが、党内的には小沢氏の意向を無視できないという思いが強い。
民主党所属の国会議員221人は、どう判断するか。思いがけない結果になったとき、民主党の新たなステージが生まれるような気がする。
<<それでも「小沢党」に基本的変化はない>>これは13日時点のコラムですが、再掲しておきます
*自民党の意表を突いた小沢辞任のタイミング
小沢一郎氏がついに民主党代表を辞任した。16日にも後継代表が決まるが、鳩山由紀夫氏か岡田克也氏のいずれかだろう。代表を辞任したからといって、小沢氏の政治生命が絶たれるとか政治力が一気にダウンするということではない。民主党はやはり「小沢党」なのだ。
大型連休明けの11日に辞任表明を行った小沢氏だが、このタイミングには疑問が残る。13日に予定されていた党首討論を避けようとしたという解説もあるが、この党首討論の日程は民主党側が要求していたもので、脈絡が合わない。
ただ、自民党サイドには小沢氏がこの時点で辞任するという見通しはほとんどなかったようだ。時期はともあれ、このまま解散になだれ込んだ後、「やはり街頭演説もできない小沢代表のもとでは選挙は無理」という声が民主党内にあふれ、新代表で総選挙に臨むといったシナリオを想定する向きが多かった。
 
その点では、麻生首相は出し抜かれたともいえるわけで、解散戦略の立て直しが求められそうだ。安倍元首相は麻生首相に小沢氏の辞任前に解散すべきだと進言していたようだ。小沢氏辞任、新代表選出によって、民主党に「新生」イメージが出て、せっかく攻守逆転状況をつくり出すことに成功したのに元へ戻ってしまうといった流れを恐れたらしい。
*主導権を失わない恐るべき”剛腕”
代表辞任のスケジュールは、党内での表の論議を経てということではなく、小沢氏自身が判断したものだ。「連休中に熟慮した結果」というが、そこは小沢氏のことだ。底知れぬ深謀遠慮が隠されていると見るべきだろう。
だいたいが、辞任表明の記者会見で小沢氏は「西松事件」についてはほとんど言及していない。「衆院選必勝と政権交代実現のため、あえてこの身を投げ打ち…」といった調子だ。挙党体制の障害となるから辞任するというもので、事件の責任を取ってということとはニュアンスが異なる。党のために自ら犠牲となるといった構図をつくりあげてしまった。このあたり、さすがという以外にない。
要は連休中に代表辞任後の段取りを固めたということだろう。鳩山氏を後継代表とし、小沢氏自身は総選挙の実質的な総責任者として君臨する。選対本部長といった肩書となるかどうかはともかく、事実上の「小沢院政」の体制が水面下で出来上がったと見ていい。
16日の両院議員総会の設定も、早期に後継代表を選出する必要があったからだ。土曜、日曜に所属議員が地元に帰れば、小沢氏への批判がいっせいに浴びせられるのは目に見えている。そうなる前の週内決着を目指したわけだ。
後継代表選のやり方を巡る役員会の論議でも、衆院選候補らにも選挙権を与えようといった提案を小沢氏はことごとく退けた。長妻昭政調会長代理ら4人を名指しで批判し「この4人組はいつも反対する」「選挙の前に有権者の幅を広げるのは民主主義ではない」などと語気鋭く反論したという。
代表辞任に追い込まれて、しおらしくしているのかというと、まったくそうではない。朝日新聞の1面には「突如『剛腕小沢』が復活」という見出しが躍った。窮地に追い込まれると、一転して有利な状況をつくり出そうとする。これが「小沢流」である。
*危機に追い込まれる度に政治力を強化
一昨年10-11月の大連立騒動の際もそうだった。ときの福田首相との間で、大連立に向けての構図が完璧に出来上がっていた。小沢氏は副総理、そのほか、年金問題を民主党が熱心に取り上げていたのだからと厚生労働相、農家への個別所得補償を打ち出したのだから農林水産相も、などと閣僚6ポストを民主党側が取るといった具体的な約束も交わされていたという。
ところが、党に持ち帰って役員会に諮ったら、旧社会党系幹部を中心に反対論が噴出して、大連立構想はつぶれた。小沢氏はこの責任を取るとして代表辞任を表明、党をあげての説得工作で辞意を撤回するという経緯になった。
あのときも小沢氏は政治力を減殺したかのように見えて、実はまったく逆に、むしろ強化してしまった。「やはり、小沢氏がいないと民主党はもたない」という印象を強めてしまったのであった。
それと同じ現象が今回も起きようとしている。今度は政治路線の選択とはちがって、政治資金規正法違反という「犯罪」が問われたのだが、そのことへの真摯な対応は伝わってこない。
小沢氏は依然として「修正申告ですむ話を逮捕、起訴までもっていった。国策捜査だ」といった趣旨の反論をしている。小沢氏が党内で政治力を維持し続けるということは、こうした主張を党として認めることにもつながるのだが、そこを民主党自身はどう判断しているのか。その点の深刻さ、真剣さが見えてこない。
政治メディアや政治評論の世界では「小沢嫌い」が圧倒的に多い。とかく説明不足でメディア批判を展開することも少なくない小沢氏だが、その政治生活を振り返れば、これまで何度も「小沢政治の終焉」といったことが指摘されてきた。
だが、そのたびに小沢氏は、不死鳥のごとく、などというときれいごとに映るかもしれないが、驚くほどの復元力で蘇ってきた。今回もその何幕目かを演じようとしている。
*「小沢氏を上回る力」が民主党内に見当たらない
そうした小沢氏を徹底して批判するのはたやすい。この時代に、これほどの説明責任を果たさない政治家が堂々と、それも政権奪取の可能性がある政党を率いることの不可解さを指弾するのは容易だ。
だが、政治の流れをリアリズムで見たいと思う筆者などの立場からすると、小沢氏を非難するのであれば、その政治手法を封じ込めるパワーを探し求める作業が必要であるように思える。残念なことに「小沢氏を上回る力」が民主党内に見当たらないのだ。
いうまでもないが、政治とは権力の争奪戦だ。「勝てば官軍」の世界である。幾多の修羅場をかいくぐってきた小沢氏は、その現実を知り尽くしている。ときに一般の感覚とはかなりの開きがある政治行動を取るのも、そのためだ。「結果オーライ」の世界であって、世間は一時的に小沢氏を非難しても、すぐ忘れる。そのことを小沢氏は十分に知っている。
当面の代表選でいえば、鳩山氏支持は「小沢容認」、岡田氏支持は「反小沢勢力」という構図になる。鳩山氏が後継代表となった場合、小沢氏は動きやすいわけだが、別の結果となった場合、そこで小沢氏はおしまいかというと、そうともいえない。小沢氏はまた別の次元の政治行動を取ろうとするだろう。岡田氏との関係修復を一気に図るといったことも十分に予想できる。そこの見極めが難しい。
*何をしでかすか分からない小沢流政治手法
それにしても、秘書逮捕から2カ月余りたつのだが、民主党は小沢氏の代表辞任を党として迫るということができなかった。遠巻きにして、おそるおそる愚痴をこぼす、といったシーンの繰り返しであった。代表辞任は避けられないという判断が大勢ではあっても、すべて小沢氏任せであった。そこに民主党の脆弱な体質を指摘しないわけにはいかない。
政治の世界の通例でいえば、こうした不祥事があった場合、「電光石火の辞任表明」が最も効果的である。早ければ早いほどいい。そのほうが結果的には早く立ち直ることができる。
小沢氏はそういう行動を取らなかったし、党側も攻めきれなかった。それどころか、党内のベテラン議員の中には小沢氏擁護で突っ走る向きもあった。党側が小沢氏の代表辞任を早期に引き出せなかったのは、「何をやるか分からない」という小沢氏の政治手法への恐怖心である。
早い話が、最も恐れられたのが「小沢氏が手勢を引き連れて党を割る」可能性である。かつて、小沢氏からこんな話を聞いたことを思い出す。「政局を動かすには、多数を制することができれば一番いいが、それだけではない。30人から50人もいれば、なんでもできる」。
たしかに、小沢氏の政治行動を見れば、自民党を飛び出し、新進党瓦解でも動じず、自由党として小渕自民党との連立を果たし、さらにこれを解消し、そして民主党との「民由合併」に踏み切り、ついには「ヒサシを借りて母屋を取る」を地でいって民主党代表となった。一定の勢力があれば、自在に動けるのである。
そうした「何でもあり」の小沢流政治手法が今回も通用するのかどうか。最終的には有権者が判断することになる。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました