新型インフルエンザはヤマを越えたという雰囲気の報道が、ぼちぼち出始めている。23日、大阪府の橋下知事は、発症者数が減少に転じていることから「すでに流行ではない」と宣言しており、厚労省もこれを是認する見解を示していると伝えられている(5/24 産経新聞)。ではこれで、一件落着か。
筆者がこの問題を取り上げたのは
http://www.melma.com/backnumber_108241_4480390/ (5/16)
http://www.melma.com/backnumber_108241_4480925/ (5/17)
http://www.melma.com/backnumber_108241_4482824/ (5/19)
http://www.melma.com/backnumber_108241_4484191/ (5/20)
以上4本だが、これらの記事の発想の原点、ネタ元は、WHO(世界保健機構)や米CDC(疾病予防センター)のホームページである。
加えて言えば、この時期に絶好のタイミングで出版された、現職の厚労省防疫官である木村盛世氏の著作『厚生労働省崩壊』(講談社)に啓蒙され、厚労省のガイドライン(新型インフルエンザ対策行動計画)が“欠陥商品”であることの発見に漕ぎつけた。
欠陥商品であるとする根拠については、5/20の「破綻した流感ガイドライン」でその一端を紹介した。主なものをまとめると、
1.第1段階(海外発生期)の対策として、水際での「防災オンリー」に全力に傾注したこと。
WHOや木村氏は当初から「インフルエンザは波及するもので、潜伏期が一週間もある疾病に水際作戦は意味がないという見解を明らかにしていたのもかかわらず、である。
まして、濃厚接触者を“隔離”する意味はないとしていた。事実、世界中で停留政策を採ったのは、日本と中国だけだった。そこで、水際作戦を中止した途端、機内ですでに発症していた人まで見抜けず、1人がすり抜けた。
2.第2段階(国内発生早期)で地方自治体に対し、発熱外来の設置をはじめ、発症者の出た地域の事業所休業、休校を要請したこと。
要請といっても、自主的に判断する能力のない地方から見ると、事実上「命令」であった。が、これが地方社会に想像以上の悪影響を与えることが明らかになると、今度は、「自主的に柔軟に判断してくれ」と対応を丸投げしたのである。
また、「熱が出たら発熱外来に行け」「危ない人は入院をさせよ」と言っていたのに、現場で設備、人、カネが追いつかないと分かると、すぐ「微熱の患者は自宅で様子を見ろ」という。
さらに、マスク。危ないところ(人ごみ)ではマスクをと呼びかけたこと。
WHOやCDCははじめから医学的に見て「無意味」「マスクで感染が防げるというのは神話に過ぎない」と日本のマスク過信にあきれている。しかし、世界の常識から見て日本のユニークな防疫常識を厚労省は見てみぬ振りである。
3.第三期(感染拡大期/蔓延期)引き続き発熱外来、入院措置を続ける。と言っているが、この方針は事実上チャラにしておきながら、行動計画を訂正したとは言っていない。
厚労省で医療制度の設計を一手に担っている600人の医系技官。彼らが“作文”したガイドラインをあざ笑うように現実は裏目、裏目で、手直し、変更の連続だったが、その過ちをまだ認めず、反省をした様子もない。
その場その場で、なし崩しに基本的方針を変えてきた。臨機応変に変更したと言う言い方もあるが、明らかに、ガイドラインは現場を知らない官僚が机上の設計した制度だったことが明らかになった。
なぜ「マスクは無意味だからやめましょう」と大臣に宣言させないのか。呼びかけた責任、やめてなにかが起きたときの責任、を問われるのが怖いと言うのが本音だろう。
マスコミにも責任がある。「マスクの効果は限定的だ」と奥歯に物の挟まった言い方である。
誤解を恐れぬ言い方をすれば、一連の騒動は、反省しそれを糧としようという発想のない、この無能な医系技官と、それを妄信して机上の作文を口パクで発表する大臣にある。マスコミがそれに手を貸している。
インフルエンザは、秋口と予想される季節性の第2波が怖いといわれる。スペイン風邪(1918~19)でも、第2波でより多くの人が死んでいる。厚労省はそのときまた、犯人探しのような防疫対策を展開するのだろうか。
<強毒性であれ弱毒性であれ、封じ込めは不可能です。それは症状がはっきりしないことと、潜伏期が1週間程度あることが主な理由です。今の施策を徹底するなら鎖国以外、手立てはありません。インフルエンザである以上入ったら必ず広がります>(木村氏)。
その頃、舛添大臣ではないと思うが、ことインフルエンザ対策に関しては、筆者はWHOなどが発信する“世界的な常識”に従って行動しようと思う。
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3384 反省しない医系技官 石岡荘十

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