日本の新聞と海外紙が北朝鮮問題を扱う時に認識の度合いが違うと感じることがある。有り体にいえば、日本は抑制的であり、韓国紙は激しく反応する。38度線を隔てて北朝鮮と対峙している韓国と日本海を隔てている日本の違いなのだろう。
クリントン米国務長官は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを検討していると述べた。ブッシュ政権下でヒル国務次官補が指定解除に奔走し、日本は指定解除に批判的だった。
だが、英ロイターだけを読めば、ヒラリー・クリントンの発言は①再指定を検討しているが、そのための手続きがある②北朝鮮が国際テロリズムを支援しているとの最新の証拠の確認を望んでいる③証拠を米政府が持っているかとの質問に対し、現時点ではその質問に対する答えはない・・・と歯切れが悪い。
これでは北朝鮮から足下をみられてしまわないか。ヒラリー・クリントンの回りくどい発言は、韓国の朝鮮日報を読むと背景が理解できる。
朝鮮日報はワシントンから米国務省の内幕を伝えてきた。先月26日にケリー国務省報道官がテロ支援国家再指定の可能性があることを、オバマ政権下で初めて明らかにしたのだが、国務省内から「ケリー報道官の勇み足だ」という声があがったという。
国務省には対日配慮よりも中国を重視する勢力が伝統的に多い。北朝鮮をテロ支援国家に再指定するのは、対中関係を悪くする・・・ヒル国務次官補も同じ考え方であろう。イラク大使に任命されたのだから、余計なことを言うな!と言いたいところだ。
しかしヒラリー・クリントンは、国務省内の慎重派を押さえて、北朝鮮がテロ支援国家を解除された目的を履行していないと言い切って、あえて記者会見の発言となった。
ざっくばらんに言えば「お前さんたちが、前政権でテロ支援国家の指定を解除したのに、北朝鮮はますますつけ上がっているじゃないの」と言うことであろう。
これみよがしに地下核実験をやられ、大陸間弾道ミサイルの発射も辞さない北朝鮮には、オバマ大統領も怒り心頭に発しているという。米国としてはあらゆる手段を講ずる姿勢だと伝えられている。
クリントン米国務長官の発言をこの脈絡で見ると、テロ支援国家再指定が現実化する可能性も、あながち排除できなくなった。
<[ワシントン 7日 ロイター]クリントン米国務長官は7日、北朝鮮が先月25日に核実験を実施したことを受け、米国は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを検討していると述べた。
同国務長官は米ABCテレビのインタビューで「政府は再指定を検討している。そのための手続きがある。米政府は、北朝鮮が国際テロリズムを支援しているとの最新の証拠の確認を望んでいる」と述べた。
現時点で北朝鮮が国際テロリズムを支援している証拠を米政府が持っているかとの質問に対し「検討は開始されたばかりで、現時点ではその質問に対する答えはない」と述べた。
米国は昨年10月に北朝鮮のテロ支援国家指定を解除。暗礁に乗り上げていた北朝鮮の核問題を協議する6カ国協議の進展を目指した上での指定解除だったが、6カ国協議は現在、完全に機能停止状態に陥っている。
クリントン国務長官は「北朝鮮のテロ支援国家指定解除には当然根拠があった。その解除の根拠を北朝鮮自身が打ち消している」と述べた。(ロイター)>
<オバマ米大統領が6日、北朝鮮の最近の行動は「極めて挑発的」だとして、挑発に「補償」する方式を繰り返す考えがないことを示した。また、クリントン国務長官は7日、北朝鮮をテロ支援国家に再指定することもあり得る、という立場を明らかにした。
オバマ大統領は6日、フランスで行われたノルマンディー上陸作戦65周年記念式典に先立って、サルコジ仏大統領と記者会見を行い、その場で北朝鮮の核問題について質問を受けた。すると、待っていたかのように「北朝鮮のここ数カ月間の行動は極めて挑発的だ」として、嫌悪感をあらわにした。続けて「北朝鮮は核実験を行い、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を進めている事実を隠さない。われわれは北朝鮮の挑発に対して補償する政策を続けるつもりはない」と「宣言」した。オバマ大統領は「わたしがいつも好むのは外交的アプローチだが、問題を解決しようという相手側の真摯な努力が必要だ。北朝鮮からそのような反応は見られない」と述べ、対応方法の変化の可能性を示唆した。
一方、クリントン国務長官は7日、米ABCテレビの『ディス・ウィーク』に出演、北朝鮮をテロ支援国家に再指定する問題について「考慮するつもりだ」と明言した。
クリントン長官は「われわれは北朝鮮が国際テロを支援している証拠を調べることを望んでいる」と語った。クリントン長官はテロ支援国家再指定を考慮している理由について、「北朝鮮は明確に(非核化の)目的のためにテロ支援国家リストから除いたが、その目的がまさに北朝鮮の行動によって挫折している」と述べた。
北朝鮮が昨年10月、非核化過程を履行する条件としてテロ支援国家の指定を解除したことを指摘したものだ。
また、北朝鮮が核物質を海外に運び出す可能性に関連して、「これを阻止して防ぎ、資金の流れを遮断するためにできることは何でもする」と話した。
オバマ大統領とクリントン国務長官が相次いで対北朝鮮強硬措置を明らかにしたのは、しばらくの間権力継承過程にある北朝鮮がさらに緊張を高めるだろうという判断のためだと思われる。短期間では問題が解決しない可能性が高いとみて、少なくとも1-2年を見込んだ戦略を取っているという分析も示されている。
米国の最高位政策決定者らの相次ぐ強行発言について、ワシントンのある外交筋は「北朝鮮が米国の逆鱗に触れた」と話した。この消息筋によると、オバマ大統領が北朝鮮に対しひどく怒っており、米国としてはあらゆる手段を講ずる姿勢だという。韓国が米国に強行対応を要請する必要さえないというわけだ。
オバマ大統領が国内ではなく外国で北朝鮮に対する不信と嫌悪感を明らかにしたのは、相当に意図的だ。国連安全保障理事会の対北朝鮮決議採択を目前に控え、訪問先のヨーロッパで対北朝鮮強硬の立場を示し、国際的な「共同」対応を強調したと言える。
ブッシュ前政権は、2006年10月北朝鮮の核実験後すぐに立場を変え補償を行い、状況を「凍結」させる方向に向かった。しかし今回は、オバマ大統領が進んで「北朝鮮が絶えず地域の安定を妨げているのに、われわれがこれを補償することで対応する方向に進み続ける考えはない」と語り、その可能性を初めから排除した。
クリントン国務長官が公にテロ支援国家再指定の可能性に言及したのも注目に値する。先月26日、ケリー国務部報道官がテロ支援国家再指定の可能性を明らかにした直後、国務部の関係者らは「ケリー報道官の勇み足だ」と話した。
特に、北朝鮮の核問題を扱う実務担当者らはこの発言に対して反対の立場明らかにしたという。しかし、クリントン長官が、北朝鮮がテロ支援国家を解除された目的を履行していないと批判したことによって、テロ支援国家再指定が現実化する可能性も排除できなくなった。(朝鮮日報)>
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3448 ヒラリーが「テロ支援国家」再指定の発言 古沢襄

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