3479 北朝鮮の核実験は中国の陰謀!? 福島香織

■何かきょうも長い一日だった。日本という国はニュースの賞味期限がすぐきれる。きょうは、昼あたりから、鳩山総務大臣の辞任の話題一色。きのうは対北朝鮮の安保理決議が旬かな、と思ったんだけれど。ちなみに、今週末のネットインタビュー「福島香織のあれも聞きたい」は、産経読者にはあまり人気のない自民党内きってのリベラル派の加藤紘一氏に、日中関係とか北朝鮮問題とかお聞きした。ちなみに福島も産経社内ではかなりリベラル派だと思っているのだが、誰も信じてくれない。今晩、本社にいって、土曜の朝にアップできるようタイマーをかけておく、予定。
■鳩山総務大臣の辞任については、おそらく四面のほうで怒涛のような報道があるので、ブログではスルー。しかし、日本の大臣というのは、せっかく手にいれた権力に執着しない人が多い。中国人なら絶対己の正義を貫くよりは、ひよって要職の地位を守る方を選ぶはず。だいたい正義なんて、相対的なものだから、ちょっと見方を変えればすぐ正義でなくなる。自分を納得させるなんて意外に簡単だ。で、いったんひいて見せて、うらで陰謀を練って、狙った相手を失脚させる…。
■考えて見れば、中国では自らの発言、失言で要職のポジションを失うケースは少なく、失脚する人は、権力闘争を背景にした陰謀によって陥れられることが多い。確かに表向きは汚職とかだけど。麻生政権で要職を失った政治家を見渡せば、ほとんどが自ら発した発言がブーメランのように返ってきたり、あるいは酒とか女性とかが原因。陰謀によって狙い撃ちされたというよりは、意地をはったり、自制不足をつっこまれたりという自滅パターン。民主党の小沢さんの秘書が起訴された件ですら、陰謀臭がしない。民主党側は陰謀といっているようだが、あれは自民党の陰謀というよりは、検察の意地ってやつではないかな?
■で、福島の興味は再び陰謀渦巻く朝鮮半島や中国に。金正男氏の亡命話が浮上したり、中国様はなにやら一生懸命画策されているようですな。
■日本としては、北朝鮮に対する国連安保理決議案の中で制裁の「義務化」という文言がいれてもらえず、悔しい思いをした。日本外交がへたれなのか。いやいやアメリカの凋落っぷりが如実に反映されたということか。けっきょく最後まで臨検義務化に抵抗した中ロ、特に中国様の言うことは聞かざるを得ないことがはっきりした。中国様は、前回の北朝鮮の核実験のときは丹東の原油パイプラインのバブルを閉めて北朝鮮をきりきり締め上げたのにくらべ、今回はえらく、北朝鮮に遠慮深い。いったいなぜ?中国様は北朝鮮が核保有国になってもかまわないのか?かの国が核保有国なることよりも、もっと中国にとって関心の高い、優先順位の高いテーマがあるということなのか?
■てな、ことをひさびさに真面目に考えてみたのは、次のようなワシントンポストのコラムをよんだから。アンヌ・アップルバームという人のコラムで、見出しは「北朝鮮は中国が育てた脅威」「平壌のシャドーボクシング」、おっ刺激的。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/06/01/AR2009060102480.html?nav=rss_opinion/columns
■コラムでは、、今回の北朝鮮の核実験は、中国が黒幕として存在しており、目的は米国のアジアにおける威信に打撃をあたえ、米国の核拡散にたいする忍耐の程度を探るため、という「新陰謀論」を展開している。
■北朝鮮はワシントンとの直接交渉に対して不満を感じており、ワシントンにさらなる譲歩をさせようと望んで今度の核実験を行ったというのが一般の解釈なのだが、このコラムでは、次のような分析をくわえている。
■「北朝鮮が強硬な姿勢にでて、戦争の準備をすることは、ひょっとすると中国にとってのぞましいことかもしれない」
■この結論はなにか重大な根拠があるからではなくて、コラムニストのロジックから導いた結論であるが、ちょっとその言い分を紹介すると、
■①中国は北朝鮮に唯一影響力を発揮できる国である。②なおかつ、唯一北朝鮮と外交ルートをもつ大国である。③なおかつ、その気になれば、北朝鮮政権を転覆させるだけの実力もある。④中国が北朝鮮に対するエネルギー供給を中断し、貿易ルートを閉鎖し、北朝鮮人に対し国境を開いて難民の流入を迎えたら、ベルリンの壁が脱出難民の洪水で崩壊したときと同様、北朝鮮政権は間違いなく崩壊する。中国の北朝鮮への影響力は、国連安保理より大きい。⑤しかし、中国は北朝鮮の核開発阻止のためにその影響力を行使しない。口では北朝鮮の核開発停止にむけての努力をさけびながら、座して朝鮮事態の悪化を眺めている。
なぜか。→それは米国の軍事行動力をチェックするためです。
■アップルバーム女史は、「中国はアメリカに代わって、東アジアのリーダーたる地位を望んでいる。中国のこの数年の海軍にへの巨額軍費の投入がその証拠。70隻の潜水艦のうち10隻は原子力潜水艦だ。空母の建設計画もすすんでいるし、中国軍事力報告によれば、長距離対艦ミサイルなども配備ずみ」といって、中国の軍事覇権への意欲を紹介。
■さらに「オバマ政権が北朝鮮の核の危機にどう対処するか、アジア各国は目下観察中。オバマ政権がもし、北朝鮮の核保有を阻止できないなら、韓国(あえて日本とはいわず)あるいは台湾はどのような結論にいたるか。」
「アメリカの核の傘は以前のように効果的に広くはないのではないか。中国こそ、東アジアの核の傘たりえるのではないかと考えまいか」
■というわけで、中国がリモートコントロールで北朝鮮をあやつり、この危険なゲームをさせて、地域の危機意識をあおっているというような話になるのだ。で、コラムは、「もちろん、日本は中国がアジアの盟主となることは面白くないし、台湾も中国に統一されたいなんて思っていない。
日本は自前で核抑止能力を備える選択もあるし、そうなれば、韓国、台湾も続く。軍拡競争が展開される。だから、中国は大きなリスクを侵している…」といっているのだが、「そうであっても、中国は自分の軍事力を示すことなく、北朝鮮に核実験させることで、米国の今の軍事行動力を見極めることができるのだ」…。
■コラムだから、思いっきり想像の翼を広げているのか。それとも、なにかこう書ける情報をもっているのかは知らない。ただ、このコラムを読んで、人民解放軍の幹部が書いた論文かい、と思ったのも事実。
解放軍の軍人学者が書く論文というのは、ときに、お前らもっと国際社会をしれよ、己をしれよ、といいたくなるほど夢見がちだ。今回の北朝鮮の核実験が、中国のリモートコントロールによる陰謀だというのは言い過ぎだとしても、コラムにあるように、「アメリカにかわりアジアの核の傘たる役割を担う中国」というドリームを見ている解放軍幹部の人っていそうな気がする。
■まあ陰謀には疎い日本人は、ばかばかしいと思うかもしれないが、陰謀というのは普通の人がまさかと思う方向から、とっぴょうしもない形でしかけられるから成功するのだろう。ちなみに、中国人の中には、今回の北朝鮮の核実験を口実に、日本の軍国主義勢力が台頭しようと陰謀をねっている、とか言う人もいるよ。
私は日本人も、もうちょこっと陰謀の操り方というものを研究すればいいのにと思う。
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