3485 「敵ミサイル基地攻撃能力」の保有で選挙戦を 古沢襄

自民党の国防関係合同会議が「敵ミサイル基地攻撃能力」の保有を打ち出した提言をまとめた。具体的には北朝鮮からノドン・ミサイルの攻撃を受けた場合、第二撃を阻止するために敵ミサイル基地を攻撃する能力を保持するということである。
さらには同盟国である米国に対するテポドン・ミサイルの攻撃に対しても、日本は集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈の変更を求めている。
これらの具体的な措置として手段は航空機、巡航ミサイルだけでなく弾道ミサイルを含むとした。そのいずれもが、理論的には鳩山内閣以来の懸案事項であったが、北朝鮮のみならず中国やロシアを刺激するものとして見送られてきた経緯がある。
しかし北朝鮮が核武装の宣言をしたことにより、国民の生命、財産を守るために避けては通れないものとなった。当然のことながら「予防的先制攻撃を行わない」との文言を付け加えた。
この提言にある敵基地攻撃能力は、昭和31年2月の衆院内閣委員会で当時の鳩山一郎首相が答弁した範囲内もので、憲法や政府の専守防衛の方針に違反するものではない。
しかし社民党など野党からは激しい抵抗を受けるであろう。したがって自民党は来るべき総選挙で、この提言に沿って国民の信を問う必要がある。国論を二分する選挙戦になるのだろうが、政権維持のために逃げることは許されない。
<自民党の国防関係合同会議は9日、政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」に向けた提言をまとめた。北朝鮮を念頭に「敵ミサイル基地攻撃能力」の保有を打ち出した。
その手段として、巡航ミサイルとともに弾道型長射程固体(燃料)ロケット(弾道ミサイル)を加えた。平成15年度予算から続く防衛費削減から増額へ転ずるよう方針転換も求めた。さらに米国をねらう弾道ミサイル迎撃など4類型について、集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈の変更を促した。
提言は同部会の防衛政策検討小委員会(今津寛委員長)が起草したもので、近く麻生太郎首相らへ報告するが、政府が提言をどこまで防衛大綱に取り入れるかが今後の焦点となる。
提言が敵基地攻撃能力の保有を明記したのは「周辺国の脅威の度合いが上がっている」(中谷元・党安全保障調査会長)ためだ。中谷氏は「北のノドンミサイルは数百基あり、今のミサイル防衛だけで対処するには財政的に限界がある」と強調している。
提言は原案よりも具体的な内容となった。
原案にあったミサイル発射基地だけでなく敵爆撃機やミサイル運搬車両を含む「車両等」と記述し、手段は航空機、巡航ミサイルだけでなく弾道ミサイルを含むとした。
合同会議に先立ち9日朝に開かれた防衛庁長官・防衛相経験者の会議では「外国に誤解を与えてはいけない」「衆院選前だから慎重に議論すべきだ」との意見が出た。この席上、山崎拓元副総裁が提案し、「予防的先制攻撃を行わない」との文言を付け加えた。
提言の敵基地攻撃能力は、昭和31年2月の衆院内閣委員会で当時の鳩山一郎首相答弁の範囲内で、憲法や政府の専守防衛の方針に違反するものではない。
専守防衛を超える「予防的先制攻撃」に言及する文言がなくても問題はないが、北朝鮮などの外国、野党、公明党などの批判をかわすねらいがある。
だが、浜田靖一防衛相は9日の会見で「敵基地攻撃の後に何がくるのかを考えれば、慎重に取り扱うのは当たり前の話だ」と述べるにとどめた。
一方、提言は「防衛力におけるマンパワーは国家の防衛意思の表明そのもの」と人員増を要請。平成22年度予算編成に用いられる「骨太の方針2009」とりまとめで、骨太2006以来の防衛費の「名目伸び率0以下」の削除を求めた。
実際、防衛費は15年度から7年連続で減少中だ。逆に近隣諸国はこの間、国防費を拡大してきた。最近の7年間で中国の国防費は3・59倍、ロシアは4・85倍、韓国は2・40倍になった。
このほか、自民党は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の拡大配備を提言しようとしたが、自衛隊側が、「予算をそちらに回せば国内の航空戦力を維持できなくなる」と訴え、見送られた。
景気対策のため過去最大の補正予算を組んだ政府だが、「防衛費をどう扱うか近隣諸国の軍当局も注視」(国防関係議員)している。(産経)>
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