3510 「未熟」政治家麻生 渡部亮次郎

<「手紙公表おかしい」=首相が鳩山氏批判>(時事通信)。日本郵政の社長人事をめぐり、クビを斬った鳩山前総務相に2月に出した私信をバラされて、自らのブレ振りを暴露された麻生首相。「私信を公開する鳩山はおかしい」と非紳士振りを批判したものだ。
世間はどう受け取るか分からないが、かねてから人事案を書き物にして「証拠」としてしまった麻生首相の手口は政治家としてはあり得ない粗末さだと思っていた私は、首相の批判発言はいわば悪あがきだと思う。
<麻生太郎首相は16日夜、日本郵政の西川善文社長の後継候補リストが同封された手紙を首相から受領したと、鳩山邦夫前総務相が公表したことについて「個人との間に出された手紙や文書が安易に外に出される方がおかしい」と批判した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
鳩山氏更迭に至った経緯の説明が不足しているとの指摘が政府・与党内からも出ていることに関し、首相は「人事や民間会社に関する経緯がどうあったかを説明するというのは聞こえがいいが、内容を全部見せるということが果たして正しいことか」と反論した。>(6月16日20時32分配信 時事通信)
昨日の友は今日の敵が常識の政治の世界。まして利害が極端に絡む人事案件だ。事態がどう展開するか見通しが立つものじゃない。それなのに日本郵政の社長人事について早くも今年の2月の時点で西川社長更迭の線で纏めるよう鳩山大臣に指示していた。
しかも後任者について何人か具体的にメモを書いて鳩山に手紙にして渡していたというから驚いたのだ。少なくとも祖父吉田茂や鳩山一郎の時代にはあり得なかった「未熟さ」である。「調教不足」と言う点では麻生は鳩山に劣らない。
日本郵政の問題点を全く理解していない。西川社長は当時、小泉首相が三顧の礼を尽くして据えた人事。問題とされたカンポの宿払い下げ問題も、冷静に考えれば鳩山の無理解に端を発したもの。
日本郵政がかんぽの宿を安く売ったという指摘を、前総務相は常にしていたが、これが誤解なのだ。オリックスへは「事業譲渡」である。
事業譲渡とは、旅館業だから土地建物設備と従業員と経営システムとを引き継いで、引き続き旅館業を継続してくれる条件で入札することになる。
だから、土地建物設備がどれだけの価値があるかではなく、事業がどれだけの利益をだせるものかが譲渡入札の価格となる。赤字込みの資産を従業員込みで引き受けるのだから、不動産の価格だけで比較することはできないのだ。
それを知ってか知らずか鳩山は不動産の価格だけで比較して「西川は国民を愚弄」しているように世論を間違った方向に誘導したのである。クビにして当然だった。
しかし、その理由を明確にすれば、当然世論は「それなら首相は今までなんでもたついていたのか」と非難する。それを恐れて経緯を明らかにしないままクビを斬った。だから鳩山善人、麻生悪役に反転し世論調査の支持率奈落、となった。
問題の本質を正しく理解していれば日本郵政の社長人事はきわめて流動的で微妙であり、見通しの立てにくい問題である事は自明の理だった。それなのに後任者の名前までメモにして渡すとは全く政治家として未熟である。ブレとかの問題以前。政治家として未熟なのである。
私が秘書官として仕えた園田直外務大臣は日程までシュレッダーで破棄しろと指示していたものだった。(文中敬称略)
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