今朝の毎日新聞は1面で「西川社長に辞任要請 佐藤総務相 会長就任引き換えに 後任で再協議」という記事を掲載しています。それによると、佐藤勉総務相が16日に日本郵政の西川善文社長と会談した際に、会長への就任を打診していたという内容ですが、これについては佐藤氏も河村建夫官房長官も全面否定しており、真相は薮の中です。
毎日の記事は「西川氏に会長ポストを用意することによって、社長続投を求めてきた小泉純一郎元首相ら自民党内の西川擁護派にも配慮した格好だ」と書いていますが、実際どうなんでしょうね。いずれにしろ、こういう記事が出たことで、仮にこの話が本当に水面下で進んでいたとしても、話はつぶれるでしょうね。
さて、それはともかく、本日はたまたま政治評論家で政治記者としても大先輩(時事通信出身)の屋山太郎氏と話をする機会があったので、「ついでですみませんが」とミニ・インタビューを申し込み、快諾してもらいました。テーマは、今回の鳩山邦夫前総務相の辞任問題をどう考えるかについてです。
私 屋山さんは今回の件をどう見ますか
屋山氏 まず、麻生さんの政権基盤は小泉元首相が郵政を問うて得た300議席の上にあるということだ。これは、安倍さんや菅(義偉)さんが麻生さんに言ってようやく納得したと聞くが、麻生さんの使命はそれを完成することにある。
仮に、麻生さん自身はそういう考えではなくても、選挙結果が出た以上は、これをいかに完成させるに頭をめぐらせるべきだ。しかし、その切り替えをしていなかったから、麻生さんは「私も郵政民営化には反対だった」などと言った。そして、鳩山さんはその点を勘違いして、麻生さんと一緒に郵政民営化をぶっつぷそうとした。
鳩山さんの行為は郵政担当相として全く不適当だ。鳩山さんの仕事は本来、民営化がうまくいっているかをチェックすることだ。かんぽの宿という日本郵政の本業じゃないもの--郵政民営化法では、コアでない事業は5年以内に売り払うことになっている--を早く売ろうとした判断は間違いじゃない。売り方がどうかという問題はあるが、第三者委員会は手続き的に問題はあるかもしれないが、経営判断としてやむを得ないという結論を出している。
一方、鳩山さんの指示で総務省はかんぽの宿の件で何十箱もの資料を持ち出して精査したが、何も出てこなかった。1万円が6000万円にというのは、あれは郵政公社時代の話で西川さんの責任でも何でもない。鳩山氏はそれを西川氏の責任だとわめいたり、中央郵便局に行って取り壊しはけしからんと言ったり、日本郵政の経営判断に口を突っ込み、自分を売り込みすぎだ。
私 鳩山氏は自身を「正義」というが
屋山氏 正義などという言葉は、政治家として、また閣僚に登用された者として言うべきではない。その正義は、つまり鳩山さんの正義に過ぎず、そんな客観性のない言葉を使うべきではなかった。私は売名行為だと思う。
もう一つ、麻生さんは鳩山さんがそういう人間だと知りつつ登用したのか。麻生さんの人を見る目に不信感を持った。また、マスコミのかんぽの宿に対する報道のあり方も間違いで煽りすぎだ。実際にどういう問題があったと検証していない。
例えば、日本郵政の株主は国だ。つまり、与謝野さんが株主だとなる。与謝野さんは指名委員会に諮問したんだから、指名委が西川氏でいいとなれば、それを承認するしかない。そうしないなら、どこがどう悪いか立証しなければならない。果たして、それなのに(鳩山氏が言っていたように)認可しないということはあり得るのか。だから、麻生さんとしてもクビにできるわけがない。
私 それでも鳩山氏は発言を続けた
屋山氏 わざと麻生さんに自分のクビを切らせた感じだ。鳩山さんは所属する内閣に大恥をかかせ、所属する政党の人気をさらになくさせた。まるで沈まなくてもいい泥舟に、10メートル上から飛び込んで壊したようなものだ。
私 鳩山氏の辞任後の言動には閣内からも批判が出た
屋山氏 鳩山さんも閣僚だったから、閣内にいるときは他の閣僚も「そうじゃない」とはなかなか言えない。発言するチャンスは鳩山さん一人が持っていた。発信元を独占すると相当世論をねじ曲げられるという見本のような話だ。
私 ただ、オリックス不動産への一括売却の件では、弊紙内でも見方が分かれ、悪い印象を持つ人が多い。
屋山氏 だが、オリックスが郵政にかかわったことはない。規制緩和委員会にかかわっただけ。郵政の中身について何の発信もしていない。鳩山さんは「李下に冠を正さず」とか言っていたが、濡れ衣ではないか。とにかく竹中憎しで○○○○がやっている。西川氏が辞めてもI田某がいるとかN室某がいるとか。そうは言うが、年俸3000万円で彼らがやるわけがない。国会でも追及されるし。
私 ○○○○の名前は書いていいのか
屋山氏 …それはまずいな。とにかく、結局、次期社長だとウォーミングアップしているのは郵政官僚OBばかりだ。それに踊らされているのだ。そこに目を向ける必要がある。
…屋山氏とは、その他おそらく実現するであろう民主党内閣で日本がどうなるかなどについて意見を交換しました。その点については、私は若干、屋山氏の楽観的・肯定的な見方とは意見が異なる点もありましたが、鳩山氏に対する認識はおおむね一致しました。まあ、こんなグズグズの話が表に出てきて収拾がつかないというのも、政権末期だからだろうなという点でも。やれやれ。
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3525 屋山太郎氏に聞く鳩山(弟)問題 阿比留瑠比

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