麻生首相は八月二日か九日の総選挙を考えていることが明らかになった。二十六日の太田公明党代表とのトップ会談で伝えたという。このためには七月上中旬にも衆院を解散する意向と言われる。これに対して自民党内には限りなく九月の衆院議員の任期満了日に近い時点での総選挙を望む声がある。さらには、その間に麻生首相の退陣を求めて、新しい顔で選挙を求める動きも顕在化した。
安倍元首相はさきの麻生・安倍会談で早期の解散・総選挙を求めた。麻生首相の周辺には、この意見に同調する解散論がある。党内情勢を見極めていた麻生首相は、この流れに乗っている。党内の反対論を押し切れると判断したのであろう。
麻生首相が強気の判断をしている背景には、今、解散・総選挙をやっても自民党が比較第一党を取れると見ているからだ。選挙実務を預かる菅義偉選対副委員長の進言によるものであろう。古賀誠選挙対策委員長が東国原宮崎県知事に衆院選出馬の打診を行ったのも、この流れから出ている。
一方、選挙区情勢については、党内一の事情通と自負する細田博之幹事長は、限りなく九月の衆院議員の任期満了日に近い時点での総選挙を唱える慎重派。保利耕輔政調会長、笹川尭総務会長も同じ考え方に立つ。党三役は”麻生おろし”を画策しているわけではない。
麻生内閣の発足に当たって、古賀選挙対策委員長を党四役に当て、古賀・菅ラインで選挙実務を取り仕切る布陣をとった。本来なら幹事長が選挙も仕切るという思いが細田幹事長にあったのであろう。細田幹事長と古賀・菅ラインが一致した選挙情勢の判断をしていれば問題は起こらない。
しかし、ここにきて両者の間には微妙な判断の違いが生じている。安倍元首相は、これをみて古賀・菅ラインに立った麻生首相に決断を促したのではないか。このままズルズルと解散の決断を下せない事態となれば、麻生内閣の命脈が尽きると見たのであろう。
細田幹事長、保利政調会長、笹川総務会長の党三役を一新し、古賀選挙対策委員長は留任という土壇場での人事刷新の動きは、このような流れから生まれていると言ってよい。問題はレームダッグになりつつある麻生首相に、その余力が残っているかである。
ここまできて決断を下せない事態となれば、党内の”麻生おろし”は一気に高まるであろう。いわば麻生首相にとって起死回生の最後のチャンスを迎えている。桝添康生労働相の幹事長起用、東国原宮崎県知事の総務相など選挙向けの人事配置をする一方で、地方分権を加速させる政策転換を図って選挙態勢を固めるしかない。
座視して死を待つか、思い切って桶狭間の戦いに挑むか、麻生首相にとって正念場を迎える日が近づいている。
<麻生太郎首相が26日の太田昭宏公明党代表との会談で、7月12日の東京都議選と衆院選の間隔を1カ月以上あけるのは難しいとの認識を示し、事実上、8月上旬の衆院選を検討していることを伝えたことが分かった。
複数の与党関係者が明らかにした。7月上中旬に衆院を解散し、投票日を8月2日か9日とする日程を想定しているとみられる。党内情勢も見極め、最終判断するとみられる。(共同)>
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3552 正念場を迎えた麻生首相 古沢襄

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