3580 IMFの英米主導が終わる 宮崎正弘

IMF理事会、中国が主張したSDR債権の正式発行で合意。中国の通貨覇権への野望、はやくも突破口を開いた。
動き出した。まさかと思われるほどにスピーディである。
7月1日、IMF理事会は設立以来60年で初めとなるIMF債券をSDR建てで発行することを正式決定した。従来、日米英ならびにEU加盟国からの融資に依存した資金調達手段の多様化が走りだす。
 
この舞台裏では英米の妥協がある。
第一はIMFと中国との先鋭的対立が急速に和解した。ウォールストリート・ジャーナルの中国語版(華爾街新聞、7月2日)に拠れば、かねて対立していた両者の関係はIMF側が折れて、中国の四月の経済成長率を6・5%から7・5%に嵩上げしたことで突如の和解となった。
 
第二に09年六月、ロシアのエカテリンブルグにおけるBRICs会議の合意をふまえ、中国、ブラジル、ロシア、インドが700億ドル(約6兆7000億円)分を購入する方針が示されてIMF理事会を揺さぶっていた。
 
第三にIMFの英米主導が終わる流れの始まりを英米が認めた。
IMFの主導権の一部をBRICs諸国にも明け渡した歴史的ターニングポイントとして記憶するべきかも知れない。
これからIMFが発行する債券は、合成通貨の「SDR」建て。つまり実際の通貨ではなく概念上の人工通貨で米ドル、ユーロ、日本円、英国ポンドの四つのバスケット(中国はこのバスケットにスイス・フランと人民元を参入させようとしている)。
▲周小川、王岐山らの動きは揺さぶりではなく、ホンネだった
新規SDR債券は最長で5年。加盟国と中央銀行の間で売買が認められ、将来は債権マーケットの流動性も生じる可能性がある。
SDR債権は三月に王岐山副首相が主唱し始め、ロンドンのG20サミット直前には周小川・中国人民銀行総裁がSDR通貨発行を突如言い始めて日米欧をすっかり慌てさせたが、いまから考えればこれらは政治的伏線だったのだ(詳しくは拙著『人民元がドルを駆逐する』に詳述)。
中国、ロシア、ブラジル、インドのBRICs四カ国が国際準備通貨としてのSDRに着目し、SDR債発行に合意したのは中国の主導、ロシアの追認が大きく、ドル基軸通貨というIMF体制の根本を揺らす目的がある。
人民元のハードカレンシー化への動き、これから加速するだろう。
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(読者の声1)本日(7月2日)配信の2649号のDoraQ様の投稿の中に「マッハが時速12000キロくらいとして」というくだりがありますが、2649号以前にも同様の記述がありました。
DoraQ様の投稿が安全保障に関わる内容ですから、間違った認識に基づいていてはいけないと思いましたので指摘させて頂きます。
マッハはご存じの通り「音速」のことです。音速は気温によりますが、概ね秒速340mなので、時速になおすと約1200[km/h]となります。
弾道ミサイルの終末速度は秒速で数キロメートルに達しますが、中距離弾道ミサイルですと、およそ秒速5km以下のようです。秒速4kmで計算した場合、これを時速に直すと14400[km/h]となりまして、1200[km]程度の距離が離れている場合は、10分以内に到達しそうな気がします。
ただし、弾道ミサイルは読んで字のごとく弾道を描いて飛んできます。直線的に秒速数キロメートルで飛翔するわけではありません。
また、最高右側度に達すまでの間は、ロケットエンジンの推力によって徐々に速度を上げつつ、飛行仰角を垂直から水平に変化させていきますので、単純に到達距離を最高速度で割れば到達時間が得られるというものではありません。(品川区在住 J.N)
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(読者の声2)マッハ(mach)1は1224キロメートルです。普通の国際線の旅客機の最高時速は、マッハ0.8(つまり約マッハ1)です。もしミサイルがマッハ3なら、約20分かかります。当然だれか気づいて指摘する人があるかと思っていましたが・・・。
日本の理科教育はどうなっているのでしょうか。
皇室典範改正の有識者会議でY染色体は男系でしか伝わらないと聞いてびっくりした議員が殆どだったとか。Y染色体は男系、ミトコンドリアは女系で伝わるのは、高校の生物の教科書に載っています。日本の理科教育はどうなっているのでしょうか。自己防衛して自分で勉強するしかないのですね。
中国の小学校の教科書には、藤田東湖が称揚していた文天祥が載っていて、民族英雄の愛国者として教えられています。その詩の一節の「人生自古誰無死、留取丹心照汗青」は、普通の人が暗誦できます。
かれらがその心を正確に理解して、そのとおり生きているとは言いませんが、我々日本人がこういった気持ちを失ってしまっているのは情けないことです。(ST生、神奈川)
(編集部から)この他、数通マッハに関してのご意見をいただきました。
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