北朝鮮が発射した地対艦ミサイルは、「シルクワーム」の改良型と韓国国防部がみていると中央日報が報じている。そこで偶然、空対艦ミサイルの「エグゾセ」の登場を思い出している。
一九八二年のことになる。南アメリカ大陸のほぼ南端に英国領フォークランド諸島がある。アルゼンチン本土から約500キロ沖合の大西洋に位置しているが、四月二日にアルゼンチンの陸軍4000名がフォークランド諸島に上陸、同島を制圧した。
この前後にロンドンに旅行したことがあるが、”イギリス病”に冒された英国の衰退は想像を絶するものがあった。昼間からロンドンの公園で職を失ったホームレスがたむろしている。労働党政権が倒れて保守党のサッチャー首相が登場したが、サッチャー改革もはかばかしく進んでいない。
それを知っていたので、サッチャー首相は直ちにアルゼンチンとの国交断絶を通告し、四月二日に下院で機動部隊派遣の承諾を受け、五日には早くも航空母艦二隻を中核とする機動部隊をフォークランド諸島に派遣するとは思ってもみなかった。
このフォークランド紛争は電撃的な英機動部隊の派遣によって、サッチャー首相の勝利に終わり、その決断と不退転の姿勢が”鉄の女”の称賛を後に得る。
しかし、この紛争で英国海軍は海戦で大きな犠牲を払っている。五月四日アルゼンチン海軍航空隊のシュペルエタンダール攻撃機が空対艦ミサイル・エグゾセでイギリス海軍42型駆逐艦「シェフィールド」を攻撃し命中した。
ただ一発の被弾で「シェフィールド」は炎上、総員退艦せざるを得なかった。「シェフィールド」はフリゲート艦に曳航されたが、六日後に沈没している。日本の新聞でも空対艦ミサイルの「エグゾセ」のことが大きく報道された。
フランスの誇る有力な輸出兵器となって、これまでの生産数は3000発以上といわれている。だが、「シェフィールド」が被弾して撃沈されなかったのは、「エグゾセ」が不発だったと分かる。沈没原因は秒速315メートルの速度で突入して電源装置などを破壊し、さには残燃料による火災が、「シェフィールド」にとって重大な損害を与えた。
イラン・イラク戦争でイラク軍は200発(推定)の「エクゾセ」を使って、イラン海軍の艦艇を攻撃したが、大部分が不発であったという情報もある。
中国の「シルクワーム」も「エクゾセ」と同じ対艦ミサイルなのだが、命中精度は別として、初期段階では不発弾が多かったのではないか。
< 国防部によると、北朝鮮は2日、地対艦短距離ミサイル4発を東海(トンへ、日本海)に向けて発射した。
国防部当局者はこの日午後「北朝鮮が江原道元山市(カンウォンド・ウォンサンシ)北方に位置した咸境南道新上里(ハムギョンナムド・シンサンリ)の基地から、同午後5時20分と6時、7時50分、9時20分に短距離ミサイルを1発ずつ、順に東海上に向けて発射した」とし「ミサイルは北東方に100キロ程度飛んだとみられる」と述べた。
北朝鮮が発射したミサイルは射程120~160キロの地対艦ミサイル「KN-01」で、全長5.8メートル、直径は76センチだ。旧型の地対艦ミサイル「シルクワーム」の改良型とみられる。軍当局によると、北朝鮮は通常も地対艦ミサイルを新上里に実戦配備している。
軍当局者は「北朝鮮が午後遅くと夜にミサイルを発射したことから、軍事訓練の目的とみられる」とした後「だが、国際社会の制裁などに対抗する武力デモのレベルから、追加で中・短距離ミサイルを発射する可能性があり、注視している」と話した。情報当局は、北朝鮮が地対艦ミサイルのほかにも射程距離340キロの短距離弾道ミサイル「スカッドB」と射程距離1300キロの中距離ミサイル「ノドン」の発射を準備していると判断している。
「ノドン」は射程距離を縮めて発射するものとみられる。北朝鮮は先月25日から今月10日まで、新上里北東の海岸線に沿って、直線距離でおよそ450キロメートルを航海禁止区域に宣布したことがある。北朝鮮は2回目の核実験に踏み切った翌日の5月26日にも新上里で地対艦短距離ミサイル3発を発射した。
青瓦台(チョンワデ、大統領府)高官は「北朝鮮による短距離ミサイルの発射は、予定されていた武力デモ」とした上で「注視はするものの、大きな意味があるものではない」という立場を示した。(中央日報)>
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3584 「シルクワーム」と「エグゾセ」 古沢襄

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