米露首脳会談で二大核保有国が核弾頭上限1500~1675個に削減合意するなど”核軍縮”が前進することになったが、北朝鮮やイランは依然として核開発に狂奔している。とくに相次ぐミサイル発射を繰り返す北朝鮮には、宗主国?の中国が放置できないとして圧力を強める気配がみえる。
言論の自由を認めていない中国だから当局の意向を事前に掴むのは困難を極める。公式には北朝鮮に対する批判・圧力をみせていない。だが政府系の「環球時報」の論評が、これまでにない北朝鮮批判を打ち出している。中国当局の意向の代弁を始めたとみることが出来る。
人民日報の姉妹紙といわれる環球時報は反日傾向があるが、中国政府が公式に表明できない段階で、非公式な見解が時折、出ることで注目してきた。
たとえば北朝鮮の金正雲氏訪中を伝えた朝日新聞の記事について、いち早く否定見解を出したのは環球時報。中国にとって金正雲訪中は、表沙汰にしたくない情報であった。北朝鮮軍部の強硬派を刺激することを怖れたのであろう。
また北朝鮮が六カ国協議からの離脱を発表した翌日、一面トップで「朝鮮(北)は安保理の声明に強い姿勢で対抗」と題する論評を掲げたが、その中で「朝鮮半島の非核化に向けた各国の五年間にわたる努力が頓挫することを意味し、今回の朝鮮の反応の激しさは国際社会の想像を超えていたようだ」と批判した。
中国がソマリア沖に派遣したミサイル駆逐艦「武漢」と「海口」、それに総合補給艦「微山号」が海南島の三亜海軍基地を出港することを公式発表にさきがけて記事化したのも環球時報だった。そこに環球時報の暗黙の役割をみて取ることが出来る。
その環球時報が、北朝鮮は無益な「対抗外交」を続けた結果、外交も国内経済も極めて困難な状況に陥り、軍の士気も低下しているとみられる・・・と辛辣な批判をした。ミサイル発射や核兵器で米国に対抗したが、結局は無益だった・・・とまで言い切っている。ここまで厳しい北朝鮮批判をしたのは初めてであろう。
非公式ながら、北朝鮮に対する警告とみていい。
<北朝鮮では1990年代から10年間以上にわたり無益な「対抗外交」を続けた結果、外交も国内経済も極めて困難な状況に陥り、軍の士気も低下しているとみられる。ミサイル発射や核兵器で米国に対抗したが、結局は無益だったという。
遼寧社会科学研究院の呂超研究員によると、北朝鮮が核兵器やミサイル実験を強行したのは、◆国内の政権基盤固め◆国際的な重視――のふたつの目的がある。政権基盤については「低いレベルの安定」を実現するなど、一応の目的を達成したが、国際関係ではそれ以上の損失が出た。
「目ざましい武器」を背景に平和と生存の可能性を探るとしても、国際的な孤立を招くだけで、経済ではさらに厳しい状況に追い込まれることになる。
呂研究員によると、北朝鮮は1994年から核問題などで米国と対抗する外交を続けたが、現在になりこれまでにない窮地に追い込まれた。2009年になりミサイル発射や核実験を行ったことは、北朝鮮にとって「百害あって利益はまったくなし」という結果をもたらしている。
北朝鮮では、軍の士気が低下しているとみられる。一般兵士の場合、1日の食料がジャガイモ3個ということもあり、「1日2食で過ごすこともある」という市民よりも、軍末端の食料事情は厳しいもようだ。(六日付け環球時報)>
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3609 中国の環球時報が厳しい北朝鮮批判 古沢襄

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