3619 別にウイグル族の擁護をするわけではないのだが 福島香織

■7月5日夜からはじまった暴動。ことの真相はまだ不明だが、連鎖反応的に暴動が広がる可能性もでてきた。あまりの犠牲者の多さに震撼するばかりだ。お亡くなりになった方に哀悼の意を。しかし、いったい何がきっかけ?どうして今ごろ?と思う。youtubeにアップされている7月5日の抗議活動の映像は非暴力平和的で、参加者はペットボトルで水を飲んだり、携帯電話をかけながら普通に歩いているだけ。これがあれほどの犠牲者をだす大暴動にどうやって発展するのか。


■現地ではインターネットがコントロールされているそうだが、Twitterではファイアーウォールをこえて、どんどん情報がもれてきている。ラジオ・パーソナリティで、情報発信ツールとしてのネットに造形の深いモーリー・ロバートソンさんと以前に対談したときに、「Twitter」は報道のあり方を変えるといっていたが、たしかに、当局発表とはまた違った角度で物事がみられる。
ちなみに、世界ウイグル会議はウイグル族150人以上(400人以上?)が銃殺され、900人以上が負傷し、千人以上が逮捕されていると発表し、平和デモが、解放軍によって鎮圧されたという立場をとっているが、これもネットを通じて現地のウイグル族から寄せられた情報を根拠にしているようだ。
■すでに中国発のTwitterはブロックされているそうだが、♯urmqiとかで検索するとけっこう興味深い情報がみれるよ。現地にいっているアルジャジーラ記者のルポなんかも読める。英語だけど。

■彼の書き込みを読むとすでにどちらが悪いか良いかという段階ではないくらい、漢族とウイグル族の感情的対立が一触即発なようだ。漢族も凶暴になっている。「中国を守るんだ」と棍棒を持つ漢族の少女。棍棒やナイフを振り上げながら国家を歌う数百人の漢族の集団とかが目撃されている。
あと、この記者は、中国外務省から、自分たちのプレスツアーに参加するなら中国側が発表するシナリオを採用せよ、でもそれが嫌なら勝手に危険を冒して取材するがいい、でもいかなる情報にもえられないけどね、とかいわれて、「トリッキーだ!」とかつぶやいている。
■デモの始まりは5日午後7時ごろ。ウルムチでいえばまだ明るい夕方ぐらいの時刻。暴徒化したのは8時ごろのもよう。デモの鎮圧は午前零時ごろらしい。新華社の第一報は6日午前4時ごろ。そのころにはTwitterには結構情報が流れはじめていた。その12時間後の6日正午、中央テレビが、バスが黒煙をあげて燃えている暴動映像を流した。
■こういった情報を総合すると、行進デモがどういうタイミングで何がきっかけで、暴徒化したのかは、やはり第3者機関による調査が必要ではないか、という気がする。中国側はプレスセンターをつくって、外国メディアの報道を認めたとはいえ、それを条件に、中国発表のシナリオを積極的に報道せよと、せまるような国だから、なかなか中国発表を鵜呑みにはできない、と言う気がする。
■というわけで、ウイグル族側の肩をもつわけではないが、彼らの言い分もきいてやろうかと思っている読者は、中国人権ネット上の声明も読むといい。手元に辞書がなく、すごい、雑な訳ですので片目つぶってお読みください。
「6月26日の広東省韶関の漢族とウイグル族労働者との間に発生した殴打事件が誘発した新疆ウイグル自治区・ウルムチの衝突事件はすでに、極めて重大な死傷者を出し、中国新聞社の報道では、死者140人以上、負傷者828人にのぼる。さらに情勢は拡大しており、われわれも深く震撼している。
犠牲者と遺族に深い哀悼の意を表します!、
われわれは、中国政府に出来るだけ早急に、独立した民間機関による真相調査と、法にしたがった裁きと、民族衝突を激化さえるような措置の停止を要求します。ともに、以下の声明を発表します。
まず、中国政府は、この事件を国外勢力の画策扇動だといっていますが、中国政府の報道の自由における、芳しくない記録、たとえば、20年前に発生した天安門事件や最近の類似の抗議活動の歪曲報道および習慣的な報道封鎖をかんがみるに、われわれは、今に至まで、事件の真相が政府発表のとおりかどうか確定する方法はありません。
だから、事件に対する公正な評価の前提にたち、社会が受け入れられる、歴史検証的な処理方法を基礎として、真相を解明せねばなりません。このためには、われわれは、中国政府に独立した国内外メディアと人権組織に現地調査をさせ、社会に真相を発表させ、法に従った、公正な処理を行うことが条件となります。
次に、具体的原因がどのようなものであれ、事実上、その原因が、極端なやりかたによって、各階層の利益が突出し、その表現の正常な方法が欠けているがために、民族間の矛盾がひましに激化している現実にあり、中国共産党が長期に推進するいわゆる民族政策が失敗であるということを意味しているのです。
もし、久しく治安が安定する道をさがすのでなく、金で買収するなり、あるいは鎮圧するのなら、それは決して根本的に民族の調和と共同社会を実現させるものではなく、いわゆる中国の台頭というものも、泡ときえるでしょう。この現実、この種の現状に執政者は必ず面と向かい、多民族を含む漢族と少数民族として、とも厳しい現実の課題をともに考えなければなりません。
われわれは、法律を尊重し、人権を尊重し民族を尊重します。特に少数民族の文化習俗、政党権益を尊重します。システム化した方式で各民族と各階層の利益が正常の表現され、各民族がたがいに仲良くできる根本的な道を創造することを望みます。事実上、最近、全国で集団抗争事件が発生しており、この種のシステマティックな利益表現メカニズムを作ることは、公民の人権を尊重するということにおいて、一刻の猶予もならないレベルです。
執政者が猫をかぶって、成り行き任せの態度で、現実をみずに、腐敗を罰し、改革を推進し、憲法と法律をまもろうとしようともしないなら、むしろ、法律を踏みにじり、人権や中国の安寧安定を尊重しないなら、各民族間の調和などあり得ないでしょう。
最後に、中国政府が軍と武力をつかってこの種の事件を処理することを止めるよう、要求します。逮捕された人に対しては公正にして人道的な待遇をもって法律によって救済され、法律にしたがったプロセスで公正に処理され、虐待されず、残酷な刑を乱用せず、事件の原因と結果について真面目に調査、検討を行い、出来るだけ早く真相を公表してほしいと思います。
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