就任以来、解散のチャンスが何度かありながら内閣支持率が最低になったところで、解散・総選挙に踏み切るというのは、戦後政治史でも珍しいケースとなった。週刊誌は「自民78議席に転落 鳩山民主332議席に躍進」とか「民主261VS自民160」と書き立ている。
八月三十日の投・開票日まで、まだ四十日あるから、今は書き得、斬り捨てご免ということだが、今の自民党の内紛を見てると、自民党の大敗は避けられない気がする。やはり昨年九月に麻生首相が就任した直後に解散を断行して、国民の信を問うべきであった。
「政局よりは政策、何より景気回復という世論の声が圧倒的だ」と麻生首相は景気対策を優先し、解散を先送りしてきたが、心の底では小泉郵政選挙で得た三百余議席に頼る気持ちがあったのではないか。だが相次ぐ景気対策の補正予算を成立させながら、麻生内閣の支持率は低下の一途を辿っている。
この間、民主党の小沢代表の公設秘書が逮捕される事件があった。民主党内に大きな衝撃を与え、内閣支持率も上向きに回復したが、麻生首相は「いま経済対策をやっている。解散の時期には関係ない」と訪れた絶好のチャンスを見送っている。
小泉元首相は「政策よりも政局が好き」と広言して憚らなかった。民主党にしてみれば、何をするか分からない小泉元首相よりも、麻生首相の方が戦いやすい相手だったのは確かだ。後手に回る麻生首相に助けられて、小沢代表が辞任、鳩山新代表の下で党勢の回復に成功している。小沢、鳩山のバトンタッチで、今の様な自民党の激しい党内対立は露呈していない。
表面的にみれば、「八月十八日公示、三十日投開票」の総選挙日程は、去就が注目された与謝野馨財務相も解散詔書の署名に応じる方向なので、予定通り行われる。中川元幹事長ら反麻生派の倒閣の動きも鎮圧される見通しとなった。
だが全党が一丸となって総選挙に邁進する空気とはほど遠い。追い風の民主党に対して一矢報いる気迫に欠けている。やはり党内基盤が弱いリーダーの限界なのだろうか。
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3664 麻生首相の十カ月 古沢襄

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