今回の宮里藍の優勝の陰に何があったか。最終日まで無事に集中力を持続できたからだ。経験上からも言えるのだが、異国人の中に入って仕事、勝負、勉強等を長時間続けることは容易ではない。
それが備わっているだけではなくて、維持することが大変なのだ。我が国のプロのゴルファー達がアメリカでトーナメントに出場した場合、男子ならば3日目以降、女子ならば最終日であることが多い3日目に崩れる。
この残念な現象は必ずしも技術だけの問題ではない。集中力を維持できるかどうかである。アメリカ人の世界では全ての物事が当然のことだが、彼らの体力、身体能力、体格を基準にして設定されている。
アメリカに行けば、如何なることでも自分をその基準に合わせて行動していかねばならない。言うことは簡単だが、現実には容易ではない。
さらに我々には言葉の問題が待っている。実際にはある一定の限界を超えると、これらの何れかが破綻を来すことが多い。
自分の経験。1988年にアメリカ本社で1週間、月曜から金曜日まで、朝8時から午後5時まで、1時間の昼食時間と午前と午後の約15分のコーヒー・ブレークを挟んだだけのセミナーに参加したことがあった。
これが予想以上の難行苦行だった。2日目の昼の休みを過ぎた辺りから徐々に集中力の維持が難しくなってきた。英語による講師の話を完全に聞いていられなくなってきたのだ。
たった一言の英語の言葉を聞き逃しただけで全体の流れを捉えきれなくなり、後は英語という河が私の前を轟々と音を立てて流れているだけの状態になる。そうなるとただ呆然としているのだが、そんな時に限ってそこを見透かしたかの如くに講師から名指しで質問が飛んでくるのであった。
そこでハッと目が覚めて、イヤ覚醒して集中せねばならないと思う状態に戻れた。こういう状況を何回か経験する間に、二六時中神経を集中していることの難しさと、その切り抜け方が解ってきた。
つまりそういう状況に追い込まれた場合には何としても体力と体調を維持して備えなければならないのだ。それは考えようによっては、非常にストーイックな生活をしていなければならないということでもある。
だが、彼らアメリカのビジネスマン達も体力の維持には神経を使っている。その良い現れがジョギングの流行であり、ジム通いである。それに彼らは酒を楽しむが酔いつぶれるような飲み方をしない。
私はそれも彼らの体力維持とコンディションの調整法かと思ってみていた。だが、彼らにはそれ以上に我々を数段優る体格と体力があるのだ。
それだけではない。全てが彼らの体力、身体能力、体格を基準に設計、設定されている優位性がある。この中で彼らに対抗していくためには体力温存のために相当程度遊びや無理は避けねばならない。
宮里藍は漸くそこまで到達できたのであろう。過去に岡本綾子は17回も優勝し、賞金女王まで獲っている。だから、それが如何に偉大なことかはここまででお解り願えたと思う。
これから解明せねばならないことは、こういう厳しい条件を克服してアメリカのトーナメントを数多く制覇している韓国の女性ゴルファーが沢山いることである。「ハングリー精神」などという簡単なことではないと見ている。
さらに、アメリカ人の会社である程度以上の成績を挙げていくためには、何が必要か。英語力は勿論必須であるが、彼らとて、その環境下で実績を残して、早くリタイヤーして条件が良い年金を貰って暮らすのが念願なのだ。
そのためには何としても体力を維持せねばならない。彼らにとっても生き残りはそれだけ大変なことなのである。
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3734 宮里藍優勝の理由(わけ) 前田正晶

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